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やる夫は異世界の戦士になるようです65

4387 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 21:29:07 ID:99V5ZIS.0

               /    〃                      \
            /   /                  /             ヽ
          ′   //         !   /     〃               、
            ,   ィ/|          | / |   /{/               ,
.         ,′ / l{' |.     { ─-| / │ //| |'    |           ヘ ',
        /   { ⌒ト、   从 / j/  `lメ、 | |    '|           |
.        /    ∧、{| \ヘ{ V    │   | |  / | j          } !        「建設的な話、ですか」
        /   / ヘ. |   l\ ===ミ 、    | |  /ナメ、}     i   .′i
      /   / /  `l|   |      `     |//jノ ,′    |  ′/         ええ。たとえば、私があなたをこの部隊に
.      /    / /   l|   |                =ミ、   ′     | /
.    /   /   _ァ‐-|  │                 ヾ/    イ リノ            入隊させた目的は覚えていますか?
    /     '  // ト、 /li   │    丶._  ´   <.__  ノ// '′
  /    ,厶∠... | `¨|i   | \      ` `      ,ハ//´ レ′               「ナノハさんのため」
 /  /..:::.::.:::::..`ヽ  |    |、  \     ,..r  ´  |
/ ,/..::.::.::.::.:::::::::::::::..\|    |て /ト、`r l |  丿|   |                      そのとおりです。
 /..: : :.::.::.::.::.::::::::::::::::::::..\ │ `スrく}r‐┴く  |   |
'/.:.:.::.::.::.::.:::.:::.:::::::::::::::::::::::::::} | /  }\j::::.:::.::..\   |

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向かい側に座るアンゼロットは、背もたれに体を預けながら首を傾け、
人差し指を立てた。

いつかアンゼロットに言われた言葉を思い出す。
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4388 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 21:40:15 ID:99V5ZIS.0

        ハ       /\           ハ
      .′        l                  ハ
      /         |               l
      ,'.          |              |   |
     l        { .! |    .!  l   | |   |
     |   {     | .| .ト.l.   |  |  l .| !   |
     |   |   ._xト= ト、八   .Lx.-|=-xl | l.   |
     |   l   :イス\l   l\  | ヘハ 、l l |.   |         あれから二か月近く経ち、ナノハはだいぶ良くなりました。
     | ト、人    | z===ミ |  \l y===ミ、l  |    |
     lノl\人.  {´             l|  |',   |         やはり、一から手塩をかけた部下には愛着が湧くもの、
      .!. ∩.|  .|       '      .!|  |リ.  |
.       |  | | |  i|ハ、    マ  7   .人|  | l   |         自責の念も少しは和らいでいることでしょう。
.     _|..__| | |  i| |. ヽ.   `´  .,イ l |  | l  |
     l lイ l l.| |_l/)| ! /<|` ー ´ |ハ.〉l |  | |  |
     |」 l,」,j,lイ ./ l人 ∨ .>r-<< ./ l. l  | l  .|
     {.    '"/ | .|::::::::::Vハ ∨ ノ ノ⌒ー.!  !''"`ー-l、
.     ヘ   ./::::| .|::::::::::::::>⌒<´::::::::::::|  |::::::::::::::::\
  /:::::::}ー } ::: | .|::::::::/ 八 ..ノ \:::::::::|  |:::::::::::::::::::::`、

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二か月、という単語で、記憶の棚の一つが音を立てた。
たったの二か月のはずなのに、随分昔のことのように思える。

ナノハと顔合わせをした、あの日だ。
窓から射す明るい日の光とは対照的に、生気が全て蒸発した表情をした、
ナノハの姿が記憶の棚から零れ落ちた。

アンゼロットの言うように、あのような表情のナノハは、久しく見ていない。
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4390 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 21:50:01 ID:99V5ZIS.0

                           __
                  ,  -‐==≦7/`¨¨¨¨"  <
                   /     ´   ′       ` 、
              〃  /      ;         ヽ ヽ
               レ'            i          ヽ  ‘,  ∨
               /   ./ ,′      {.    ‘,.    ‘,
                ;′′′i{ {    {  { ‘,  .i  i  i
                  { i{ { .八 {__j__ .{ i  、 、 ̄「` 、!   !  i            時にやる夫さん。一つお聞きしたいのですが、
                  { i{  、 ./{Ⅵ\{人 {\lz斗=ミ|   |   :|
                 人八:. \ { ァ≠ミ、 `i  ´Vr リ¦ .i  :|            思慮深く考える賢い人と、物事を深く考えず
                  \ {ヾ 代r リ      ` ´ .,'  ;   |
                   i ヾ.从 , , ,  、   ' ' ' ′ ./   :|            生きる人、どちらが不幸に近いと思いますか?
                   |.! .!  i.、     、  ノ   i        |
                      从_i  个s。.     イ |  i    |       r 、
                 ,. ´ニ'   iヾー‐{〕≧ チr 7八  .|   :|     \\  _
                /ニ二/  ノニニニLL}ー{」,/\   |__  :|       ヽ ヾ7 .)_
                /ニニニ/ /r――=ミ辷彡'ニニ≧ iニ≧.、        .i ' イ} }、
.              ,;仁ニニ‐/./ニ,!    (/,)´ ̄ ̄`ヽ{ |ニニニ\      八   ヾノ、
             {ニニニニ{/ニニ〈ー―==彡7` 、   、_ノ{ !ニニニニヽ.     〉、__  .}
            人ニニニ,'ニニニ厂 ̄  / \ \ /ニ.、.ノニニニニ‐ム     i 厂'ーァノー=ァ__
.               ヽニニ{ニニニ`ー‐ 、  ′ __辷r'ニニムニニニニニニ    ,' / / ̄}ー=ァ_j}
           ′  /ゞニ人ニニニニニヽ{{/´ニニニニ‐iニニニニニ‐ノ、  ./≧ ., _,ノ /´.ノ
          /   ,仁ニニ‐}ニ=‐-‐=ニニ,'≧ 、ニニニニニノニ_ニ=--r '   .,  ,ニニニ≧‐- イ
.         /   .,;仁ニニニ‐jニニニニニ'ニニニ=‐--‐=彡≦ニニニ〉   .‘,./ニニニニニニ‐ノ

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レンジの初恋のエピソードも忘れ、どうしてわざわざ自分をナノハの直属の部下に
したのか、そもそもそれは効果があるのか、なぜアンゼロットがそこまでするのか、
と考えていると、意表を突いたかのような質問が飛んできた。

ほとんど無意識に、やる夫は「思慮深く考える賢い人だと思います」と返していた。
自分の価値観の柱から、ぬっと顔を出すものがある。
「幸せな人間というのは、気にしないということがうまい」
老人から言われた言葉だ。
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4391 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 22:03:12 ID:99V5ZIS.0

        〃/                    }                  ヽ
        / /            i         i    }           |       ,
       ' ′          l {      i     |          |      ′
      l |            | '      i |  | l   }       |
      | |      {    ∧ ヘ     ムrヒ 7"{「 ̄|       |
      | | /      |   {/ __' {      '_jノ _厶ニL _ |       |         そのとおりです。
      | |'{      | ィ'{「 __`j八    / ノ ;ノ乙心jノ|   /   r: 、
         | .    {  ,   l ァァぅ, ハ  /   ‘;::::タ刈 |. /    ′ |        悲しみも後悔も、罪の意識も責任感も、
         {. ',   ∧ '.  |〈{ {:::hム  ∨      ー '' ” | /   ル ) 从     i
.          ‘. / ,ハ ヽム 弋:㌣           j/     ハ /  }   i    全ては考えるという行為から生まれるもの。
             )' /  V{ ハ    〈             /     厶ィ´      i
          /      \ ',       __       ,     ′│        !    逆も然りで、何も考えず、ひたすらに目の前の
                 /  人      `´     /     .′/ |         !
                /  /  > .     /       /}丁厂   !     l    快楽を貪れるような人間には、そういった
              /  /  /    >-=''" ̄`丶、/ j j  ′  i   │
.              /   〃    /..:::::::::::::::::::::::::::::..\ リ j ′   !     |     ものはあまり見受けられません。
              /    /   /..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..ヽ j/    i   │
.              /    /   /.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∨    i    |
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頭の中の水面に映る沈んだナノハの姿が、今度は同級生たちに切り替わる。
若く、無知で、未熟で、情熱と夢を持ち、生きるエネルギーを発散させている
若者たちが、群れを成しながら繁華街を練り歩く姿だ。

もちろん、それは一部の若者だけだ。
孤独や差別、劣等感や絶望から、そういったエネルギーを失ったり、
情熱や夢を忘れ生ける屍のようになっている若者も大勢いる。

後者はきっと、自分と同じように、考えることしかできず、何も行動できず、
何も生み出せないまま、ただ体と心が朽ち果てるのを待つだけなのだろう。
蒲団にくるまりながら、人の生や世界の意味、自身の存在価値といった
考えてもどうしようもないようなことばかり考え、記憶には虚しさと悲しみだけが残り、
やがて自分自身の人生に絶望する。残るのは崇高な理念でもなければ、
他者を驚愕させるような人生観でもなく、虚無だ。

前者はそうではない。

友人とどこかに遊びに出かけたり、教師の陰口を言い合ったり、
いじめをしたり、異性と交際したりと、何か複雑な目的のためではなく、
やれる範囲で、目の前の快楽のためにやりたい放題する。

どちらが苦しみが少なく、楽しくて充実しているかは明白だ。
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4392 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 22:16:11 ID:99V5ZIS.0

                   ___
          __,..'´ ̄      `丶、
        , '" ̄ フ ̄l `ヽ         \
        /'   /    |          ヽ     ヽ
      〃  ,イ      |     !      |  l   i
      i'   ,'       l、   | l| | l、|  |   |         人は考える生き物です。
          |l   |  | 」ム  |ヘナ7メ、|  |   |
          || | ヽ. |ハ|=、ヽ、l 彳うミ、|  |   |         何も考えずに他者を踏みつけ、快楽を追及するのは獣と変わりません。
         |ハ、 ヽ从l 化リ   ` ゞ‐' |  |ヽ  l
             ヽトトゝ   、       |  レ'   l         ですが、考えるのも度が過ぎれば、残酷な真実を直視することで
              | i、   r_,     |  |    !
              | | > 、   , イ |  |    l          自分自身の精神を削っていくことになります。
              | |  /ソ)T,.,_,.、jー|  |   |
                /j |_l | レ',イムトr )|  |.,..-┴..、
           /:´l l::::::!   '´ィ,'(_゚)、|  |'::::::::::::::::::ヽ
             /::::::::::! l::::::|    !/ イiヽ|  |:::::::::::::::::::::::!
          !::::::::::::| |:::/ヽ、 j '´||l| ||  |:::::::::::::::::::::::l
           l:::::::::::::| |::| / )、ルノl、|l」|  |:::::::::::::::::::::::l
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そう考えると、ナノハは特殊な性質を持っているように思えた。

彼女の精神は暖かい思いやりに溢れ、思慮深さと責任感を持っている。
かといって、自分のようにどうしようもないようなことを考えたりしている様子もなく、
ある種のストイックさを持って現実と向き合い、生きている。

そして、あまりにも真っ直ぐに、残酷な現実と対峙しすぎたがために、
彼女の精神は折れるとまではいかなくとも、確実に削れているはずだ。

人の心は驚くほどに脆い。脆いからこそ、宗教や自己正当化、自尊心を慰める
ための暴力や、思考放棄といったものがある。

だが、彼女はそれらを一切行っていない。

彼女は一度として、言い訳をしたことがなかった。
それはつまり、一度として逃げたことがなく、正面から現実の重みを受け止めて
いるということだ。
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4393 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/01(月) 22:28:00 ID:99V5ZIS.0

               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \      やる夫は、そんなナノハさんのために、何かできているのですか?
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/
          /     ー‐    \





.              /                    \
.          /    ′                   ヽ
.           ,′  /       │   !     、  '.
           ′   .′    ./ / |    ト、 !    }    '.
         ′  ′   L上|_l _ |    | .| }  /     '.
          .′  j     「l_ハ∧「`ト、  | r七卞7  / ,′}
         .′   {  ハ {ィfで不ヽ  \j ィホ7 〃 ′/  '       いいえ。あなたはただ、ナノハの傍にいるだけです。
        .′   V  .八{`弋_ツ       ヒツ /  / / } /
       .′   ,′.}∨ハ 个            厶イ} / l/        でも、それでいいのですよ。今のまま、その謙虚で
       .′   ,′ ∧   . l.       ___′  ムィl/レ′
       .′  ./ // 爪   '.|丶、   V.../   .イ :l  {             誠実な姿勢のままでいれば。
      '    / / ′Vハ  廴_ へ、 `" </:l. :|  |
    /     ' /  ..-=ニ¨ヽ, 弋T卞千 ..:/ ..:}. :|  |             そのまま、ナノハに大切にされていてください。
.  /     / ./´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\弋辷ソ| ../ ..:/|. :|  |
/  ,    ,  /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}', r─亠〈 ../ .|. :|  |
  ./   ./ ./ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: | .`ー '//  |. :l  |
  /   /  /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l  '.ー/∧  l. :|  |
   /  /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : {   } 人:.:ノ  | l  |
  /  /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧ {`′ ぐ   | l  |

4409 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 22:25:52 ID:uK6K4vw20

                __. <´ ̄ ̄ ̄ ̄ ` `丶、
.            / ̄ ̄>┤  \               \
        /   /  |          \  ヽ     \
        /     ,     {     \ \ \  \    ∧
      〃    /        ヘ   \ \ \  \   ∧
      {{    / ,    |  l    \  ヽ ヽ  \ .!    '.
          { |     |  |  、 、 \ ,へ =x l │    '.
          | |     |  | .| \ \ く 八厂「`ミl l |     '.
          | |   、 |\l斗≠く\ \l_ノ ___ 、 l. l |ヽ     .
          | |l\  彳 ゞl    \`ヽ '" ゙̄ヽ|│ | }     '.
          | ヽ\.\ \ ,r==ミ           |│ |.丿    '.
          ト 、 \\\ }l"    ,       |│ | \      '.
          |  \ ヽl\`ハ      .  '     ,|│ |  \     '.
                 | , \丶、        イ_l│ |\  ヽ    '.
                 | | │ l __>< ̄ヽ -< 厂} l |  )==へ、
                 | | |  { n ヽヽヽ }_厂} } l |¨´.: : : : : : :}.  '.
                 | | |  い     ノ  〉ノ 丿  | :/: : : : : :.|    '.
                 | | |  ./     /oY´ ̄`ヽ  /´: : : : : : : :.|     '.
                 | l l ,′   ,くヽノ`ー  / /: : : : : : : : :.:.|     '.
               / /レ{   イ /{ } \__.ノ{´: : : : : : : : : : .:.:|     '.
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            /   〉: :{  {  /: : : : : : ∧ /.:.: : : : : :.「 ̄ ̄.!    ヽ    '.

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「少し話は変わりますが、やる夫さん、あなたは自分がこの世に生きていることに
価値を見出していますか?」

唐突に、アンゼロットがえらく哲学的な質問をしてきた。
まるで中学生の少年少女が考えるような話題だな、と思いつつも、
その話題が胸の内の深いところに落ちてゆく感覚がする。

それについては、自分もよく考えた。
答えは否だ。

やる夫も最初は全ての苦痛の責任を周囲に押し付け、世界に絶望し、
他者に絶望していたが、精神が成長するにつれ、それが間違いだったことに
気が付き始めた。

人間の人生というのは十人十色で、苦痛を乗り越えた先に幸福を掴む人生も
あれば、悲しみに溺れ身動きが取れぬままに潰れる人生もある。

要は、人間には幸せな人生を掴みとった者もいれば、
夢を語ることも安らぎを求めることも忘れて死んでゆく者もいる、という、
ごく普通の、当たり前のことだ。

つまり、世界が残酷だったわけではなく、自分の人生が無残なものだったという
ことにすぎなかっただけなのだ。

さらに言えば、入束やる夫という人間が、そのような人生しか歩めないような人間
だったというだけだ。

気が付くと、世界への絶望は、自分自身への絶望へと切り替わっていた。
自分がこの世に生きている価値など、見出せるはずもない。

生きている価値や喜び以前に、社会を生き抜く力がなかった、と言ってもいい。
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4410 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 22:38:56 ID:uK6K4vw20

        ハ       /\           ハ
      .′        l                  ハ
      /         |               l
      ,'.          |              |   |
     l        { .! |    .!  l   | |   |
     |   {     | .| .ト.l.   |  |  l .| !   |
     |   |   ._xト= ト、八   .Lx.-|=-xl | l.   |
     |   l   :イス\l   l\  | ヘハ 、l l |.   |       ここで問題です。そういった人間は、一体どのような事柄に対して、
     | ト、人    | z===ミ |  \l y===ミ、l  |    |
     lノl\人.  {´             l|  |',   |       救いを求めるでしょうか?
      .!. ∩.|  .|       '      .!|  |リ.  |
.       |  | | |  i|ハ、    マ  7   .人|  | l   |       「えっと……死、ですかお?」
.     _|..__| | |  i| |. ヽ.   `´  .,イ l |  | l  |
     l lイ l l.| |_l/)| ! /<|` ー ´ |ハ.〉l |  | |  |       悪くない答えですが、はずれです。
     |」 l,」,j,lイ ./ l人 ∨ .>r-<< ./ l. l  | l  .|
     {.    '"/ | .|::::::::::Vハ ∨ ノ ノ⌒ー.!  !''"`ー-l、
.     ヘ   ./::::| .|::::::::::::::>⌒<´::::::::::::|  |::::::::::::::::\
  /:::::::}ー } ::: | .|::::::::/ 八 ..ノ \:::::::::|  |:::::::::::::::::::::`、
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アンゼロットが質問を重ねてくる。
思ったままのことを口にすると、アンゼロットは人差し指を振りながら目を細めた。

死というのは、平たく言えば、人生の終わりである。
ゲームを始め、攻略し、エンディングを見てからゲーム機の電源を切るように、
人は生まれ、様々な経験をし、最後には死ぬ。

自殺というのは、プレイしている途中で、ゲームが面倒になった、
ストーリーが悲惨すぎる、などの理由で、ゲームをクリアしていないにもかかわらず
途中で電源を切る行為と似ている。

これ以上はもう無理だ、耐えられない、リタイアしよう。
そうして人はゲーム機の電源を切るように、自殺をする。
残るのは、テレビの画面に映る暗黒だ。

だが、アンゼロットはそれを違うと言った。
では、一体何が救いになりうるというのだろうか?
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4412 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 22:51:15 ID:uK6K4vw20

         ____
       /       \
      /   ―   ―
    /     ( ●)  (●)'  ∫       死ねば、一応は苦しみから解放されるし、救いになるんじゃないんですかお?
    |         (__人__) | ∬
    \        ` ⌒´  .| ̄|         「死ななくとも救いはありますよ。何の努力もせずにすぐ諦めて、全てのチャンスを
____/       ー‐  '-|_|)
| |  /  /          __/         台無しにするのは性急というものです」
| |  /  /          |
| | (    ̄ ̄ ̄⌒ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|





          /   /           ,   /         ヽ
            /         /   ./  /   ′
          ′   レ{  i  ′__′´′ .,.:゙   }         Ⅵ
            /⌒{  |  {   /{ ` { 、/ i    ;             Ⅵ
.         {i   { 7从  :|: 八 斗午ミ、{/゙   |  /  ;         ‘,.  Ⅵ
.        从  八  ;   :|'゙  { ハ刎 '    | ./」_ /i       }ハ }      正解は、他者との関わりですよ。
         ゙     / ヽ′ :l.    辷 ッ      | / i /`i            }゙
            /       .|             泛弐 ノ    }   .;         誰かを助けられた、誰かを幸せにできた、
      /    /   i   |            戈ツ/    ァ゙ ; /
.     /    /r‐'7^i|   |          '    /   才゙ /{/           誰かの悲しみを消せた……
    /    / .|乂___|   |      ` ‐    ⌒ァ=≦ {/
.   /  jIニニ=-ミ i |   |   、       .。s 升                   そうすることで、そういった人々は安堵し、
  / /ニニニニ‐` 、|   |  介=- 七 ノi   |
.  ァ'ニニニニニニニ\   |`'くr '⌒7__ / |    |                    少しだけ後悔が軽くなる。
 /ニニニニニニニニニ‐ヽ :|  ノ⌒7゙ニニ≧x |    |

4413 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 22:51:29 ID:uK6K4vw20

                   ___
          __,..'´ ̄      `丶、
        , '" ̄ フ ̄l `ヽ         \
        /'   /    |          ヽ     ヽ
      〃  ,イ      |     !      |  l   i
      i'   ,'       l、   | l| | l、|  |   |
          |l   |  | 」ム  |ヘナ7メ、|  |   |
          || | ヽ. |ハ|=、ヽ、l 彳うミ、|  |   |        酒や肉欲といったものに溺れる人も少なくはありませんが、
         |ハ、 ヽ从l 化リ   ` ゞ‐' |  |ヽ  l
             ヽトトゝ   、       |  レ'   l         それは救いにはなりえません。
              | i、   r_,     |  |    !
              | | > 、   , イ |  |    l         胸の内に抱えた絶望と後悔を誤魔化しているだけにすぎませんから。
              | |  /ソ)T,.,_,.、jー|  |   |
                /j |_l | レ',イムトr )|  |.,..-┴..、
           /:´l l::::::!   '´ィ,'(_゚)、|  |'::::::::::::::::::ヽ
             /::::::::::! l::::::|    !/ イiヽ|  |:::::::::::::::::::::::!
          !::::::::::::| |:::/ヽ、 j '´||l| ||  |:::::::::::::::::::::::l
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           ′   .′    ./ / |    ト、 !    }    '.
         ′  ′   L上|_l _ |    | .| }  /     '.
          .′  j     「l_ハ∧「`ト、  | r七卞7  / ,′}
         .′   {  ハ {ィfで不ヽ  \j ィホ7 〃 ′/  '      そして、ナノハもまた、そういった人間の一人です。
        .′   V  .八{`弋_ツ       ヒツ /  / / } /
       .′   ,′.}∨ハ 个            厶イ} / l/        苦しみから目を逸らす方法も知らず、
       .′   ,′ ∧   . l.       ___′  ムィl/レ′
       .′  ./ // 爪   '.|丶、   V.../   .イ :l  {            自身が生きる価値も見いだせず、後悔に押しつぶされそうに
      '    / / ′Vハ  廴_ へ、 `" </:l. :|  |
    /     ' /  ..-=ニ¨ヽ, 弋T卞千 ..:/ ..:}. :|  |            なっている。……ここまで言えば、後は分かりますね?
.  /     / ./´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\弋辷ソ| ../ ..:/|. :|  |
/  ,    ,  /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}', r─亠〈 ../ .|. :|  |
  ./   ./ ./ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: | .`ー '//  |. :l  |
  /   /  /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l  '.ー/∧  l. :|  |
   /  /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : {   } 人:.:ノ  | l  |
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4414 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 23:18:17 ID:uK6K4vw20

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大人しくアンゼロットの話を聞いてはいたが、なんとなく程度にしか
理解できなかった。

確かに、アンゼロットの話には一理ある。
自分もきっと、この無価値な人生を誰かの悲しみを消すために使えたなら、
少しは楽になれるかもしれない。

しかし、なぜそれが、自分がナノハの傍にいることに繋がるのだろうか?
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4416 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/07(日) 23:33:20 ID:uK6K4vw20

      /                  ヽ ヽ  '
      ,′       i  {     !     i  i │ i
.     il i      i│! {    !   ! i  i │ |
.     j! !      _,」⊥L八    i _」.⊥.」_ i │ |
      {'.i  :.    {V|,L.|_l `\  i j,..L,_i ヽi │ |      とは言っても、本気で自分の生を無価値だと思っている者というのは
        '. {:{  { .ン'{::ハな` ヽ\i '’かh::!'y!  | │
        ヽ从 { ヘ‘弋z::リ      込::ソ ’| │ |       意外と少ないものでして、ナノハも少数派です。
        八トヘ\       .;       ;リ  j} il
        ,′ |  ム.      、__,.      ,ハ|  |  il       大抵は心の底で、自分の人生はもっと価値があるはずだ、
        ,′ |  i ト .        . イ  |  |  i !
.       / / │ !:│r:えr . _ . '{つL|.  |  |  i '.       とかなんとか思っていたりするものですから。
      / .'   |  i |ん{ |      | _,ノ}   |  |  j '.
.     /,厶.-‐-|  L厶 `yー-n‐ヒ7 У、___|  |. - 、}
    /..::.::.::.::.:::|  |:.::.::..`弋 ヾ〃 /,ノ.:: :.::.::|  |::.::.::.::.\
   /..::.::.::.::.::.::.:::|  |::.::.;. 'フY⌒Y"丶、::.::.::|  |::.::.::.::.::.::.ヽ
.  {.::.::.::.::.::.::.::.:::|  |/ / 八__,ノ\  \::.:|  |::.::.::.::.::.::.::.:}
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しかし、話を聞けば聞くほど、アンゼロットという人物に対する謎は深まる。
何を考えているのか、何が目的なのか、その理由は何なのか、
皆目見当がつかない。

そのあたりについて、何か聞いておいた方がいいかもしれない。
知らなくてもいいことかもしれないが、知っておいて損はないだろう。

下↓3 アンゼロットに何か質問や言いたいことがあればどうぞ
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4419 名前:安価のやる夫だお[sage] 投稿日:2015/06/07(日) 23:42:02 ID:Wjdt7fS60
何でやる夫なんですかお?他にも色んな人がいるのになぜやる夫にナノハさんの話をするんですかお?



4421 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 00:15:56 ID:HCTPnNeY0

                /  ̄ ̄ \
               /ノ  ヽ__   \
             /(―)  (― )   \      あの、一つ質問したいんですけど。
             |.  (_人_)   u |
                  \   `⌒ ´     ,/      「どうぞ」
              /         ヽ
             ./ l   ,/  /   i        なんでやる夫なんですかお? ナノハさんの周りには、
             (_)   (__ ノ     l
             /  /   ___ ,ノ        他にもいろんな人がいるのに。
             !、___!、_____つ
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常日頃から感じていた疑問を口に出すと、アンゼロットは「ちょうどよかったから、
ですかねえ」と言ってくすくす笑った。

「最初に会った時から、思っていたんですよ。『ああ、この人は空っぽだ』って。
活気もなければ気だるげというわけでもなく、正義感が強いわけでもなければ
捻じ曲がった性格でもない」
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4422 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 00:22:48 ID:HCTPnNeY0

              / `
             ,', ′
             {{
             ゝ -f` -   、
          >      '       ヽ
        /       ,         \
       / /     |              \
        / ./         |           ヽ<
       /          ',  ||     |  、   ` =‐-
      |/     |  | ハ  ||ヽ __, |  }   ∨
      |      从/|.| ∨ |||, ´ノ リ\ |    | ∨
      |  |  _ノ-/‐-  \{ ´≦弋ミヽ /. ,' | }        当てて差し上げましょう。
      | ヽ ,   | ,ィ=ミ   `  ゝ- ′ .} /, / リ
        .|  ヽ人 ゝ      ,      /´ /            あなた、家族も、友人も、恋人も、一度も持ったことがないでしょう。
      .| | {.| ` \    _ ‐-,     | | \
       | ,'  ` ___入    ` -     イ  |ノ  \         ひたすらに悪意と害意を浴び続け、できあがったのは
       > /:::::::::::\>       イ .|  |.     \
      / ./::::::::-‐:::::::::ヽ 7-`- ´ .|7z.|  |      \      ぼろぼろになった白い紙。毒にも薬にもならない考えを
       / ./::/:::::::::::::::::::::}\i i` 7_.|_<   ',>= _    \
     ./ .i:,::::::::::::::::::::::::::::::| ∧ \i  / >>. \::::::∧    \    抱いた空虚な男。信念も理念もない、善人にも悪党にもなれない。
    / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::| ∧. \i./   { \::::::\    \
   / /::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::  ,   { }   <::::\\::::::>、     ただいたずらに傷が増えていくだけの人生を送ってきた。
 /  ヽ:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::::|  i __ ′ヽ _ヽ::::\\:::::::i
´     >::::::::::::::::::::::-=::::::::|  |/  |::∨  \:::::::::::\\:::ヽ     違いますか?
      ゝ:::::::::::::::::::/;;;;;;;;;;;:::, /‐- 、::::∨  /::::::::::::::::ヽ ,::::ヽ
      /::::::::::::::::::∧:::::::::::/ /:::::::::::::::::::::::ヽ./::::::::::::::::::::}.} .i::::::::::
      /::::::::::::::::::/ ',::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 'ヽリ:::::::::::
     ./::::::::::::::::::/  }:::::/ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/   ∨::::::::

4424 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 00:29:09 ID:HCTPnNeY0

                ____
              /      \
             /  ─    ─\
          /    (○)  (○) \
          |       (__人__)    |
          /      |!!il|!|!l|  /
         /       |ェェェェ|  \
 /|___|  |        <________
<       |  |        < 言葉の暴力
 \| ̄ ̄ ̄|  |        < ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                  グサッ
┏━━━━━━━━
┃system message
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
アンゼロットの言葉が槍となり、自分の胸を貫いた。
衝撃が走り、精神の窓に罅が入る。

槍が突き抜けてゆき、空いた穴に冷たい風が吹き込んでくる。
思わずうずくまりそうになる。

これが精神が弱っている時にやられていたならば、自分は涙を流しながら、
床に倒れ伏していただろう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

4428 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 00:37:40 ID:HCTPnNeY0

.     ‐……‐- .
.       ___/   `丶
       / ̄ ̄ ̄゜o \      そ、そこまで言わなくても……!
       /  }、_____}
     。゚ 、__ノ  '.     }
        '.____}     /
               /

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┃system message
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
遠慮も配慮もない言葉に胸を抉られながらも、なんとか反論する。

今までいろいろと助けてくれたりしていた分、ダメージも大きかった。
味方だと思っていた相手に、横からおもむろにボディーブローを見舞われた
気分だった。

アンゼロットが椅子から立ち上がる。
今度はなんだ、お次はどういう言葉をぶつけてくるのか、とやる夫もさすがに
身構えた。
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4434 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:23:34 ID:HCTPnNeY0

                ,.'´     〃     `ヽ、
               /         i´ ̄        \
             /         |           丶
             ,'  /         l               、ヽ
          ! /         i  l     i       ヽ i |
          | |         || |  l  |     ヽ   l| |     ……まあ、実を言うと、私もあまり、人のことは言えないのですけれど。
          | l      __|_,L | ! ハ _|__、 | |l |
          | | |   | |ヽ|ヘ|ヘ |、 |ヘ「 ヽ.|ヽ| | |lハj     確実に、あなたより酷く、醜い人間でしょうね。
          | |ハ    トlィチ'ハヽ` ヽl ィア'リ`〉! ,' ,イノ
          |   iヽト、ヽ.ゞ-'       ` "  ノィル' '
          |   |  |トト-ヽ      '     / /
          |   |  |fニ|ヽ.   ー_ '   ィ  ,'
            l   ハ  Vrト,  > 、 _, <ー.|   |、
            !   ,.ヘ  ヽi`'r-r 、 /r '/::::::|   |::ヽ
       ,..┴.、:'´::::::!   i、j、ヽy'ート<::::::::::|   |::::::i
      /:::::::::::::::ヽ:::::::l  l:::>'、r='<‐- 、:::|   |::::::|
.     /:::::::::::::::::::::::\j  l' / lト、_)ヾ` 〉|   |::::::|

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アンゼロットが近づいてくる。
傍から見れば、少女が青年に歩み寄っていく微笑ましい光景ではあったが、
やる夫からすれば、今のアンゼロットは尊厳の破壊者も同然であり、
ただの恐怖の対象であった。

昨日のように逃げてしまおう、そう思って立ち上がろうとしながらも、
後が怖くて逡巡してしまう。

結局、これ以上の反論も、逃げることもできず、震えながらアンゼロットの口が
開かれるのを待つ羽目になった。

ついにアンゼロットが、自分のすぐ横に立った。
蛇に睨まれた蛙というのは、こういう気持ちなのだろうか。
これから自分は、徹底的に人格を否定され、打ちのめされるのだろうか。

何かが動く気配がし、反射的に目を瞑る。
しかし、アンゼロットの温度のない声はせず、代わりに頭の上に何かが乗るのを
感じた。
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4435 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:23:47 ID:HCTPnNeY0

                           _ -===- _
                     , .-==/._      `
                   /        ` 、
                 , '            ' ,
                   ,'              .',
                   ,' /              !.i
                   ,' ,'           ム.,' | | |
               i .i           ム,' ! l i      今ここに立っているのも罪滅ぼし。
               | i           .ム,' i i !il
               | i          ム,' i iil l       あの子たちに構うのも罪滅ぼし。
               ! i          ム,' _ i i
               リ .i  {   !   ム,' /;: ̄ヽ        あなたは白紙だけど、私は汚れきっている。
              / .i  {   ,'   .ム,' ,':;:;:;:;:;:;:i
              ,'  .i  .i  ,'   ム,' i;:;:;:;:;:;;:;!
                /   i  i  ,'   ム,'  i:;:;:;:;:;:;:,'
            , :' /     i .,'        .i;::;:;:;:;:,'
          / /     .i     ',  ',;:;:;:;:i
         / /            ',  i;:;:;:|
       / ./  / .., :′,'  ,'   ',   ',  .i:;:;:|
      / ./   ,' ..,'  ム ム   !.',   ',  i;:;:|
    , :′, :′  ,' ,'  .ム ム    i .',   i .i:;:|
   / /,'    .,' ,'   ム ム    .i .i  .i .i;:|
.  / ,' ,'    .,' ,'i   ム ム    i  i  i  i;:|

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┃system message
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恐る恐る目を開けると、アンゼロットが見たこともないような表情をしていた。
いつものように笑ってはいるものの、何かが違った。
身に纏っている空気そのものが変わっている。

泣いているように見えるのだ。
いや、実際には涙は流してはいない。むしろ笑っている。
しかし、泣いているかのように、寂しそうに笑っているのだ。

その矛盾した表情を呆けながら見つめるやる夫に対し、アンゼロットは
先程とは打って変わって、静かに囁くようにしながら、か細い声で何かを
言っていた。

頭の上の重みが移動する。親が子供にするように、頭を撫でられていることに
ようやく気付く。態度の急変に、困惑する。
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4436 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:23:57 ID:HCTPnNeY0

               /    〃                      \
            /   /                  /             ヽ
          ′   //         !   /     〃               、
            ,   ィ/|          | / |   /{/               ,
.         ,′ / l{' |.     { ─-| / │ //| |'    |           ヘ ',
        /   { ⌒ト、   从 / j/  `lメ、 | |    '|           |
.        /    ∧、{| \ヘ{ V    │   | |  / | j          } !        大丈夫。あなたは、きっと変われます。
        /   / ヘ. |   l\ ===ミ 、    | |  /ナメ、}     i   .′i
      /   / /  `l|   |      `     |//jノ ,′    |  ′/         少しずつではあるけれど、人は前に進める
.      /    / /   l|   |                =ミ、   ′     | /
.    /   /   _ァ‐-|  │                 ヾ/    イ リノ             はずですから。
    /     '  // ト、 /li   │    丶._  ´   <.__  ノ// '′
  /    ,厶∠... | `¨|i   | \      ` `      ,ハ//´ レ′
 /  /..:::.::.:::::..`ヽ  |    |、  \     ,..r  ´  |
/ ,/..::.::.::.::.:::::::::::::::..\|    |て /ト、`r l |  丿|   |
 /..: : :.::.::.::.::.::::::::::::::::::::..\ │ `スrく}r‐┴く  |   |
'/.:.:.::.::.::.::.:::.:::.:::::::::::::::::::::::::::} | /  }\j::::.:::.::..\   |





      /                  ヽ ヽ  '
      ,′       i  {     !     i  i │ i
.     il i      i│! {    !   ! i  i │ |
.     j! !      _,」⊥L八    i _」.⊥.」_ i │ |
      {'.i  :.    {V|,L.|_l `\  i j,..L,_i ヽi │ |
        '. {:{  { .ン'{::ハな` ヽ\i '’かh::!'y!  | │         ただ……その時は、ナノハも連れて行ってあげてくださいね。
        ヽ从 { ヘ‘弋z::リ      込::ソ ’| │ |
        八トヘ\       .;       ;リ  j} il
        ,′ |  ム.      、__,.      ,ハ|  |  il
        ,′ |  i ト .        . イ  |  |  i !
.       / / │ !:│r:えr . _ . '{つL|.  |  |  i '.
      / .'   |  i |ん{ |      | _,ノ}   |  |  j '.
.     /,厶.-‐-|  L厶 `yー-n‐ヒ7 У、___|  |. - 、}
    /..::.::.::.::.:::|  |:.::.::..`弋 ヾ〃 /,ノ.:: :.::.::|  |::.::.::.::.\
   /..::.::.::.::.::.::.:::|  |::.::.;. 'フY⌒Y"丶、::.::.::|  |::.::.::.::.::.::.ヽ
.  {.::.::.::.::.::.::.::.:::|  |/ / 八__,ノ\  \::.:|  |::.::.::.::.::.::.::.:}

4437 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:24:09 ID:HCTPnNeY0

━┓
┏┛     ⌒
・      ___⌒
    / ― 乂____    ━┓
  /ノ  (●/   ― \   ┏┛        「はい、話はこれでおしまいです。あとはご自分の部屋でお休みください。
. | (●)   |     (●) ヽ\ ・
. |    (__ノl   (⌒  (●) |            明日くらいには、風邪も治っていると思いますよ」
. │       〉     ̄ヽ__)   |
  \__/´      ___/
      /|          ヽ
       | |         |

┏━━━━━━━━
┃system message
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何を言っているのかさっぱり理解できないまま、アンゼロットに腕を引っ張られ、
椅子から立たされた。といっても、アンゼロットに起こされた、というよりは、
ぐいぐい引っ張られたが自分の体重を持ち上げるほどの腕力がアンゼロットに
なかったために、自分から立ち上がった形となったが。

首を傾げながら廊下を歩き、部屋に戻った。
何をするでもなく、ベッドに座り、それから上半身を横たえる。

結局、アンゼロットは何が言いたかったのだろうか?
答えは出ないまま、やる夫は寝てしまった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

4438 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:24:36 ID:HCTPnNeY0

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                                   □

                               ・

4439 名前: ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日:2015/06/08(月) 01:29:46 ID:HCTPnNeY0

                  . . .-─‐-. ミ
                     |: : : : : : : : : : `: ..
                     |: : : : : : : : : : : : /
                    }Ο : : : ◯: : : :,′
                   : : : : : : : : : : : :i         はい、今日はここまで。また月曜から残業オンパレードなんだよね。
                      { -===- 、: : :. :.|
                    〉: : : : : : : : : :ノ         >>1ってば、超社会に貢献してる。もぅまぢむり。
                  i: :`ニニニ´: : : : ‘,
                 __/ : : : : : : : : : : : : i         というわけで、来週の日曜日にシーユーアゲインといきたいところだけど、
      ___        /.: : : : : : : : : : :‘,.:.三|
     / :::: ヽ: : : :‐--∧_: : : : : : : : : : :./:|: : : |         体力的にも精神的にも無理かもしれないんだよね。
     .′ :::::::‘: : : : : : }/∧ア´二二ヽ:/ | : : ‘,
.    ‘::::::::::::::ノ: : : : : :ハ \{/: : : :/⌒゙ヽ : : :‘
.       ゝ-=彡-──<¨¨゚‘; .: : :./:::::::::::::::} : :. :.|
                 \: :′:::::::::::/______」
                     弋:::::: /
                       `¨´





                           _ ______
                      ´.: : : : : : : : : : :`
                       l: : : : : : : : : : : : :i
                    i: : :○ : : : ○: :.|
                        |: : : : : : : : : : : |          ま、来週の日曜日の午後九時、できたらやるっスよ。
                     j: : : -===- : :.i
               r―--┐     i: : : : : : : : : : : :l           期待しないで待っててね。
              i: : : : : ',      ゝ : : : : : : : : :t´
                ',: : : : : i  , f: : : : : : : : : : : : : :ヽ          
                \: : : :y: : : :Υ: : : : : : : : : : :y: : '..,
                ',_: :: :/  i: : : : : : : : : : : :l丶 : : :ヽ
                     ̄   l: : : : : : : : : : : .i  \ : : :丶
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