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2013年01月15日

大麻はIQを低くするのか

背景:
嗜好品には健康に悪影響を及ぼすと考えられているものもあるが、その影響を明確に特定することは難しい。統計的な研究を行う場合、他の様々な要因を排除しなければならず、そこに誤りが生じると正確な解析ができなくなってしまう。

要約:
大麻は脳機能を低下させてしまうのだろうか。昨年、論文誌であるProceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)上で、青年期に大麻を多く吸うことで中年期にIQが低くなってしまうことを示した研究結果が発表された。しかし今日、同様にPNAS上で大麻とIQには直接の相関関係はないという研究が発表された。そこでNatureはそれらを比較することとなった。

IQの低下には他の要因が関わっている可能性はないのだろうか。ノルウェーはオスロに位置するラグナル・フリッシュ経済研究所のOle Rogeberg博士らは様々なシミュレーションによって、大麻がIQを低くするという研究結果は、社会経済学的な状態に関連する様々な要因によって説明できることを示した。例えば、貧困層の人々は教育レベルが低くなり、同時に大麻の利用に躊躇がなくなる傾向にある。

大麻は原因なのかただ関連があるだけなのか。IQの低下と大麻の使用に関係があることを指摘した先の論文は、1972~1973年に生まれた1000人以上のニュージーランド人を対象に、38歳かそれ以上まで追跡して調査が行われた。このような長期的な研究では、ある要素と他の要素との関連から導き出される原因によって不具合が生じてしまうことがある。

この研究では、貧困層にある人々ほど青年期に大麻を吸い始める確率が高くなり、同時に依存する確率も大きくなっていた。Rogeberg博士によると、これらによる効果は、教育レベルの低下と合わさることで、大麻とIQ低下の関係を意図せず造りだしてしまうことになる。

Rogenberg博士によると、貧困層にある人々は平均して加齢と共にIQが落ちていく傾向にあり、自然と知的な競争の場から排斥されてしまう傾向にある。例えば、裕福層にある人々に比べて大学へ進学する割合は低下し、肉体労働をする割合が増加する。

他に大麻によってIQが低下することを指摘した論文はあったのだろうか。Rogenberg博士は論文中で、IQの低下と大麻使用に直接の相関関係はないとした3つの研究を参照した。それらの論文では、タバコを多く吸う人々には明確にIQの低下が見られているが、それらは永久的なものではなく、禁煙によってIQの低下が防がれている。

先の論文の著者はRogenberg博士の論文についてどのように考えているのだろうか。共同研究者であったデューク・トランスディシプリナリー・プリベンション研究センターのMadeline Meier博士は、Rogenberg博士の観点は興味深いものだという。しかし、先の研究では中流階級に生まれた個人に制限して研究を行っているため、IQの低下が社会経済学的な要因のみで説明することはできないだろうという。

Meier博士によると、彼女らの行った研究では、社会経済学的な状態も考慮に入れて解析を行っており、どのような背景を持った人々も、大麻を青年期に多く吸わなかった人々には成年期でのIQの低下は見られなかった。そのため、社会経済学的な状態がIQの低下に影響を及ぼしているわけではないだろうという。

果たしてどちらが正しいのだろうか。それは明確に断言できるものではない。両者は同じデータから違った方法で解析を行っており、両者ともにそれぞれの利点がある。

ではこの疑問を解決することはできるのだろうか。そのためには他の国で行われた同様の調査と比べることが有効となる。このような比較は以前にも行われていた。例えばイギリスで行われたUnited Kingdom’s Avon Longitudinal Study of Parents and Children (両親と子供に関するイギリス・アボンにおける長期研究、ALSPAC)では、母乳を与えられていた子供は高いIQを持ち、血圧や体重は低くなる傾向にあった。またこの研究では母乳での育児と社会経済学的に高い地位には関係があった。しかしブラジルでの同様の研究では母乳での育児と高いIQには関係があったが、社会的な地位との関連性や他の効果は見つからなかった。

他の研究者はどのように考えているのだろうか。ニューヨーク州立大学オールバニ校のMitch Earleywine博士によると、この研究は青年期の大麻使用とIQ低下の関連性は偽物であり、薬学的な原因ではなく社会経済学的な原因によって起こっているという説を、明確に補強することになったという。ALSPACに参加していたブリストル大学のJohn Macleod博士によると、Meier博士らは自身の論文内でも、先の結果は様々な要因が原因となっている可能性にも言及している。またRogeberg博士の論文は様々な合理的な仮定から成っているため、可能性は確かにあるだろうという。

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元記事:
Pot smokers might not turn into dopes after all
http://www.nature.com/news/pot-smokers-might-not-turn-into-dopes-after-all-1.12207

参照:
Meier, M. H. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 109, E2657–E2664 (2012).
Rogeberg, O. Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1215678110 (2013).
Moffitt, T. E., Caspi, A., Rutter, M. & Silva, P. A. Sex Differences in Antisocial Behaviour (Cambridge Univ. Press, 2001).
Farmer, M. E., Kittner, S. J., Rae, D. S., Bartko, J. J. & Regier, D. A. Ann. Epidemiol. 5, 1–7 (1995).
Fried, P., Watkinson, B., James, D. & Gray, R. Can. Med. Assoc. J. 166, 887–891 (2002).
Lyketsos, C. G., Garrett, E., Liang, K.-Y. & Anthony, J. C. Am. J. Epidemiol. 149, 794–800 (1999).
Brion, M.-J. A. et al. Int. J. Epidemiol. 40, 670–680 (2011).

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