やる夫は希望にすがるようです
(東方やる夫スレ纏め さん)

その世界には三つの国があった。
長き時にわたり闇の竜が支配するこの時代、昼日中でも闇に閉ざされた三つの国。
一人の少女がこの闇を晴らそうと旅に出た。
物語はその少女が、何処にでもいる男を助けたときから始まる。

原作:「巡り廻る。」 ゲ製うんかん。 様作のフリーゲーム。(読みはめぐりめぐる、らしい)
主人公はやる夫。ヒロイン多数、登場人物多数の長編。
登場人物が多いが、その全てがしっかりと生きている、
濃度の濃い人間関係がオススメの一点。
作者はニャーワンミントドリンクWithココアさん。…ニャーワン?わん。

原作ゲームをプレイ済み・未プレイに関わらず楽しめること間違いなし。
むしろ原作ゲームはフリーゲームであり、知名度はそれほどでもないので
(フリーゲームというジャンルの中では金字塔ともいえる知名度の作品なのだが)
この物語は未プレイの人間にはゲームの紹介、
既プレイの人間には「おお、こんな技使ったことがなかったがこんなに使えそうだったのか」とか
「この魔物、こんな風に育ててみようかな」などと、
一種の攻略情報日記のようにも読み楽しめるだろう。

とはいえ原作ゲーム、とっつきの悪さと説明の少なさとが強く、
難易度の上昇から「状況が詰む」→「ゲームを積む」のコンボを味わいやすいゲームとなっているのは事実。
未プレイならばどうかこのやる夫スレを攻略の指針としてほしい。
攻略Wikiも片手にな!
私も少し前にこのゲームはプレイしたのだが、このスレを読み進めるうちに
「この作者、今どんなゲーム作ってるのかな、ジャンクエデンのあとは…」からの
「なにぃ、巡り廻る。がバージョンアップされてるだと!しかもβ30とか!?」で
「ちょ、ちょっとやってみるか」からラスボス倒すまでやってしまった。
バージョンアップでアイテム合成連続作成とか冒険者からエレメントが買い取れるようになったとか、
賞金首からエレメントが山ほど取れるようにとか隠しエリアとかあってついつい。
しかし前回プレイには手を出さなかった魔物育成と斧キャラ使用は、
まちがいなくこのスレ影響です。

14話までがプロローグ、と作者自身が途中語っておりますが、
ストーリーの濃度はそんなものではなく。
5話まで読んでいただければ、この物語の、ミントドリンクさんらしさを
感じ取れるものになっていると思います。
原作ゲームにはストーリーらしきストーリーは完全には語られないにもかかわらず、
ここまでのものが完成するのか!と驚くことしきり。
原作ゲームをプレイした方には特にオススメできます。


続きを読むの後はいつもどおりのネタバレ込みとめどない感想。
*必ず*スレを完結まで読んでから読み進めてください。












ミントドリンクさんの作品で、最も輝いていると私が思っている部分。
それは情け容赦のない別れだ。
銃弾が通り過ぎたそこに、もし愛する人がいれば。
敵の襲撃があったところに、どうしても守りたい人がいれば。
…死というあっけなく、どうしようもない別れが、彼らを引き裂く。
この現実では当たり前のことを、当たり前に描く。
これが本当に魅力的で、忘れられない傷を私に与えてくれる。

もちろん今回も、そんなどうしようもない別れを叩きつけてくれた。
家に帰ってきたら、母親が死んでいた。
荼毘に付され、残ったのは骨壷、わずかな遺産。
やる夫の行動が、光を取り戻したことが遠因になっていた。
…もうこの時点で、彼の心を慮るだけでもう。
主人を思いやるペットの姿さえも、彼の受けた心の衝撃を癒すことはできないようで、
実に素晴らしいシーンであります。
もちろんその失意の中から、自分なりの励まし方でやる夫を救い上げるやらない夫との
友情の育まれ方も大好きなんですが。
それさえもやる夫が、傷を心の奥の奥へと封印してしまい、
彼の精神の危うさの原因になるところが実に、もう、なんとも。
感情の底流には静かに流れる毒。ステキです。

そして賞金首ギャル夫との再会。
それまでに、光の巫女と同行し、その後自分の意思で勇者となった
光に満ち溢れた道程を全てかなぐり捨てて、たった一人と一匹の狩人となるシーンはまさに珠玉。
仲間と信頼と名声、それら全てを復讐という天秤に乗せ、
たった一人での復讐を選んだやる夫。
…すぐそこには彼を失意から救い上げたやらない夫がいたのに、
彼に協力を求めもしなかった、完全なる復讐の為に求めることができなかった彼の姿は本当に痛々しく、
それでも「母親の仇をこの手で」という目的は痛いほどに気持ちが良くわかる。
そして。「正義は成された。」
もう言葉もない。読んでいて震えるしかなかった。

そしてこの時点まで、…正確にはこの後、たった一人で戦争を止めようとして失敗するまで、
彼には本当の意味での仲間はひとり、ゆっくりしか居なかったんだろうな…。
と考えながら読み返すと、それまでのやる夫のなんと痛々しくウソ寒い笑顔か。
目的のための協力者、雇っているだけの傭兵としての付き合いだった彼らが
ついに本当の仲間として目的に向かう、修造の言葉からの全員集合は
心が熱くさせられるものだった。


重めの感想終わり!後は軽い感想。
ベアトリーチェさん最高!
「うみねこのなく頃に」で使われた赤き真実を知っていると、一段と楽しめる突然の赤い一コマが好きです!
彼女だけは懐かしの「街」(チュンソフト)をプレイしているように、
グッドエンドへの道を模索して泳いでいるのではないかと想像。
やる夫に母親の一件を知っていたのか問われるところは大好き。
修造さんの全員集合の時の言葉も好きだけど、やる夫の言ってることを真っ先に信じると言ってくれる所は
凄くいいなぁと思いました。真っ先に声をあげてくれる人って本当に貴重。
明日香さんは私も原作マンガ「超少女明日香」のファンゆえに、ちょっと応援しておりました。
送金しているご主人に弟が居るって一文だけで、ああ、あの家族だと納得。
傭兵として雇われたからには裏切れないってシーンもですが、
その後の再会してからのぎこちない会話は特に良でした。

やらない夫の男の友情も、できない夫の闇竜の正体がわかってからの行動も実に良。
飲んだくれたやらない子の、土下座をしてパーティ復帰をお願いするシーンもステキ。
やらない子、やっぱり親譲りでやる実のことを…なんだろうなぁ。プラトニック。
三国の国王暗殺はゲーム内でもどうなのかと思ったけど、水の国だけはこれが最善だよね!
パチュリーさんの汗かいて焦ってるaaは見慣れてしまいましたな。
状況に対しての貴重なツッコミ役でしたからなぁ。
常識人&師匠枠なアルフォンスも。最後のほうは被サンダー役でしたが。
できない子は要所要所でいいムードメーカーでしたなぁ。
そしてゲームをやってから思い出した、ただのMOBだと思っていたやる奈さんが
えらい重要人物だった事実。アキナだったのか!読んでるときは全然気がつかなかったよ!

今作の相棒、しかし口のきけないペットであるゆっくり霊夢は本当によい相棒でした。
少ししか語彙がないのに表情豊かで、すごくかわいらしく描かれておりました。
…その戦闘力と行動力から、なんかネコを飼っていたらライオンに進化した、みたいな…。
彼もまたやる夫の母を守れなかったというのが心残りになっており、
そのために強くならなければならないと思っていたことからの魔物食べ放題だと思えば。
その食べっぷりや食欲も、彼なりに強くなるためだったと違うものが見えてきますね。
ポトフもただの騎獣だと思ってたら、記憶があるところは本気で吹いた。
もう一人の相棒と言ってもいいかもしれない、のっぺらぼうの「闇」もフランクで、
かなりウザ面白い人格でいい味が出ておりました。
戦争を止められず失意の底にあるやる夫に、30%引きとか言い出すところがとても。
「やる気とか引いてある」じゃねぇよ!

前作から引き続きの重要人物、やる実は前作に引き続き父親の足跡を追う役柄でしたが、
第二部の最後まで彼女の正体のわからなさは心から不安にさせられました。
最後の最後までハッピーエンドの片鱗が見えない、一番の原因が彼女なのが
読んでて心苦しかったです。
それもあってあの最後の玉座のシーン、再びの同じ問いを、力強くやる夫が答えるシーンの
開放感は気持ちよかったですわ。

他にも味のある人々が好きでした。
わりと親身になってくれるスタップおじさんとか、ひょんなことから付き合い始まってる堂島家とか、
突然審査員やってるペプシマンとか。ほんとにあれ王様?
あ、このこと書くの忘れてた。

不滅のペプシマン

(やる夫エッセンシャル さん まとめ)

ミントドリンクさんが、今作連載中に投下した短編作品。
同じように投下したダンジョン飯とドラゴンの飼い方は先のまとめさんに載っていたけれど、
こちらはなかったので。
デッデーデレ デッデーデレ デッデーデレ ペプシマーン!
脳内再生完璧。

感想文が遅れに遅れたのは原作ゲームをやっていたためです。(断言)
希望倒したあたりで感想文を書こうと思ってたけど、
リン=やる実が仲間になるのって次の週じゃないか…と道具作成レベル上げに。
バージョンアップの上、一度やったことだから楽になってるかと思ったらそんなことはなかったぜ。
前回プレイ時に欠片も手を出さなかった、育成魔物はほんとに強かった。
カメガメのMP消去つええ。光翼硬ェ!
…それでも隠しダンジョンボスに行く気はしなかった。
この最後に物を言うのは合成レベル、ってのがやりこみにくい点だったなぁ。
ゲーム自体の評価は、本当にいい世界観とやりこみたくなるバランスなんだけど、
やりこみ始めると人間の強化がきつすぎるところと最初のとっつきの悪さでいささか減点。
大会で鍛冶と防具作成は上げられるけど、道具作成がなぁ…。

おっと、感想がスレのほうから離れた。
やる夫は希望にすがるようです のラストと、続編 やる夫は絶望を忘れないようですのラストとは、
絶望と、なぜ、どうしてという?マークと勇者達でさえかなわぬ奇襲と物量の理不尽の死の嵐と、
全ての不穏な因子を削り取っての、光り輝く未来へ切り開かれた対比となって本当に心地よいものでした。
希望にすがるようですのラストのときは、リアルタイム投下を追いかけていたのですが
一番いいところ(闇竜化・ギコ戦のあたり)の深夜に寝オチ、悪夢にうなされて起きたということもあり。
ハッピーエンドには胸を撫で下ろしましたとも。

本当に今回も、完成度の高い物語でありました。
と唐突に終わる。

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