やる夫達の白河城攻防戦
(このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか さん まとめ)

時は幕末、戊辰戦争と呼ばれる戦い。所は東北の玄関口、福島にある白河小峰城。
ここで明治新政府軍と、東北・幕府同盟軍とが
90日間に及ぶ熾烈な戦いを繰り広げる。

どこかでこのやる夫スレが良いよーという感想を聞きつけ、
ああ歴史ものか、そのうち読まないとなーとブラウザタブの海に沈みかけていた。
某作品4話で「白河城」に触れられていたことを思い出し、(この同時性に気がつかなかった私)
再びタブを開いて作者名でググルと「金糸雀が戦車ゲーを始めたようです」の
◆ooEn6fLsfAさんじゃないですか!(つまりビール作者の◆MIZ/REl/eEさんである)
沈めるわけにはいかんと慌てて読み。

主人公は会津藩総督・西郷頼母役、やる夫と、
新政府軍参謀・伊地知正治役、ストライクウィッチーズより坂本美緒。
番外編なども差し挟みつつ、全23話の中編。
スレへの投下時期が偶然NHKで放送されていた「八重の桜」と被り、
ドラマでは会津寄りなストーリー、こちらではかなり中立な視点と
投下に立ち会えていれば、歴史を同時に多角的に見る楽しみ方ができていただろうなと思う。
…残念ながら私は「八重の桜」をほとんど見ていないので、
各所で聞く「西郷頼母が西田敏行」という、それだけのイメージしか持っていなかったのだが。
おかげでこのスレのやる夫のイメージ、全部西田敏行。

物語は新政府側・会津側に偏ることなく、
それぞれの舞台背景や歴史、現在の情勢などを細かに語った上、
兵器の考察、特にその当時の銃器がどのようなもので、
それぞれの特徴と配備状況なども調べた本格的な考証が光る。
歴史や銃について語った番外編の部分は、一見の価値あり。
掘り下げ方の深さは、流石は別スレでWorld of Tanksを語った作者というべきか。

西郷頼母の不運と戦術的敗北がしっかり書かれている部分と、
軍略家、伊地知正治の鋭い読みが光る部分は読み応えがあった。
あと板垣退助強すぎ。なんでこんなに軍人として強いんだと、歴史に疎い私としては
AAのイメージとあの特徴的なヒゲ(百円札)のイメージが合わなかったが、
その戦歴を見れば納得。
斎藤一が斎藤一自身なあたりとか、配役の妙も上々。

戊辰戦争の会津といえば若くして自刃した白虎隊とか、
戦死者が賊軍扱いで、未だに靖国神社に正式には祀られていないとか、
語られにくい暗い所も数多くある。
だが「どちらが正義」などという部分から離れ、
双方には双方の戦う理由があり、死力を尽くして戦ったということがよくわかるこの作品。
すっきりとした読了感とともに、力作でありました。

余録。
西郷頼母の養子、後の西郷四郎というところでハタ、と手が止まる。
…あああ、「修羅の刻」だよ!そうか、漫画内で語られていた謎の武術、
あれが西郷頼母から直伝されたという設定を、
川原正敏が拾ったのか!と慌てて本を取り出す。
なるほど、後書きに
「写真を見ると良く似ているし、四郎出生前後の辻褄も合うらしいし、
隠し子を養子にした説を採った」と書いてある。
一気に西田敏行にカッコイイイメージが+。写真も残ってるのかぁ。
会津藩お留流の伝承者…
ううむ、戦場に銃がなければ名将として活躍した人だったのかもなぁ、
などと妄想広がる設定でございました。
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