やる夫は狂えるオーク戦士であるようです
(このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか さん まとめ)

人間よりも長躯、筋骨隆々の肉体を持ち頑健なるオーク族。
そのオークの一部族を率いる長は、とある海賊と行動を共にし、
高次元の存在、“精霊”の声を聞くという。
海賊が王国に叛意を示したその日から、彼もまた海賊の剣となり、
最も激しい戦場全てに立つ。

ばくだんいわ作。全34話の中編。主人公はやる夫。
オークの長であり全軍最強の剣士でもある彼が、
叛乱軍指導者ジャック・スパロウに付き従い、
世界各地の強者と剣を交える、国取り戦記物安価スレ。

…とはいえ主人公自身は脳みそまで筋肉・略して脳筋キャラであり、
安価参加者=安価精霊の声が届くのは主人公のみ、という設定から
「難しいことは他NPCにまかせとけ」という脳筋大喜び難易度になっている。
いつものばくだんいわ作品名物な、圧迫面接や強大な地位の敵NPCとの接見など
胃の痛くなる場面は無いので、初心者読者も安心。
戦記物だし、有るだろう圧迫面接の数々を楽しみにしていた私のような奇特な読者は…
次回作を待とう、な?

この作品の見所は二つ。オークなのに純朴、巨体で誰よりも強い亜人なのに、
いろいろな部分で垣間見える主人公やる夫の可愛らしさ。
戦場に立てば誰よりも恐ろしい姿と、戦場以外のまるで少年、
「気は優しくて力持ち」を体現したような姿との二面性が実に楽しい。
船長や仲間たちと醸し出す、まるで家族のような掛け合いを楽しんでもらいたい。

もう一つの見所は、やはりメイン脳筋バトル物としての、多彩な敵の描き方である。
前作 キル夫は漆黒の騎士になるようです
(このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか? さん まとめ)  (感想)
と比べるのは失礼ではあるが、今作の「敵の強さの表現」と比べて違いは歴然。
主人公と敵対するキャラ毎の強さを、読者に理解できるように描く、という技法が、
前作がまるで平坦に見えるほどに、今作は起伏に富んでいる。
RPGやヒロイックサーガの、敵の強さのインフレを納得できるように表現するのは
本当に難しいのだが、今作の描き方は一段と上手い。
戦いの度により一段と強くなっていく主人公に、
各々の最も得意とする手段で立ち塞がる敵たち。
その強さの特徴悉くに、主人公と安価精霊を悩ませる戦いに、
強さを納得しながら楽しませてもらった。


以下はネタバレ感想。今回も読んでから↓をお願いします。
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ここからはネタバレこみの感想。
まだ作品自体を読んでいない人は、早く新タブを開いてスレを読みに戻るんだ!





ナムリスどうなったんですか!?
シロエのクリア後エンディングエピソードは何!?
え、まさか次回作の構想がもう既にあって、もしかしてナムリスさん主人公!?(妄想)
邪神と叛乱とで荒廃した王国を立て直すために、
ナムリス&サーシェス+シロエ夫妻でウォーシミュ!?(もちろん妄想)
ええ、学院の重鎮やトルケルや船長、精霊なしやる夫達相手に圧迫面接!!?(妄想です)

はぁ、はぁ、…いかん妄想が暴走してしまった。
Be cool、Be cool。冷静になって、と。
改めて今回も、実に面白い作品であった。
できない夫は狩猟日誌を綴るようです 
(このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか さん まとめ)(現在連載中)
のシステム煮詰め、テストプレイから始まったというのに、
安価精霊とやる夫の関係性が実に楽しくてもう。

戦場のGMへの質問を、やる夫自身に直接聞く形に、
それも「やる夫は頭がそんなに良くないので、わかりやすく簡潔に」という
言わば縛りつきの形に変えた事が、物語的にもやる夫というキャライメージにも
非常に上手い具合に転がったような気がする。
「○○して△△を使い、××を壊して■■を倒せ」が
「あ ば れ る の だ」に変換される、そして何とかなってしまう。実に楽しい。
GMが読者に解り易い戦略を表現するというのは大事だけれど、
この縛りのおかげで、読者がGMにも解り易く戦略を説明するという
新しい良い流れが出来たような、そんな予感がした。

特に最終スレ、>>2374(まとめではココ)からのシーンの魂の震え方は凄い。
「この子難しいこと言うてもわからんさかい、簡単に説明したらなあかんな!」
というオバ&オジさん精霊達の暖かい目線と、主人公への感情移入を
物語の進行と共にじわりじわりと上げて行き、
最高に強くなったクライマックスでこの表現だよ!
>>2374で時間指定安価をとりながら、その時間内にGMが、
安価内に書き込みを差し挟むというこの場面。
繰り返し見ても美事すぎる。
異世界からの干渉が、代償を取って形を成し、主人公に力を与えるという
最高の盛り上がりを後押しする表現技法。
…もちろん偶然ではなく、twitterでばくだんいわさん自身「温めていた演出」と
呟いておられていた。
この御仁、まだまだ自身の作品を研磨することに余念なし!

そういえば今回、どうしても作品の納得がいかなくて、まとめ差し戻しのお願いを
スレ途中でしておられていたなぁ。
作品の進行や筆運びの速さ、自スレで他作者達の相談に乗る所を見て、
「もしかしてばくだんいわさんは、自作品に関して悩むことなんて無いんじゃないか
or近頃無くなってしまったんじゃないか」
なんて思ってしまったりしていたけれど、
やっぱり悩む部分もあるんだと知って少し安心した。

個人的ベストバウトはやっぱりガッツ戦。次点が“腕”。
ガッツの強さと技量を表現する、細かいコマ使いに感動。
明瞭に異形だと解る、ありえない場所からありえないモノが生えている敵との死闘も
実に燃えるものがあった。
ベストキャラはもちろん主人公、やる夫自身に。
やっぱり強さと可愛らしさを同時に持っている、という主人公は、
近頃は貴重な存在だと実感。
精霊たちとの関係も、船長が父ちゃん、シロエが兄ちゃん、他の元戦利品現友人たちという
家族関係も含めて、実にいい主人公だった。

twitterではばくだんいわさん、1、2つ番外編を描いて手仕舞いかなぁと仰ってましたが、
番外編を待てずに感想を書いてしまった…。
番外編が発表されたら追記するかも。

(12/25追記)
追加発表された番外編1、読み終わり。ん、番外編「1」!?
年末は、年末年始企画以外はゆっくり休むということでしたが、
その後でもこの作品、もっと広がりがありそうなタイトルナンバーですなぁ。(ニヤリ

シンジ王も生きていたし、乱世の王としては素質が足りなかったけれども
船長のおかげで幸せな人生は送れそうであるし、よかったよかった。
すっきりした読後感…と言いたいところですが、
まだ語られていませんよね、ヒロイン二人がここからどうなったのか。
形だけは平和になった世界のアサシンと、
神の降臨を身近で体験してしまったハイプリーストが
やる夫とどう生きていく結論を出すのか、期待しております。

ばくだんいわさんが作品内で紹介していただけるわ、
このやる夫スレ、まとめてもよろしいですかさんのまとめで
その私の感想の紹介がそのまま作品まとめ内に入っているわで
弱小ブログの人間としては、日々照れで顔が真っ赤になっておりますが、
この場でお二人にお礼申し上げます。
それらのリンクから初めて見に来ていただけた方々、
読んでくれてありがとう!
やる夫スレの感想は時々、漫画の感想やフリーゲームの感想がほぼメインですが
時折思い出して覗きに来て頂けると喜びます。


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