やる夫は流れついたようです
(やるやらブログ さん まとめ)

(ネタバレが深いところは白字反転しております。読後にどうぞ)
現代から異世界に、突然ワープしたやる夫の話。
精神操作・破壊・空間跳躍・飛行など、ほぼ何でもできる魔法を使うことができるが、
平穏に生きるため、出来得る限りその事実を隠して生き残る物語。

全259話の大長編。…一話一話のまとめ量はそれほどでもないので、
そこまで長く感じることはない。主人公はやる夫。
ヒロインはらきすた&ローゼンメイデンのキャラ達。

舞台は数百年続いて倦んだ貴族社会に、搾取され尽くした平民。
そこに万能の魔法を扱える上、現代の知識の数々を持った、
「これはひどい」と思うほどのチート主人公、やる夫が現れる所から始まる。
それだけでなくこの主人公、政治的に暗躍、経済で裏から支配、
と多方面に現代知識を発揮し、無敵に無敵を掛け合わせたような強さを見せ付ける。

物語序盤から、長く長く圧倒的無敵さが強調されており、
物語として盛り上がりに欠け平坦な部分が強い。
出てくるライバル達は、やる夫に相対できるレベルの人間はおらず、
ことごとくが苦戦さえも出来ず捻じ伏せられてしまうので、
話の盛り上がらなさがかなり寂しい出来となっている。
…知識・情報・身体能力・白兵戦闘全てを兼ねたチート主人公といえば、
思い出されるのは「海皇紀」の主人公だが、
あちらはその折々に「主人公でもかなわない部分のあるライバル達」が前に立ち塞がり、
物語の要所を締める働きをしていた。
このスレでも少々そういう存在があってもよかったかな、とは思う。
私個人が納得のいく、ライバルキャラが姿を見せるのがようやく150話ぐらい、と
それまでの展開が平坦なので、飽きが来るのが残念。

だがそんなやる夫が、時折見せる弱さの部分の描写は沁みるものがあった。
具体的には自分で作った料理しか口にできないシーンと、
初めて温泉街と日本食を目にしたシーンはジンとくる。
もう戻れないし戻らない、と過去と日本を断ち切ってからの不意打ちもあり、
一度断ち切ってから繋がる故郷との絆はなかなか来るものがある。
(ここからもう一度、故郷に絆を断ち切られたらダンバインルートだ)

ちょっと視点を変えて、巻き込まれ型主人公としてやらない夫を見たほうが、
一般人からの成り上がりストーリーとしては感情移入がし易いかもしれない。
…途端にやる夫がウザ上司に見えてくるかもしれないが。まあいいか。
物語序盤に構築した友情は揺らぐことなく、それに基づいた信頼あっての弄りと
いうことで納得しておこう。二人で釣りに行くシーンとか良かった。

物語としては、私の予想外で、納得のできるラストを見せてくれたので
終わり良ければ全て良し。突然描かれた過去編などは…
ちょっと長くやりすぎた感はあったが、今続編を連載している程に
キャラ愛が溢れてしまった結果だから仕方あるまい。
やんねえ香とダディの物語は元のやる夫の物語よりもメリハリが利いていて、
また物語構成が元よりも面白い所為もあって、(理を通さず力と悪を貫く痛快さか)
素直にやる夫に感情移入しにくくなってしまった。
筆が意思を得てそう走ったのだろう、仕方ないこと。

個人的に好きなキャラは真紅と、ファーザー。過去編の二人は別格で。
特に真紅は、やる夫の正体を理解してからでも簡単には屈しない風格の描き方
ファーザーは純粋に、道化師役としての全てが格好良かった。
自分の命をチップにして、政治的舞台と腹芸の世界に切り込んで行き主君のために尽くす、
しかも武官のように華々しくなく、いてもいなくても良い存在に見せかけていると
どこを切り取ってもステキなキャラであった。
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