できない夫は冒険者として立志するようです
(やる夫AGE さん まとめ)
(この記事内のまとめリンクは以下、全てやる夫AGEさん)

荒れ果てた自分の生まれ故郷を復活させるために冒険者として生きてきたできない夫は、
「熱」を求めて生きる少女・衣玖と出会う。彼の目的に「熱」を感じた少女は、
同じ冒険者となってできない夫に協力することを誓う。

通称ばくだんいわさんの斜向かい、男爵さんの作品。
前々作にしてデビュー作、「やらない夫は貧弱男爵家を立て直すようです
および前作「やるめは騎士としてドラゴンを退治するようです」 (感想)
と同じ世界観で語られる長編。
世界観のみならず、前作で出演したキャラクタ達の話は物語中&雑談で
頻繁に語られるので、一作目から順を追って読むのがいいだろう。
一作目は荒削りだが、その面白さは保障する。
ひとつの大陸における国家と国家の策謀に関わるやらない夫と、
吹けば飛ぶような弱小国で、大国の思惑に翻弄されるやるめの物語は
その切り口も味わいも違い、実に面白い。

前作までは国家を経営する、ウォーシミュレーションの匂いが強いスレだったが、
今作は一人の冒険者となって動くため、非常に自由度の高い作品となっている。
主人公はできない夫、ヒロインは東方緋想天から、永江衣玖。
原作準拠な話は少なく、原作を知っている必要はない。

本当にほぼ何もない状態の故郷の村を、
自分の稼ぎや働き手のスカウトで、ダイナミックに復興するのが読んでいて楽しい。
少し中だるみしたり、作者自身が壁にぶつかったり、人生の転換期があったりで
途中に別の作品が差し挟まれるが、本編は確実に完結させる上、
その別の作品も面白いと全く問題なし。時間軸に沿って読んでいこう。

前回の感想にも少し書いたが、この男爵さんというGMは、
有利すぎてイベントが崩壊するようなダイス目をひいても
マスタースクリーンの裏で見えない調整をするのではなく、
調整無しで本気で悔しがっている所を、文章で見せてくれる稀有なGM。

プロットが崩壊するほどの(もちろん崩壊などせず、GMの腕で回復しているのだが)
荒ぶるダイス目の中、それでも何故選択肢として
「致命的失敗(ファンブル)」と「絶対的成功(クリティカル)」の結果を準備するのかと
参加者に問われたところ、
「クリティカルやファンブルの無いランダム安価スレなんてつまらないじゃない!(その53)」
とのこと。プレイヤーを楽しませることが第一の、エンターテイナーの鑑である。

そして今回ももちろんダイス神の御加護は存在する。というより荒ぶる。
どうも安価スレごとに違う性質の女神がいるらしく、この作者のスレでは特に
プロットをぶち壊しにされて、机に突っ伏す作者を幻視することができるだろう。
その荒ぶり方は、今まで見た安価スレの中でも今作が最強
嘘だと思うなら手に取ってみて欲しい。
筋書きの無い安価スレが、何者かの意図があると感じるほどの干渉を受け
物語として不思議に収束していく姿を目にするだろう。

以下はネタバレありの感想をとめどなく。
必ず読後に読んでください。
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前作・前々作に引き続きの、メガザル王国近傍5ヶ国のひとつ、スペースコブラの物語。
そろそろこの世界観を使った作品シリーズに、
「~~物語」という感じのタイトルがついてもおかしくない連載分量になってきた。
そして量のみならず、作者が事あるごとに第一作のキャラや第二作の設定話題を出し、
読者もその雑談に「ああ、こんな事件もあったね」なんて反応を返す…。
住人も作者も、凄いキャラ愛だ。
大量にやる夫スレを渡り歩き、マンガやリプレイを読んでいると
一キャラへの思い入れが薄れてしまい、記憶も乏しくなってきてしまう自分には
このスレは初々しく、眩しい。

もちろんそんな愛を注がれたキャラたちだが、
決して独りよがりな設定を押し付けるようなものではなく、
キャラごとのポリシーがあり、思考し、行動している様が感じ取れて実に良い。
簡単に言うとロック最高。
ロックのような「ゲーム序盤からいる軍師キャラ」が、私にとって大好物というのもあるが、
そんな存在が主人公にとって決してイエスマンではなく、
主人公が踏み込みすぎた発言をしたとき、
自分のポリシーをこそ第一に考えて拒否するシーンにはゾクリときた。
シーン的には安価による会話であり、判定は失敗であるのだろうが、
仲間として長く付き合っていて、それなりに内面も解ってきたと思っていた人間が、
底知れないものがあると感じさせる一瞬、背筋が凍る感覚は素晴らしい。
決して私が圧迫面接大好き!だからというわけではないけれど。

そしてクルーゼ最高。
シナリオ後半にぽっと出で現れた悪役だというのに、
ダイスの女神の力でなく、GMのシナリオとキャラの語りの手腕で
強烈なトリックスター振りを見せ付けてくれる。
敵になっても味方になっても非常に厄介な生き物が、
敵の重鎮となって主人公達の前に立ち塞がるこのシチュ、たまらん。
終わってみれば、クルーゼのせいで一番不幸になったのはムーンフェイスさんな辺りも。

次点で好きなキャラはサイトと青さん。
直接の復讐を諦めるために、最終決戦前に主人公に決闘を申し込む漢らしさと、
それに負けておきながら、最終決戦に突撃してくるいい加減さの同居ぷりがステキ。
娥さんはもちろん、ダイスの女神の寵愛を一身に受けた象徴として。
最初の登場から、まさかオルステッドとくっつく未来を誰が想像できるのか。
ランスロットや
眼蛇夢も驚異的だったけれども、
本気で吹いた上、読んでいて幸せになったのはこちら。


さてここからは少しだけ批判的に。
ここまでキャラに対する愛を感じる安価スレ運営をして、
ここまで私に好きなキャラがいると語らせるGM能力があって、
なぜ
「そこまで>>1のキャラを魅力的に描く能力、信用無いのかなぁ。
……………無いんだろうなぁ。これまでがこれまでだし。(その66より)」
などという反応が作者から出てくるのか。
もっと誇れ!あなたの作品も、キャラ構築能力も一流だ。
少なくとも私は、あなたの作品が十二分に面白く、
キャラが魅力的だと知っているぞ!
自由に思うとおり書けば、それこそが最善手であるよ。

GMとして、安価指定の範囲内で募集された「キャラクターの発言」に対して
書き込み内容を特に重視する。
ネタ書き込みに見えるような安価であっても、絶妙なミキサー加減で
安価内容を出来得る限り反映した文章を作り出す。
男爵さんの美点であり、間違いなく長所の一つだ。
…なのだが、スレ参加者の書き込みを一つ一つ大事にするあまりに雑談が濃くなったり、
空気の読めていないシステム批判や、世界観批判の書き込みにまで
真摯に対応してしまう姿に少し涙が。
そんなもの豪快にスルーしていいんやで、と謝る背中に言いたくなってしまう。
人気が出て参加者が増えたことの弊害か。
体調不良や精神状態が悪い時、文章に丸わかりなほど反映されるという特性も
今作でよく解ったので、そういう時は無理せず自重して、
長く名作を描いてほしいもの。後輩さんの忠告は特に大事に。


そういえば、この作品の合間合間に挟まれる、もうひとつの名作、
小聖杯戦争シリーズに触れるのを忘れていた。
ギャグ風味の強い、…いや大半がギャグという本質から逃れることなく、
キャラも壮絶なまでに立っていた。
この世全ての悪魔法少女も強敵だったけれど、
ギースさん+地蔵の技を1.5倍カウンターするという、
一切の慈悲も感じさせない主人公サーヴァントの暴挙に
個人的に私の部屋が爆笑の渦に叩き込まれた。ひでぇ、ひどすぎる。

ばくだんいわさんの雑談で、折に触れ語られるパルクールももうすぐ読むことになるが…
ちょっと噂話を聞いてる段階で、私の中のハードルが上がっている感じがするので
少しクールダウン期間を置いてから、読ませてもらおうかな。
シリアスも面白いが、ギャグも掛け値なしに面白いから困る。

男爵さんの発言メモ使わなかった残り
・手駒が少し足りないくらいのバランスを目指している(その45)
・うちは結構ライト(明るい・軽い)なノリ中心で、でもバッドになる可能性や、
味方に死者が出る可能性もあるバランスで進めてる――――つもり。(47)


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