サバイバルヤルオ
(泳ぐやる夫シアター さん まとめ)

(11/3追記)
続編!?エピローグ!?が11/1に発表!
サバイブドヤルオ(泳ぐやる夫シアター さん まとめ)
以下の感想は、公開前のものであり、内容が陳腐化(時代遅れ)している可能性があります。
陳腐化して嬉しい!
(追記終わり)


太平洋上を航行する客船が、嵐に遭い沈没。
偶然にも命からがら南国の島に流れ着いた二人の男女、やる夫と鈴宮ハルヒは、
「生きる」ために力を合わせた生活を始める。

全17章…だが中編の分量ではなく、後半は一章一章の分量が跳ね上がる。
上記まとめサイトのまとめ方では100話程の大長編。
腰を据えて読んでもらいたい。

私の雑談のネタ元、時々やる夫スレのネタ元にも使わせていただいているニュース集サイト、
提督の野望 海軍広報ver7.0さんが紹介していたので、
サバイバルヤルオが完結していたことに気がつけました。大感謝。
私も途中までは本スレを追跡していたんだけれど、
作者の人が長期出張中に荒らし粘着を受けて、
すっかり制作意欲を失ってしまったと思っておりました。
別の場所で、タイトルも変えてひっそり作品を投下していたとは。
責任をもって最後まで投下するその姿、全く頭が下がります。
作者さん、完結おめでとうそしてありがとうございました。

さて感想。作者さんの「舞浜の人」としての技量・作品の完成度は
前回に感想で書いたとおり。
このサバイバルヤルオの完成度も群を抜いて高く、
緊張と弛緩、死亡フラグと生存の可能性、絶望と希望、飢餓と御馳走とが
絶妙なバランスで織り交ぜられ、物語の完成度が非常に高いレベルで纏まっている。
やる夫スレを読者として読んでいるならば、この作品は見ておかなければならない。必ず。

そして物語の構築だけでなく、登場人物の揺れ動く心が、
繊細に巧妙に描かれている点が実に良い。
広い無人島に、たった二人しかいない登場人物で、
原作がゲームなんだからそんな心の機微を感じさせる話はないだろう、
などと考えていると手痛いしっぺ返しをくらう。
私は第五話まで読んで打ちのめされた。ここまでのものをやる夫スレで描けるのかと。

各種自作AAも恐ろしい量に渡り、物語に合わせて作られた情景・小物、
そこまで要るのか!?と呟いてしまうほど、
愛に溢れたとしか言いようがない鈴宮ハルヒの表情、ポーズ、
作者のサバイバル知識を惜しみなくつぎ込んだと思われる、二人の作成品の数々。
舞浜シリーズのときに、やる夫スレで語ったものは全て自分で体験した、
というようなことを書いていた気がするので…
…多分これらの作成品も、作者の人が実際に作ったものなのだろう。
AA化された物体の、「そこにある感」、質感・存在感が本当に素晴らしい。

もちろん各種料理も。
緊張の後の弛緩、無人島生活での幸せの象徴、物語の中枢ともなる、「やる夫の料理」は
自作AAを駆使して表現され、料理は危険なほどの破壊力を、
視覚的にも説得力を持って我々の前に立ち塞がる。
これは…くっ、食わざるを得ない。
鬼気迫る物語で読者の胃を締め付け、胃酸を搾り出した後にこの仕打ち。
何か食べないと、自分の胃酸で溶けてしまう!

総評。
文句なし。完結までの二年という歳月、完結したならばこの程度短いもの。
むしろこの物語の完成度ならば納得。
惜しむらくはこの連載中に起こった荒らしのため、
多分に創作意欲が作者の方に無くなったこと。
これが終わったら舞浜シリーズの続編や、アイマスのルルーシュの人の話など
読みたい話が山ほどあったというのに…。
復帰を心から、お祈りいたします。一読者はただ、祈る事しかできず。

あとはネタバレ感想を、とりとめもなく。






この物語の面白さの肝は、原作「鈴宮ハルヒの憂鬱」の鈴宮ハルヒよりも
より特異性が強く、現実世界にわかりやすい影響力を持った天才である
鈴宮ハルヒをどれだけ理解できるか、にかかっていると思う。
凡人の代表として描かれた主人公、やる夫が翻弄され続けた序~中盤のように、
男が女を理解しようとすること以上に、我々凡人が天才の思考を読み取る事が
いかに難しいことか。「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」である。

ただの凡人であるやる夫が、虚飾の何もかもが存在しない無人島で出会った女性が
只者ではないと理解できるようになるまでの序盤。
やる夫が手を出し、プライドと嫌悪感とその記憶に耐えられず吐くハルヒの姿は、
何度見ても心が裂かれるような気持ちにさせられる。
しかし取り返しの付かないトラウマを負わせてからようやく、読者もやる夫も
ようやくハルヒというキャラクタの正体の片鱗に気がつく。
最悪のシーンではあるが、私はこのシーンが大好きだ。

ここまでの最低の出会いと、「傷つけた」「トラウマを植えつけた」という思いから、
かいがいしくハルヒのために労働力と、見返りを求めない無償の愛を注ぎ続けるやる夫。
ここからのやる夫の精神的成長と、
無償の愛を「フィクションの世界だけのもの」と思っていたハルヒが
その貴重さ、大切さに気付き、距離を置こうとするに至る部分が中盤の見所だった。

くだらない凡人の一人が、自分の全く知らないものを知っている、という
天才の心に楔を打ち込んだのもやる夫であり、
もう一度体を許したときには、…二度目に敬語が消えた時には、
既にやる夫に対する愛があったのだろうなと思う。
しかし、二人の距離が近づいて、愛が生まれて、トラウマが解消されて、
…そんなことではこの物語は終わらない。

自分が地球を変革するほどの能力・知識を持っていて、
自国に帰ることができれば、無人島の生活など消し飛ばされ、
やる夫との関係を切り捨てられてしまうほどの人間だと告白して、
…やる夫と共に、無人島で緩慢な死を迎えたい、という一言。
どう見ても、永遠の愛を誓う告白。
やる夫も大きく揺らぎながら、戻っても自分には何もないと思いながら、
それでもハルヒ自身のために、漏れ出た「帰りたい」という言葉のためにも
帰らなければいけないと、その告白を引き千切りながら、語るやる夫。
残ると進む、どちらの選択肢にも後悔が絶対に残る選択を選び取り、
そして二人の望みどおりの、「全てがなかったことにされるEND」。
私個人としては最高の、この物語のエンドロールだ。
悲しいが、無人島生活という極限状態を生き抜いた二人の選択を、
誰も文句を付けることはできない、と思う。

…まあここまで感想書いといて、作者さんが創作意欲が戻って
エピローグを描いたら全部ひっくり返るかもしれないけどな!
舞浜シリーズの眼鏡の長門先生が出てきて、魔法でなんとかなるかもしれないし。
ないか。…ないな。
とりあえず私の持論として、一度結びついた絆は解けても、
必ず一度はいつか・どこかで交差するというものがあるので。
どこかの宇宙港で、初フライトを行うハルヒの傍に付き従うパティシエの姿を
あり得る未来として、想像しようと思う。

それにしても連載期間2年。
一度は完結を諦めた故に、終わったというだけでも感動はひとしお。
本当にお疲れ様でした。
作者達の創作意欲を奪う荒らしなんて死ねばいいのに

(と、書いてから自分のこのブログが創作意欲を失わせていたら自死せにゃならんと気がつく)
(あわてて白字に)


(追記11/5)
最初に追記した、エピローグサバイブドヤルオ読破。
なんてことだ。
あればいいなと思っていたラストエピソードが、大ひねりを加えて三回点半で
私の目の前に落ちてきた!
涙と笑いと感動の素晴らしいラスト。
やっぱりやる夫はハルヒのことが理解しきれないし、
同じくハルヒもやる夫が理解できない、それでも通じ合う二人が最後に読めて本当に良かった。
…ハルヒの思考が読めてなかったのは私も同じだけれどね!
誰だ↑で「二人ともが望んだ全てがなかったことにされるEND」って言ったのはァ!

ハルヒの言葉や将棋的思考を思い出しながらの料理修行シーン、
二人でコーヒーを飲むシーン、指輪を投げ捨てるシーンなどもう全てが最高。
そして最後のどんでん返し、強くてLv1に戻ってニューゲームには
本気で笑わせてもらいました。
本当にありがとうございました。
ビターエンドも良かったけれども、こういう形のハッピーエンドも染み渡ります。

それにしても洋菓子大会後の、ハルヒが語った三人で出場する次の大会が
「来年の一月」。丘の上で二人が語った今日の日付が「八月八日」。
ハリデーじいさん(パイナップルアーミー懐かしいな)に語った迎えに来てくれる日数が
「三ヵ月後以降、1/216の確率で迎え」
こ、これはまさかの続編&追加シナリオフラグ!?
(追記終わり)
(再追記 3/8
 三つのダイスの出目が揃ったら…を1/216と思うあたり、理系じゃないなぁ自分。
指摘を受けましたので追記。3つゾロ目は6通りあるので*6の1/36でした。
これは恥ずかしい。恥ずかしいので残しておこう)
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