it is a thinking reed
(やる夫疾風怒涛 さん まとめ)

強烈な印象を私の中に残した、聖杯一万円OFFの作者のスレのまとめ。
短編集…というより、書きたい物を書きたい時に書きたいだけ書くというスレで、
わりとやる夫スレ界隈ではこういう書き捨て的な手法も主流のような気がする。
この手法、まとまって書かない・書く時間の無い作者にとってはよい手法なのかもしれないが、
気が向かないと書かないので、いつまでたっても一シリーズ完結しないところが玉に瑕。
友人Jから「この人の作品もいいよ」と勧められた、
エロゾンビこと◆IL/7VRqS7Eさん」(リンクはまとめwiki)もそのような作品の書き方で
一作品が完結せずに平行して連載されており、うちのブログでは紹介できない。
…完結しないと一つの作品として評価は難しいしなぁ。
さてこのスレ、基本的に一人の主人公、「魔法使いのやる夫」が日々の生活をする、
かなりゆるーい短編集。その時々に中篇を挟むが、
読ませる&なかなか唸らせる人物描写が味。
聖杯一万円OFFを読んだ方々ならわかっていただけるだろう、
あの絶妙な会話の掛け合いのリズムと味のある沈黙は、このスレでも
惜しみなく発揮されている。…とはいえ完結していない物語ばかりというのは惜しいので、
一つづつシナリオを完結させていって欲しいなぁ。
作中の、未来荒廃社会のやる夫はなかなかの良作だった。


彼らの隣に何かが立つようです
(やる夫遊歩道 さん まとめ)
gearheadのやる夫は負け犬から這い上がるようです(感想)の作者、
ミントドリンクwithカカオ…ココア?さんの作品。現在同氏作品を追跡中。
全4話の短編。
大長編を終わらせた後だからか、さっくりすっきりと読める超能力バトル物。
やる夫たちの隣に、ある日突然現れた謎の生命体。
彼らはそれをスタンドと名づけた…という話の流れから、
ジョジョの奇妙な冒険テイストかと思いきや、見た目も格好よくない、能力も超限定的。
はっきり言って役に立たないように見える超能力で、いかに戦うのかがポイント。
感想としては、バトル物なのに悪人たちが実にクール。
戦った後も尾をひく感じはなく、主人公たちも実に自然に日常へと戻っていく。
…夏休みの課題図書で読んだシナリオのような、すっきり読後感。
「ずっこけ三人組」とかそんな感じ。あの内容を細かに覚えているわけではないんだけれど。

余談。作者の人は、新谷かおる 和田慎二 ネクタリス に影響を受けたとか。
私としては新谷かおるは「砂の薔薇」、和田慎二は「ピグマリオ」。
近頃の作品は読んでいないけれど、この二作品は特にお勧め。
というか和田慎二作品は外れなし。
元気でいてくれたらまだまだ名作が描けただろうになぁ。


ねらう緒は聖杯戦争を蹂躙するようです

(このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか? さん まとめ)


中国拳法を通して魔術を治めるキョンシー使いが、
恩人でもある友人を殺しその子供を誘拐したナチスのロボ使いを倒し
少女を救い出すため、ジャックザリッパーを蘇らせ戦いを挑む
(スレ6 5789さんの書き込みが秀逸すぎてここまでコピペ)
そんなばくだんいわさんの安価バトル聖杯戦争物。
B級武侠ものだとスレ内で悲鳴が上がるが、
私の脳内に閃いたイメージは「グレイトフルデッド(by 久正人)。」
あんなスタイリッシュな現代風キョンシーバトルが繰り広げられるんだろうな…と思っていた。
読み始めてしばらくも、他の魔術師との決戦、決着がついて、「その時」までは。
たった一つの安価決定が、主人公の周囲の存在全てを反転させた。
…ここまでカタルシスを感じさせてくれる物語は、そうはない。
Fateを知らない人間には、少しわかりにくい設定があるかもしれないが、
終盤の心理戦は間違いなくばくだんいわであり、読み応えは十二分。
是非に読んでもらいたい作品である。
いつも通り続き部分は↓ネタバレであり、必ず作品を読んでから。

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ねらう緒ネタバレ感想。
吉良吉影とイチャラブシーンまでは確かに平和だった。
リンをアドラーの手から取り返すという目的のために、
最終目的が考えの中になかった主人公と、安価の住人たちのロールプレイは
「よくある聖杯戦争主人公」ポジの行動を取っていた。
邪仙と罵られるチャイナ・ネクロマンシーなダークヒーローだというのに、
無意味な戦いは避け、犠牲者を極力少なく、明らかにアライメントの違う陣営にも
手を組もうとする、いわばキャラに即していないロールプレイ。
反英雄のジャックとも、捻じ伏せるのではなく解り合おうとする。
キョンシーとして長年利用してきた姉とも、施術師と死体以上の関係を匂わせるもの。
この序盤が、実に上手かった。
このロウ・カオスルート決定がなされる前の女神転生のような、
「どちらに転んでも読者は納得するし、逆のルートも見てみたい」と思わせる舞台設定が
文句の付けどころなく上手い。
そして、光が溢れていた(ように見える)ルートから、
過去の一族の妄執を解決するために、全てを切り捨て闇に転げ落ちていくシーンの
実に快なることよ! これは間違いなく、正統派を行こうとした序盤あってのものだ。
他人の信頼、未だ愛・未練溢れる姉を過去のものとして切り捨て、
聖杯戦争で自分に最も近いアサシンを利用する姿、積み上げてきた信頼をかなぐり捨てる
このシーンは実に最高潮、読んでいる私も瞳孔が興奮で開くほど。

civilization4で、最弱の状態から土下座外交を続け、力と技術を蓄えて、
どんな理不尽な要求でも平伏して従い、信頼を積み重ねた隣国に、
「全てはこの時の為の雌伏!」と搾り出した兵力で噛み付く瞬間。
ラングリッサーで、光の神の勇者として魔を滅ぼす事も、
魔に従って魔王の走狗となることも選ばず、これまでの仲間全てと道を分かつ事になっても
ただの一人で立ち塞がる全てを滅ぼす覇王ルート。
…こんな物語として語るには難しい、ゲームでしか味わえないと思っていた最高の興奮が、
やる夫スレで味わえるとは。

そんなわけで、強烈に印象に残ったシーンは
・根源へ至る事を選択し、道具としてのレイレイが最後に流した涙
・ねらう緒と、キャスターの騙し合いからのレイレイの最期
・↑の直後のジャックからの囁き。
の三つ。後半は実に見所続きであった。
特にアサシンは、前半に二人で積み上げてきた信頼というタワーを
一方的に崩したねらう緒に対して、未練たっぷりに瓦礫の下で砂山を積んでいる様な姿が
人間よりも人間らしく、芽生えかけた友情をどれだけ重く感じていたかが見て取れて
非常に良かった。
この「道義的にも信義的にも、裏切りたくないけれども
勝ちを拾うためにはこうするしかない、だからやる」というアサシンの思考が素敵。
前半でのコミュによる積み上げが、
アサシンとキャスター両者の感情の差になっているところも実に。
…モリ教授の方は悩むところはなさそうだったな。ボードゲーム思考で裏切ってた。

一点だけ気になるところは、やっぱりFate知らないと細かなルールがわからないところかな。
「大まかなところを知っていれば解るよ!」というのは王道正統派主人公で
戦って、勝って、日常を取り戻すことが目的の聖杯戦争ならいいんだけれども、
今回の「根源を目指す魔導師」というのは、勝利条件が他とどう違うのかさっぱりなのだ。
スレを読んでいる間、
「根源を目指すならアサシンとキャスター殺さずに、一緒に願い叶えたらいいんじゃないの?」と
思っていたぐらい。
根源ENDの時は全サーヴァントを殺さなければならない、でいいのかな。
勝利条件の更新時に一コマ頂けるとありがたかった。

…こんな細かいところぐらいしか要望がないほどに、完成された作品でした。
あ、あとばくだんいわ名物・圧迫面接が少し弱めだった所にはちょっと物足りなさが。
主人公が前作前々作に比べて、序盤から立場が強すぎるから仕方ないんだけれども、
東方不敗やアーカードのような「会話失敗=死よりも酷いことに」なバランスも
少し見たかったなーなんて贅沢な願い。
家臣団の方々も「教育」が進みまくっているようだし、
次の大長編ものは強敵との圧迫面接、期待してます。

(以下 6/25追記)
 ばくだんいわさん本人からコメントがつくなんて!
ありがとうございます。
(慌ててばくだんいわさんの雑談所現行スレを見に走る)
概ね好意的に受け取っていただけてよかった…。
制作意欲の沸くような感想だった、との一言を頂けるだけで
「書いた甲斐があった…!」と一人小さくガッツポーズを取っております。
次回作、次々回作ともう構想はある御様子、楽しみに待ってます。

家臣団&仲魔の皆様のご心労を、まとめ完成後に読ませていただいている身ですが、
安全な場所から楽しませてもらっていながらもう一度。
「圧迫面接、大好物です。期待しています」
あ、↑の「教育」は「では教育してやろう、本物のばくだんいわの圧迫面接を」
(アーカードのポーズ)のイメージで。

(6/26 追記)
 そして「このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか?」さんのtwitterで
紹介されているのに今さら気がついた。
ありがとうございます!
安価スレまとめ、非常に読みやすく、作品と作者様に愛のあるまとめ方で
すごく助かっております。
ここにやる夫スレを求めて訪れた方々、リンク→から行けます。
そして夜の無い生活にようこそ。
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