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横須賀の個性的すぎるローカル名物「ポテチパン」を食べ歩いたら、その奥深さに驚いた

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ちょっと前なら覚えちゃいるが、今となってはチトわからねえなぁ(サングラスにリーゼントで)ということで、その存在を何で知ったのか覚えていないが、神奈川県横須賀市の名物に「ポテチパン」というものがあるそうだ。

ポテトじゃなくてポテチ。その名の通り、ポテトチップスが挟まったパンである。

季節もすっかり春になったところで、小旅行がてらポテチパンを販売する4軒のパン屋を巡ってみた。するとポテチパンは春の時期にこそ食べるべき横須賀名物であることが判明したのだ!

 

浦賀の「パン市場 はまだぶんてん」

一軒目にやってきたのは、浦賀駅が最寄りの「パン市場 はまだぶんてん」。建物こそ新しいが、創業は大正3(1914)年。100年以上の歴史を誇る老舗パン屋である。

分店を名乗っているように、この店の26年前に開業した浜田本店があったのだが、そちらは残念ながら一昨年に廃業したそうだ。

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京浜急行電鉄本線の終着駅、はるばる浦賀へとやってきた。

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浦賀といえばペリーですね。

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路地に入った住宅街にあるパン屋さん。ソフトフランスパンってなんだろう?

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午前10時頃に到着したところ、バーゲンセールでもやっているんじゃないかという活気に驚いた。

たくさんの店員さんが忙しそうに働き、もっとたくさんのお客さんがひっきりなしに買いに来る店内の一番奥で、お目当てのポテチパンを発見。

ポテチパン、本当に売っていたよという小さな感動が込み上げてくる。だってポテチのパンですよ。

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本当にあった!

お店の方に話を伺ったところ、ポテチパンの中身はカルビーののり塩に千切りのキャベツとニンジン、そして味付けはマヨネーズ、塩、胡椒。

ポテトサラダのふかした芋の代わりに、揚げた芋であるポテチが入ったものと考えていいだろう。

店は老舗だがポテチパンとしては後発組。2013年にテレビ番組で横須賀のご当地グルメとして取り上げられていたのを観て、「横須賀にそんなパンがあるんだ。へー、うちでも売ろうか~」という感じで販売をはじめたとのこと。

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ポテチパンの具を見せていただいた。

横須賀独自のフランスパン、ソフトフランスとは?

この店のポテチパンは、具を挟んでいるパンに大きな特徴がある。外の看板にもあった、この店が元祖(諸説あり)の「ソフトフランス」という独特のパンなのだ。

呼び方がフランスパンだったりソフトフランスパンだったり、いろいろあるのには深い理由がある。

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このフランスパンと書かれた丸いパンが、ソフトフランスのこと。

店員:「ちゃんとした資料がないので正確な時期はわかりませんが、昔の職人さんが食パンを作ろうとして、うっかり居眠りをしてしまい、発酵しすぎた生地がもったいないので、水飴を足して丸く焼いたらおいしかった。そこでフランスパンという名前で売り出したのがこのパンなんです。
だから昔から横須賀界隈ではフランスパンといえばこの丸いパンだったんですが、ここ30年ほどで固いバケットタイプのパン(いわゆるフランスパン)が普及したので、区別のためにソフトフランスと呼ぶようになりました。ただ昔からのお客さんは、今でもこの丸いパンをフランスパンと呼んでいます」

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知らない食文化っておもしろいですね。

その基本的な作り方は当時のままだが、材料をショートニングから太白胡麻油に変えたり、無添加にこだわったりと、今も進化を続けている。

また卵や乳製品を一切使っていないため、食品アレルギーがあってもソフトフランスなら食べられるからと、東京などちょっと遠方から買いに来るお客さんも多いそうだ。

ポテチパン、それはポテトチップスが主役のパン

購入したポテチパンを食べてみると、その見た目以上にポテチがみっちりと詰まっている。キャベツもマヨネーズも控えめで、あくまでのり塩のポテチがこのパンの主役だ。

そしてポテチを挟むソフトフランスがまたうまい。柔らかいのに腰があるという評判通りの歯ごたえで、余計なものが入っていないシンプルな味は、具の個性を最大限に生かしてくれる。

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近くの公園でいただいた。

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パンと具の色が似ていて一見するとパンばっかりっぽいが、見た目以上に具の存在感が強い。

これが横須賀のポテチパンか。なるほど、よく知っている食材の組み合わせだけど、これは知らない味である。ただこれは、あくまでパン市場 はまだぶんてんの味。

これから巡る3軒がどんなタイプなのか、俄然興味が沸いてきた。

 

以下、お店の補足情報。

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コロッケパンやハムカツパンなどの調理パンは、トッピングのカスタマイズが可能!

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具が大きくてどれもおいしそう。一番人気はフィッシュサンドだそうです。

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ソフトフランスに各種クリームを塗ってもらうこともできる。

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近所にある叶(かのう)神社の「叶」の文字をいただいた、縁起の良い叶あんぱん。向きを間違えると「古」になるので気を付けよう。

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自家製バタークリームとあんこがたっぷり!「十口」で食べ終えてみた。

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叶神社、もうちょっと時間があればお参りしてきたかった。

 

パン市場 はまだぶんてん
住所:神奈川県横須賀市浦賀5-7-5
TEL:046-841-0046
営業時間:平日7:30~16:00、土日祝日7:00~16:00
定休日:水・木
公式HP:https://panichiba-hamadabunten.co.jp/

 

久里浜の「ワカフジベーカリー」

続いて目指す店は、JRの久里浜駅か京急久里浜駅が最寄りの「ワカフジベーカリー」だ。戦後まもなく創業した、まさに昔ながらという感じのパン屋さんである。

店頭以外にも地元の学校や病院、さらには自衛隊の久里浜駐屯地などで販売をしている。取材した日が春休み期間中ということで、学校関係の注文が入らない時期のため店主は休暇中だったが、代わりに対応していただいた地元出身の店員さんから大変興味深い話が伺えた。

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取材した4軒とも最寄りが別の駅なんですよ。

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雰囲気抜群のワカフジベーカリー。

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ガラスの向こうにポテチパンの文字が!

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この店で生まれたポテチパンのゆるキャラ、ポテパンくんがお出迎え。

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かわいい。

ワカフジベーカリーのポテチパンは、ホットドッグや焼きそばパンで使われるような、細長いタイプのパンだった。ドッグパンというやつだろうか。一見するとサラダパンである。

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バーガータイプではなくドッグタイプ!

ここのポテチパンは、湖池屋のうす塩味を使用しており、ざっくり大きく切られたキャベツが特徴だ。味付けはマヨネーズ、塩、たっぷりの胡椒。

ニンジンや青のりは入っておらず、昔からこのシンプルな組み合わせとのこと。

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特別に店内で食べさせていただいた。

口を大きく開けてほおばると、このパンはポテチだけではなくキャベツも主役であることがよくわかる。胡椒をしっかりと効かせた特製マヨネーズソースで和えられたポテチとキャベツ、そしてちょっと甘みのあるフカフカのパンという組み合わせが素晴らしい。

店員:「この店のポテチパンの歴史は古くて、中井パンさん(次の取材先)とかと同時期に始めたんだと思います。作り立てはポテチがサクサクで、それが買えたらレアですね~。時間が経ってしんなりしているのもおいしいですけど」

ポテチパンを作る時間は決まっていないが、一日に何回か作っているそうだ。

ポテチパンの旬は春!

このポテチパンに入っているキャベツがすごくおいしく感じられたのだが、それにはちゃんと理由があった。

店員:「使っているキャベツは三浦のキャベツ。ちょうど今から甘くて柔らかい春キャベツの時期で、生で食べるのに一番おいしいキャベツだから、春はポテチパンの旬なんです!」

横須賀市といえば三浦半島、そして三浦といえば大根と並んでキャベツ栽培の盛んな地域。なるほど、それでポテチパンにはキャベツなのか。そして春キャベツの時期こそがポテチパンの旬とは目から鱗。まさかポテチパンに旬があるとは思わなかった。

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春のポテチパン祭り。胡椒がしっかりと効いている。

店員:「見た目がちょっと地味でしょ。私が初めてポテチパンを食べたのは中学校の『パン注』でした。
パン注って知らないですか? この辺りの中学校は給食がなくて、お弁当を持参するか、ABCDとあるパンセットを学校で注文するんです。それがパン注。Aセットが焼きそばパン、カツサンド、メロンパンみたいな。
そのセットにポテチパンが入っていて、食べてみたら美味しくって。この店で働くようになって、作り立てのポテチパンを食べられるのは役得ですね。中学校を卒業した子たちが懐かしがって買いに来てくれることもありますよ」

店員さんから「ぱんちゅう」と聞いて、パンが昼食でパン昼なのか、パンを食べる中学だからパン中なのかと思いきや、パンの注文だからパン注だとは。中学時代をパン注で過ごした久里浜の子供たちにとって、このポテチパンは青春の味なのかもしれない。

ポテチパンのポテチは前に様々な種類を試したそうだが、何度も食べるお客さんが多いので、飽きのこない一番シンプルなうす塩に落ち着いたそうだ。またカルビーよりも湖池屋のほうがちょっとだけ厚みがあり、キャベツが大振りなこの店の味に合っているのだとか。

 

以下、お店の補足情報。

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店頭以外での販売が多いので、全部個包装されている。ポテチパンはここでも一番人気だ。

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高校生などに大人気だというテリヤキフライドチキンバーガー。初めて見るバーガーなので買ってみようか。

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テリヤキソースとマヨネーズがたっぷりと掛かったフライドチキンのバーガーだ。そりゃ高校生は好きだろう。うまい。

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ウエハスっていうネーミングがもう最高だ。ずっとそのままでいてほしい。

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こういったパンを「懐かしいわ~」とごっそり買っていくお客さんも多いとか。

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ポテチパンと並ぶ名物が久里浜あんぱん。

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久里浜だけ栗が丸ごと入っているそうです。

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京急電車を思わせる赤いチェリーが素晴らしいバターケーキ。

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マフィンやロールケーキもまた素晴らしい。緑茶で食べたい。

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四角いラスクもいいなあ。

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そしてトレイがまたかわいいんだ。

 

ワカフジベーカリー
住所:神奈川県横須賀市舟倉1-15-8
TEL:046-835-0548
営業時間:9:00~17:30(日曜のみ9:00〜17:00)
定休日:毎週土曜、第2・第4日曜
公式HP:http://wakafuji.locopo-jp.com/

 

県立大学の「中井パン店」

またもや京急電車に乗って向かったのは県立大学駅である。神奈川県立大学という学校の最寄り駅なんだろうなと思ったら、正確には神奈川県立保健福祉大学らしい。

この県立大学にある昭和28(1953)年創業の「中井パン店」こそが、ポテチパンの取材でテレビに20回以上も出ている有名店だった。パン店っていう名前がもう昭和レトロだ。

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県立大学駅、初めて降り立ちました。

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歴史を感じさせる店構えの中井パン店。映画のセットみたいだ。

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せっかくなので駅方面と反対側からの写真もどうぞ。

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平成も終わるという時代にこの味わい。最高じゃないですか。

中井パン店のポテチパンは、こんがりと焼かれたパンの間に、たっぷりの青のりが混ざったポテチにキャベツ、そして太めのニンジンが見える。

浦賀のパン市場 はまだぶんてんは、この店のスタイルがベースになっているのだろう。

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これが中井パン店のポテチパン。

お菓子問屋からの相談で生まれたポテチパン

中井パン店の方から、ポテチパンが生まれた経緯を伺うことができた。

店主:「もう50年以上前、私が18、9の頃の話。そこのスタンドの裏にね、菓子問屋さんがあったんですよ。そこから、売り物にならないポテトチップのかけらをなんとかできないかっていう相談が父親にあって。問屋が一斗缶で割れたポテチを持ってきてね、親父がとりあえずキャベツとマヨネーズで和えてみようかと。それが始まり。
その問屋が他のパン屋も回っていたかもしれないけれど、うちが(問屋から)一番近くだから、ポテチパンを出したのは初めてだろうね。それでパン屋の組合でこういうのが売れているよっていう話をして、横須賀で広がったんじゃないかな」

ポテチパンが生まれたきっかけは、お菓子問屋からの要望だったのだ。この店がポテチパンを最初に売り出したとは断言できないが、最初期の一店であることは間違いないだろう。

湖池屋が「ポテトチップス のり塩」を売り出したのが1962年。そして量産化に成功したのが1967年なので、ちょうどポテチパンが生まれた時期と合致する。ポテチにのり塩を使っているのも、きっと当時からの伝統なのだろう。

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とりあえず食べてみてよと、ポテチパンを差し出してくれた。

伝統のポテチパンを食べてみる。セミハードタイプとでもいうのだろうか、ちょっと固めに焼かれた噛み応えのあるパンがまずうまい。これがたっぷりのポテチ&キャベツをしっかりと受け止める。二口目くらいからカラシが鼻をついてきて、それが青のりの風味と合うのだ。

「ポテトチップスはのり塩を使っていたんだけど、カルビーさんで終売になっちゃって。だからうす塩に青海苔を足してます。それに生のキャベツと茹でたニンジン、ソースはマヨネーズ、塩、胡椒。パンにはカラシとマヨネーズとバターを塗ってね。昔は焼きそばパンみたいな長いパンだったかな。今でもたまに生地がなくなるとそれで作るけどね」

業務用サイズののり塩がなくなったので、うす塩にたっぷりの青海苔を足したことでこの味になったのか。普通にのり塩のポテチを使っても、ここまで青海苔の風味は強くないだろう。

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固めのパンに負けないポテチとキャベツのボリューム。

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断面をみるとカラシがしっかりと塗られているのがわかる。これがうまい。

中井パン店のポテチパンは、パンに噛み応えがあり、カラシの効いたちょっと大人の味。この店でもポテチパンは圧倒的な一番人気で、土曜日なら300個以上売れることもあるのだとか。

 

以下、お店の補足情報。

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パン市場 はまだぶんてんで知ったソフトフランスが売られていた。さすが横須賀。

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どのパンもしみじみおいしそうだ。

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ほんのり塩気のあるこしあんが詰まったアンパンをいただいた。うまい。

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ナイスネーミング!

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知ってるバターロールとちょっと違う!

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いもじゃんの「じゃん」が横須賀っぽい。そして奥にはちくわパン!

 

中井パン店
〒238-0014 神奈川県横須賀市三春町1-20

営業時間:7:00~18:00
定休日:日曜

 

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そしてまた京急電車に乗って移動。

 

追浜の「北原製パン所」

最後は追浜にある「北原製パン所」。追浜はオッパマというかっこいい呼び方をする。この店も昭和13年創業、1938年だから80年以上の歴史を誇る老舗のパン屋だ。

ここも50年ほど前からポテチパンを出しているのだが、その味と開発された理由が他の店とは全く違った。

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横浜DeNAベイスターズの二軍本拠地である横須賀スタジアムがある追浜

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国道16号線沿いに見えてきたパンの文字。

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そののぼりのパン、もしかしてポテチパン?

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訪れたのがお昼時を過ぎていたので、売り切れていたパンも多いようだ。

この店のポテチパンはドッグパンに具が挟まっており、上にはキュウリがひと切れ乗っている。

ぴっちりとしたラップではなく、空気を含んだビニール袋型の包装である。

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ここではポテトチップサンドという名前なのか。

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お話を伺ったのは二代目店主の北原俊勝さんだ。

「まずはポテトチップサンドを食べてみてください。北海道から九州までここに買いに来るよ、出張とかお土産で。横須賀でもここしかこのパンはありませんよ。横須賀でここだけということは、日本でここだけです」

このように北原さんは自信満々だが、すでに横須賀を代表するであろう3軒でポテチサンドを食べてきたので、きっとどれかに似た味だろう。なんて勝手に思ったのだが、これが全く違った。確かにこれは日本でここだけの味だろう。

キャベツ抜きの日持ちするポテチパン

北原製パン所のそれは、なんとキャベツがまったく入っておらず、ポテチがどこの店よりもザクザクかつミッチリ。ポテチをコーティングするようなマヨネーズソースは甘く味付けされており、なんだかポテチジャムのようなのだ。その上でカラシが効いているのである。

キュウリと一緒に食べる部分がすごくさわやか。一口ごとに印象が変わっていく不思議さがある。うーん、複雑。

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見た目はポテチをそのまま入れただけのようだが、独特の味付けがされている。

「複雑な味でしょう。これは真似ができません。自家製マヨネーズとか、隠し味に砂糖とかね。キャベツを入れていないから水がでない。明日食べても同じですよ。このパンは50年くらい前に先代が考えたもので、海の家とか暑いところで売るのに、具がサラダとか玉子だと傷むでしょ。代用してできるものが何かないかと作ったものです。気温40度の日でも傷みません。横須賀スタジアムの売店でもうちのパンは売られていますが、まずこれが一番に売り切れますよ」

追浜といえば海のすぐそば。真夏でも腐りにくい総菜パンとして開発されたのが、このポテチパン、いやポテトチップサンドだったのか。その成り立ちを聞くと、すべてが理にかなっている。

真夏に海の公園あたりで海から上がってすぐ、潮風を浴びながらこれを食べてみたい。飲み物は冷たい麦茶がいいな。

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水っ気がまったくない。ポテチ、マヨネーズ、砂糖、カラシと腐りにくいものの組み合わせだ。

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ポテチはカルビーのうす塩。これじゃないとダメだそうだ。

「生地が甘いんですよ、それは先代から。銀座の木村屋の出なんですが、昔と同じ仕込みで、イーストもドライじゃなく生イーストしか使っていない。病院食や学校でも使われている安全なパンです。中華料理屋でラーメンがおいしければ、何食べてもおいしいでしょ。パン屋は食パンを食べておいしければ、何を食べても大丈夫!」

なるほどなと北原製パン所の食パンを買って家で食べたのだが、確かに間違いのない美味しさだった。

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食パンの袋が最高にかわいい。

パンがうまいといえば、今日回った4軒全部がそうだ。

特にポテチパンみたいなちょっと独特な総菜パンを出す店では、パン自体がうまいことが商品を成立させる絶対条件なのだろう。

どこのポテチパンもベースは市販のポテトチップスなのにジャンクフード感がまったくなく、不思議と手作りっぽさに溢れた温かみのある味だった。

 

以下、お店の補足情報。この時は売り切れていたが、ソフトフランスは甘フランスという名前で売っているそうだ。

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ウエハースサンドがあるなと思ったら……

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カステラサンドもあった!

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何も考えずにバタークリームを食べたい時ってありますよね。

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一番人気のポテトチップサンドと二番人気のエッグコーン。コーンコロッケと卵の組み合わせだ。

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懐かしのレモンケーキ!

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マドレーヌも久しぶりに食べたくなった。

 

北原製パン所
住所:神奈川県横須賀市追浜本町1-3
TEL:046-865-2391
営業時間:6:00~18:00
定休日:年中無休(年末年始除く)
公式HP:https://sites.google.com/site/kitaseipan/pan

 

ポテトチップスを挟んだパンに、まさかここまでバリエーションがあるとは。やっぱり現場に来て、実際に食べてみないとわからないことってたくさんあるなと実感。

もちろんポテチパン以外のパンもおいしいし、パンなら買って帰ることもできるし、降りたことのない駅でパン屋まで行くという行為も楽しいので、ポテチパン巡りはおすすめだ。なんといってもポテチパンの旬は春(キャベツ入りの場合)だからね!

 

まだまだあるよ、ポテチパン

ところで一軒目のパン市場 はまだぶんてんに向かう前、浦賀駅構内にもホウトーベーカリーというパン屋さんがあったので、まさかと思って覗いてみたら、なんとここでもポテチパンが普通に売られていた。

事前にノーチェックの店だったのでびっくりである。横須賀では本当にポテチパンが人気のようだ。

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おや、駅構内にもパン屋さんがあるぞと覗いてみれば……

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野菜たっぷりポテチ入りコールスロータイプのポテチパンを発見!

今回取材したお店からこっそり教えてもらった店を含めて、ポテチパンを出す店はまだあるようなので、ぜひ探してみてください。

 

著者プロフィール

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著者 玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

ツイッター:@hyouhon
ホームページ:私的標本
製麺活動:趣味の製麺

玉置標本「みんなのごはん」過去記事一覧




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