(2006年6月、上海)日が暮れて空は黒く様変わりしていたが、不夜城上海の路上は外灯やネオンサイン、それに周りのビルから漏れる光で明るかった。約束した江蘇路の地下鉄出口に立っていると、道の向こうから横断歩道を渡ってくる慶子の姿を認めた。今日はブルーのワンピース。昨夜鄭州で会ったときよりも若く見え、表情はまるで大学生のようだった。 「ごめんなさい、待たせてしまったかしら」彼女が腕時計に目を落とす、す