日本陸軍の「密偵」として潜入した、西川一三という日本人の長大な旅路を書き上げた、作家・沢木耕太郎さん(撮影:梅谷秀司)「久しぶりだね」。そう笑った沢木耕太郎(74)は、2年前のインタビュー時と同じこの部屋でわれわれに見せてくれたのと変わらぬ、柔らかく穏やかな所作で椅子に座るよう促してくれた。なにか1つだけ違うとすれば、それは沢木の顔に浮かぶ“作家の表情”だったように思う。2020年の夏よりもすっきりとした