個人的な経験ですが、同じ値段でも他のメーカーより
ミズノの製品は如実に長持ちします。筆者が陸上競技に打ち込んでいた当時の「スカイメダル」などは高校の3年間フルに使っても壊れなかった「神シューズ」として今でも強く記憶に残っています。頑張って買った倍以上の値段のナイキは半年も持ちませんでした。
この靴、とんねるずの『ねるとん紅鯨団』を思い出す方もいるでしょう。当時「体育会系基本靴!」としてCMをガンガン打ち出していた、あの靴です。これも今は「おしゃれ靴」として不動の人気を誇っています。特に日本人専用を目指していたわけではないのですが、どこのメーカーよりも広いベロで甲を抑え、壊れやすいパーツには惜しげなく天然革を使い、カカトのおさまりがいいので壊れようがない。ニューバランスが3万円で作っている製品とレベル的には同等、もしくはそれ以上。ボクシングシューズやF1のレーシングシューズなど、どの分野の製品でもクオリティの良さは世界中に知れ渡っているので、地球の反対側のブラジルではナイキをおさえて「一流スポーツメーカー=
ミズノ」という評判が定着していると聞きます。
◆あの「パトリック」は日本製
意外なところでは、フランス発祥のパトリック。革靴以上の品のあるたたずまいはフランスならではのセンスですが、1990年からほぼすべての製品がメイドインジャパンということはあまり知られていません。人件費だけなら今でも東南アジアのほうが安いのですが、クオリティを最優先にした結果の日本製。「マラソン」が代表ですが、レトロシューズのカテゴリーではとにかく頭抜けて品質がいい。
裏をひっくり返すとわかりますが、土踏まずのラインがかなり足なりの形に引っ張り込まれてます。けっして目立たない部分ですが、たったこれだけでフィット感が段違い。
ふまず部分を靴全体が引っ張り上げるので、勝手にまっすぐ立ててしまうんです。フランスのエスプリと日本の技術が見事に融合したメーカーといえば聞こえはいいのですが、実際問題として難易度が異常に高い。「ふまず部分をえぐる技術」ひとつをとっても、ここの形状でブランドの品質が見極められると断言していいでしょう。革・布は平面、靴は立体。通常は100%シワが入りますが。手作業で素材の伸びる方向を見定めないと形になりません。こんなところにも日本の職人技が光っているんです。
どこの店に行ってもアジア系だけではなく、日本以外ではほぼ手に入らないパトリックは飛ぶように売れています。デザインもさることながら、シンプルに履いた瞬間「なんかちがう」ということがわかるからでしょう。職人技に言葉はいりません。
スニーカーはショップに行くとめまいがするほどのブランドが並んでいますが、「履き心地が本当に良いもの」は実はほんの一部です。外見ももちろん大事ですが、履き心地の良さ=フィットすると、靴も体の一部になるので長持ちします。海外の名だたるメーカーもいいのですが、せっかく靴に恵まれた日本にいるのならセンスのよい日本発、あるいは日本製のほうが必ずしっくりきます。1足は持っていると、予想以上の履き心地の差に驚くと思いますよ。ぜひお試しを。
【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPは「全国どこでもシューフィッターこまつ」 靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」