回転
寿司の
ネタや定食の焼き魚として日本人の
食卓に上るサーモンの多くは、
ノルウェーや
チリ、
イギリスなどで養殖されたものです。しかし、これらのサーモンの主要な生産地では養殖サーモンの大量死が増加しており、多い時には一度に500万匹以上も死んでいることがわかりました。
Quantitative analysis of mass mortality events in salmon aquaculture shows increasing scale of fish loss events around the world | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-54033-9
865 million farmed salmon die off worldwide, 2012-2022 - sosc - UVic
https://www.uvic.ca/socialsciences/info-for/faculty-staff/announcements/865-million-farmed-salmon-die-off-worldwide-2012-2022.php
Mass salmon deaths are a warning: no one should be eating this fish
https://inews.co.uk/opinion/mass-salmon-deaths-warning-eating-fish-2947867
魚は健康によくて環境にもやさしい食料として注目されており、特にサケの養殖は持続可能な動物性タンパク質源として期待されています。その一方で、養殖産業の拡大に伴い、短期間に多数の魚が死ぬ災害である「大量死事象(MME:Mass Mortality Event)」も増加の一途をたどっています。
カナダ・ビクトリア大学のジェラルド・シン氏らは、2021年に世界のサーモンの90%を生産した生産量上位4カ国である
ノルウェー、
チリ、
イギリス、カナダに、サーモンの大量死事象が記録された
オーストラリアと
ニュージーランド(それぞれ世界第6位と10位)を加えた合計6カ国におけるサーモンの大量死事象をまとめました。この6カ国の生産量を合計すると、世界のサーモン生産量の92%に相当するとのこと。
調査の結果、2012年から2022年の間にこれらの6カ国で合計8億6500万匹のサーモンが死んでいたことがわかりました。
また、大量死事象の頻度が年を追うごとに増加していることも判明しています。
研究チームは、一度の大量死事象により損失したサーモンの最大数を、
ノルウェーで514万匹、カナダで505万匹、
イギリスで100万匹以上だと推測しています。また、
チリでは1年間で最大819万匹、
ニュージーランドでは439万匹、
オーストラリアでは155万匹のサーモンが大量死しているとも推測されています。
例えば、
スコットランドでは2023年に過去最多となる1700万匹の養殖サーモンが死に、
ノルウェーでは全養殖サーモンの17%が突然死したと報告されているとのこと。
サーモンの大量死を招いている要因のひとつは、気候変動をはじめとする環境的な要因です。具体的には、異常気象による海水温の上昇や、それに伴う酸素不足と藻類の異常増殖などが挙げられます。
研究チームはまた、AIによる管理や水温、水流、酸素、塩分濃度をリアルタイムで測定するリモートセンシング技術など、効率的に魚を生産するためのテクノロジーにより1カ所で大量のサーモンが養殖されるようになったことが、皮肉にも大量死事象を助長しているのではないかとも指摘しています。
シン氏は、こうした大量死の引き金となるストレス要因がサーモンに及ぼす影響を軽減するには、生け簀(いけす)を過密にしないことなど、動物福祉をより重視することが必要だと指摘した上で、「大量死事象は地域経済やコミュニティ、生態系に多大な影響を与える可能性があります。例えば、養殖産業に依存している地域での養殖ができなくなれば、地域経済やそこで暮らす人々の生計が打撃を受けるでしょう」と話しました。