「リスクを負ってカラダを売っているのに、家さえないなんて」と嘆くのは、勤続20年のベテラン風俗嬢、山田凪さん(仮名・42歳)。デリヘルとソープをかけもち、20代のころは月収100万円を超えていたという。
「だけどコロナ禍で客足が遠のき、出勤しても待機室はパンパン。交通費でマイナスになるレベルで実入りが悪くなりました」
貯金を取り崩しながらどうにか生き延び、ようやくコロナ禍があけた昨年5月。以前のような生活に戻れるかと安堵したが……。
◆コロナ禍があけると風俗嬢の競合だらけに
「コロナ禍でキャバ嬢や普通のOLが風俗に参入してきて、コロナが終わっても夜の世界に居ついちゃったんです。パパ活や路上売春をする若者も増えて、風俗嬢は競合だらけですよ。人妻風俗店でさえ20代前半のコが入ってきて、私みたいなベテラン風俗嬢は居場所がなくなったんです」
そこで、自身の単価を下げて指名を増やそうと、山田さんは60分1万円の大衆ソープから、40分6000円バックの格安ソープに移籍した。しかし、週5回出勤し、ようやく月収20万円近く稼げるようになったころ、新たなトラブルが襲った。
◆猫の多頭飼育を口実に、大家から退去勧告
「昨年8月にお金がなくて一度だけ家賃を滞納してしまったんです。それで足元を見られたのか、今まで黙認していた猫の多頭飼いを大家が指摘してきて『来月部屋を出ていくか、住み続けたいなら敷金2か月分を支払え』と迫られました。貯蓄もなく昨年10月に泣く泣く退去です。私が10万円で住んでいたその部屋は、今は12万円で入居者を募集していて、家賃を値上げするために追い出したのかなって」
現在は3匹の猫を実家に預け、自身は出稼ぎ風俗嬢として地方を転々とする。
◆漫画喫茶に寝泊まりする日々
月収は25万〜30万円ほどで、基本的には出稼ぎ先の寮に住むが、店から店へ移動するときは漫画喫茶に寝泊まりする。猫の様子を見に時折実家に戻るが、親との仲が悪く結局寝泊まりはネカフェでするという。
「本当はホテルを利用したいけど、円安で観光客が増えたのか地方都市のビジホですら1万円超えと泊まる気になれません。2年前までワンコインで居座れたファミレスでさえ、今は油断すると1000円を超える。おちおち外食もできないですね。風俗嬢の価格はデフレなのに、世の中はこんなにもインフレって、意味がわかりませんよ」
それでも、再び愛猫たちと暮らす日を夢見て、山田さんは生活を切り詰め貯蓄に励む。
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[[家なき中年]の肖像]―