◆客からのナンパを断っただけなのに…
大学生の野原ゆいさん(21歳・仮名)は、某チェーン
居酒屋でアルバイトをしている。土日祝は常に満席というほどの人気店で「早い時間帯は比較的マシですが、終電の時間を過ぎると、もうとんでもない客が現れます」と野原さんは言う。
「おじさんよりも30代前半くらいのイケてるサラリーマンみたいな人たちがしつこくて嫌ですね。この前ひどかった客は、『LINE教えて』を断ると『俺、結構モテるんだよ?』『年収もうすぐ1000万!』とか、どんどん俺様情報をよこしてきて(笑)。
興味ないのであしらっていたら『もうこんな“失礼”な店には来ない!』とブチ切れて説教されました。これって立派なカスハラですよね?」
結局、店長が冷静に対応したが、泥酔していたのか「本部に訴える!」「俺の会社では二度とこの店を使わない!」と大騒ぎだったようだ。
◆カスハラ客の対応に苦慮する小料理屋の店主
小料理屋を経営する牧野伊吹さん(34歳・仮名)も「最近はカスハラをニュースなどで大きく取り上げてくれて助かります」と話す。
「うちは地域密着型の小さな店なんで、基本はいいお客さんばかりですが、たまにとんでもないモンスターがいるんです」
牧野さんの店はカウンター10席のみで、妻と2人でやりくりしているという。そんななかで、先日、「THEカスハラ」と言える客が訪れた。
「うちは毎日違うおばんざいを大皿に乗せていて、頼まれたものをよそってお出しするのですが、そのお客様は『俺だけ少なくない?』と言い出したのです。もちろん、厳密に量を測ってお出しするわけではないので、多少の誤差はあると思うんですけど」
一見客だったこともあり「申し訳ないです」と頭を下げて、少し足したそうだ。だが、「この対応が間違っていたのかもしれません」と牧野さんは続ける。
「これで調子に乗せてしまったのか、日本酒を頼めば『もっと溢れるくらい注げよ!』、焼酎を頼めば『この水割りは薄い! 作り直し!』と……。料理に関しても味が薄いとか濃いとか、何から何まで突っ込まれました」
いつも来てくれている常連客も苦笑いで「また来ます」と、いつもより早く帰ってしまったんだとか。
「完全営業妨害で頭にきましたが、これだけ文句を言うぐらいならばもう来ないだろうと思って、我慢して対応していました」
◆散々飲み食いした挙句、会計時に「払う価値がない」
文句を言う割にはたくさん頼み、〆のお茶漬けまで堪能。3時間ぐらい滞在し、ようやく「もう帰る」と言うので安堵した牧野さん夫婦だったが――。
「常連さんの数人が『あの変な客が帰ったら連絡して』とLINEをくれていたので、やっといつもの営業に戻れると思いながら、会計を出しました。金額は7200円です」
「ありがとうございます」と客に伝票を出すと「は? 高過ぎるだろ!」と声を荒げた。
「1杯800円前後、料理も700円から1800円程度なので3時間いてコンス
タントに頼めば、それくらいになるのは普通なんですよ。でも揉めたくなかったし、他にお客さんもいなかったので『じゃあもう5000円きっかりでいいです』と伝票を書きかえました」
大幅な値引きを提案するも、客から出たセリフは「払う価値がない、タダで妥当」だった。