参加者は、イケア定番の「スウェーデン・ミートボール」は注文しない。お茶や軽食を持ち込み、中にはアルコールを持参する人もいる。
高齢化が進む中、社会構造の変化に直面した独り身の
中高年は、自ら解決に乗り出し、イケアを出会いの場として利用してきた。
「何も恥ずかしくはない。愛が必要なのは若い人も高齢者も同じだ」と話すのは、メークをばっちり決めたチンチンさんだ。以前は養護施設の責任者として働いていたという。
騒々しいカフェテリアは、高齢者施設というより高校の食堂の雰囲気に近い。
光沢のある毛皮やヒョウ柄の洋服、革製の帽子、ミラーレンズのサングラスなどを身に着けた人々が、テーブルを囲んで談笑したり、あちこちに移動しながら別の参加者に声をかけたりしている。
持ち寄ったミカンやお茶、時には安価なアルコール飲料などを分け合う。テーブルにはミカンの皮やナッツの殻が散らばっていた。
公式データによると、中国の60歳以上の人口は2億9700万人超。このうち4分の1は独身だ。以前は大家族が多かったが、今は独り暮らしをする
中高年も多い。
首都・北京にある中国人民大学(Renmin University)が行った2016年の調査では、60歳以上の4分の1が孤独だと思ったことがあると回答している。
お見合いに参加した元バス運転手のグーさん(73、男性)は、「いつも寂しい。この年になると、人生がつまらなくて…パートナーが欲しいとずっと思っていた」と話す。
グーさんは、公共交通機関を利用して1時間半かけてイケアにやって来る常連だ。だからといって、パートナーに巡り会えるチャンスを必死に求めているというわけでもない。
「ここに来ると、くつろげるし、楽しい」と話し、「家の中でぽつんと過ごし、誰かの顔を見るといえば鏡に映った自分の顔だけというような生活よりずっとましだ」と続けた。
■イケアも歩み寄り
イケアでの集まりは10年以上前から続いているが、どのようなきっかけで始まったかは誰も知らないようだ。
主催者は存在せず、友人から聞いて参加したという人がほとんどだった。
参加者の一人でチンチンさんの友人だというシューさんは、「もっと高級な場所で集まるのは、現実的に難しい」と話す。シューさんが言うには、ここに集まる人にとってはイケアが「手ごろ」なのだ。
イケア側は当初、こうした集まりを歓迎していなかった。
2011年以降、グループを追い出そうとするイケア側の対応が国内外で報じられてきた。そうした報道によると、店側は警備員の増員やテーブル周辺へのロープ設置、グループの散会を求めるメッセージボードの張り出しなど、さまざまな対策を講じてきた。
警備員の一人は、高齢男性に声の大きさを注意したところ、熱いコーヒーをかけられたことがあるとも話した。
しかし、その後はイケアも理解を示すようになってきているようだ。
最近では、テディベア柄のスーツ姿の男性参加者が、喫煙をしながら会場のあちこちでウイスキーを振る舞っていたが、店員が注意することはなかった。
この件についてイケアに問い合わせたところ、「孤立化している近隣の高齢者がケアや人との交流を必要としていることは認識している。そうした人々に、友人と集うことのできる居心地よい場所を提供したいと考えている」との回答が寄せられた。
一方、過去の対応についてのコメントは得られなかった。
■週末は公園で
お見合い 上海の
中高年が見合い相手を探す場所はイケアだけではない。
火曜日はイケアで過ごし、週末になると市内の人民公園(People's Park)に出掛けるという人々は、「ハードスケジュールだ」とジョークを飛ばした。
日曜日、寒空の公園では、厚着で自己紹介をしている人々がいた。中には、イケアにいた人もいる。
イケアと公園、どちらが良縁に恵まれる確率が高いかは、何ともいえない。
元バス運転手のグーさんは、「経済的にそれほど裕福ではない」人にとっては難しいだろうと話す。
10年前からの常連だという画家のリさん(74、男性)も、参加者の理想が「かなり高い」と嘆く。「ここでパートナーと出会える確率は3%以下だと聞いた」と話した。
それでも最近、リさんにも良い出会いがあった。
「お互いに引かれ合った」という相手の女性について、「きれいだし、年もかなり若い」と話した。
その後、その女性は旅に出てしまったが、「お互いにロマンチックな関係を始めてもいいという覚悟ができれば、彼女が戻り次第、一緒になるつもりだ」と話した。
【翻訳編集】AFPBB News
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