「夜行列車がなくなった時から日本の凋落が始まった」というのが持論なのですが、やはり、自分のそれぞれの地方の町が東京と直結しているというのは大事なことだったと思いますね。「飛行機だってあるじゃないか」という声もあるでしょう。例えば日本最小県の鳥取県には、確かに鳥取空港がありますが、そこまで(鳥取市の中心部から)30〜40分かかるわけですよ。
この「東京と地方が直結」という点に加えて、非有効時間帯。夜を使って移動する時間の使い道としては、(夜行列車で仕事をするというのは)ものすごく有効でした。
この2つの意味において、寝台特急の廃止以来日本の凋落が始まったという、これは私が唱える変な説なんですけどね。ただ、サンライズは、客車特急の「出雲」(06年廃止)ほどの愛着は、正直言ってありません。
―― 電車ですからね。
石破: そうです。大体、鳥取まで来ないしね(編注:山陰本線経由だった客車特急の時代は鳥取駅に停車していたが、サンライズは伯備線経由になり、鳥取を通らなくなった)。めちゃくちゃ遅れることが年に何回も。(サンライズは)廃止されない方がいいけど、今だって切符取れないし、というのはあります。
客車「出雲」廃止は「恋人が亡くなったみたい」
―― そうなると、客車の出雲がなくなった時点で、気持ちに一区切りついたというか。
石破 何かありますね。恋人が亡くなったみたいな。それでもまだ諦め悪く、寝台急行「銀河」(東京-大阪、08年廃止)に乗ってました。
―― 早朝に大阪に着いて、そこから乗り換えて...。
石破: 一番早い「スーパーはくと」1号に乗ると、10時ぐらいに鳥取に着けましたね。本当に「これで終わったな」と思ったのは「銀河」です。
―― やっぱり客車なんですね。
石破: そうですね。もう単なるノスタルジーですね。それでも、あながち外れてないなと思うのは、本当に東京との直結感と、非有効時間帯を使って働くぞ、という仕事に対するアニマルスピリットみたいなものは失われていったような気はします。
―― 飛行機だと、あまり腰を落ち着けて仕事する感じになりませんね。
石破: (上空でシートベルトサインが消えている間の)この1時間(急いで)仕事しなきゃ、という感じですよね。(第4回へ続く、1月7日掲載予定です)
石破茂さん プロフィール
いしば・しげる 衆院議員。1957年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。1986年、全国最年少議員として衆院議員に初当選。現在12期目。自民党では幹事長、内閣では防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任した。