SDKの更新に合わせて、エクスプローラー上にAzure Active Directoryを基盤としたファイル情報を表示させている。Microsoftは当時のOffice 365もポータルページを用意し、アプリではなくファイルを機軸としたワークフローを用意したのだが、オールドタイプの筆者は日常業務を改善するには至らなかった。
Windows 11 Insider Preview ビルド23475のエクスプローラー
個人的には、Build 2023でWindows 11のロードマップを明確にしながら、即座にバージョン23H2をリリースすると予想していた。結果はハズレ。Ignite 2023(Microsoftのイベント)を開催する2023年秋まで待たなければならないようだ。
筆者は「最新のWindowsが正義」と考えて、一時期は複数のメインPCをDevチャネル(現在のCanaryチャネルに相当)で使用していたが、業務の主軸となるHyper-Vが正常に動作しないといった複数のトラブルに見舞われて断念した。現在、Canary版はサブPC、メインPCは安定版を用いている。近ごろは新たな機能に挑戦する意欲が低下している時期らしく、安定性を優先することは筆者の一種の悪癖かもしれない。
ただ、以前に交わした生活系ライター陣との雑談で「取材中など大事なときに更新プログラムの適用と再起動をうながされる」との意見も理解できるようになってきた(タイミングが悪いときの通知は負の印象として記憶されるもの)。職種によっては、安定性こそがもっとも大切なのだ。
Microsoftの公式ブログによれば、Windowsの利用者は10億人を突破したという。機能的にはWindows 11を強調しつつも、10億人=Windows 11ユーザーであるとは読み取れない。このあたりはマーケティング戦略の一環として横目で見るのが正しい姿勢だろう。とはいえ、2025年10月14日にサポート終了を迎えるWindows 10を使い続ける利点は日々低下している。
蛇足だが、Microsoftのサポートライフサイクルは製品のサービスパックを前提に構成され、現状に合致していない。たとえばWindows 11 バージョン22H2は2024年10月8日をサポート終了日と定めており、同じ時期の1年前にバージョン23H2がリリースされることを暗に示している。
「Microsoft by the Numbers」によれば、本稿の執筆時点でWindows 10およびWindows 11デバイスは1.4億を突破している
先ごろAppleのWWDC(6月5日〜9日)をオンラインで視聴したが、OS周りで筆者が関心を持った更新はなかった。AppleもMicrosoftもOSの進化が停滞している印象は拭い切れず、いまは充電期間なのだと思いたい。安定性と自社サービスとの連携強化に努める姿勢は理解できるとしても、Microsoftに関していえば、多くのユーザーが感じている「Windows 10で十分」という声は無視できないだろう。MicrosoftはWindows 11を主軸にするつもりだろうが(Windows 10も企業向けのサポートメニューはある程度の時期まで残るはず)、Windowsやクラウドの戦略を踏まえると、もう少しエンドユーザーに寄り添ってほしいものだ。
著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。 この著者の記事一覧はこちら