【画像】伝説のラリーチャンピオンが「ハンサムで精巧に作られた、デルタに見せかけたグループAラリーカー」と評したマシン(写真18点)
マトゥーロ・コンペティション・カーズがラインナップするのは、3タイプのデルタ・インテグラーレである。「クラシック」は現代技術で弱点を補うレストア、「ラリー」はかつて1〜2レースごとにほぼ廃車処分されていたレースマシンのレストア、そして1月12日〜15日にオランダのマーストリヒトで開催された「インタークラシックカーショー」でお披露目された「ストラダーレ」だ。
ストラダーレは”公道走行できるグループAカー”という位置づけである。言うなれば「レストモッド」である。オリジナリティを重んじながらも”古臭い”部分を改良し、デルタ・インテグラーレに新たな息吹を吹き込んでいる。例えば、リアハッチの水平に入るプレスラインは14mm”上げ”られ、一番下のブレーキランプレンズカバー上部と”マッチ”するように変更されている。また、フロントのウィンカーレンズは、メッシュのカバーが奢られている。
レストア作業は徹底しており、ベースとなるデルタ・インテグラーレは「全バラ」される。スポット増し溶接(250箇所以上)が施され、ロールケージを組み込み、カーボンパーツを取り付け、塗装が施される。ボディのパネルフィットは新車時から”精緻”とは呼べなかったが、ストラダーレでは完璧なフィットを追い求めている。
「内装は車両価格に見合う高級感溢れるものに仕上げている」というマルコの言葉が印象的でもある。最新のエアコン、リアシート、ヒーテッド・ウィンドウなどを装備し、アルカンターラ、レザー、カーボンファイバー、アルマイト、チタンなどの素材が惜しげもなく奢られている。もっともストラダーレ、ドナーカーを含むとはいえ40万ユーロというプライスタグが掲げられている。
この5年間、マトゥーロ・コンペティション・カーズではデルタ・インテグラーレの開発に勤しんでいた。グループAのアバルトラリー仕様のデルタ・インテグラーレをレストアし、実際にレースに参戦することで欠点を洗い出した。グループA車両と”スタンダード”なデルタ・インテグラーレの違いは数多く、苦労がつきものの開発ながら楽しい道のりだったようだ。
そして、マトゥーロ・コンペティション・カーズではストラダーレをデルタから作るのではなく、デルタ・インテグラーレをベースにグループA車両の性能を持つ公道走行可能車両に仕上げる、という手法を執ることにした。2000点以上のパーツを新規に設計し、先進素材と生産技術を駆使することで、現代の車らしく信頼性と耐久性に優れたグループAカーの実現を図った。ブランドアンバサダーを務める伝説のラリーチャンピオン、ユハ・カンクネンは”ハンサムで精巧に作られた、デルタに見せかけたグループAラリーカー”とストラダーレを評している。
ボディパネルは全てカーボンファイバー製で、総重量は1220?に抑えられているが”コルサ”スペックを選択するとリアシートや一部装備の取り外しで1170?まで絞ることもできる。改良点は強化5速MT、減衰力や車高に電子制御が付いたレースサスペンション、アバルトのグループA用ブレーキ、F1で用いられる特殊鋼製シャフトなど枚挙にいとまがない。
ドライブトレーンはユニークで、デルタ・インテグラーレのものとはまったく異なる。フロントは本来、ノンスリップデフでリアはトルセンデフのところ、ストラダーレは前後ともLSDを組み込んでいる。
ドナーカーのエンジンは分解・リビルト、WRCグループA仕様にアップグレード、そして自社開発のECUと組み合わされる。エンジンの様々な部品は、より軽く、より強く、より信頼性の高いものにアップグレードされる。結果、ストラダーレの最高出力は400ps、最大トルクは540Nmを叩き出す。
ストラダーレは合計10台が製作される予定で、現時点で既に2台が販売済みだという。また、マトゥーロ・クラシック・カーズでは今後、グループBのランチア ラリー037とグループ4のフェラーリ308でもプロジェクトが進行中だそうな。続報に期待大だ!
文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)