ニューストップ > IT 経済ニュース > 経済総合ニュース
週刊女性PRIME
都下の私鉄沿線の自宅を売りに出し、駅に近い利便性の高いマンションに移り住みたいと考えたのが谷口さん夫婦(仮名・70代)だ。
自宅は、バブル当時の大ヒットドラマにも登場したニュータウンにあり、敷地面積40〜50坪で120平方メートルと広く、子育て時代はよかったものの高齢となった夫婦2人の手には余っていた。
「駅から遠いのもつらくなってきて、半分の広さでいいから駅近の便利なマンションをと思ったようですが……」
結果から先に言うと、この計画は断念するしかなかった。
「それなりの価格で売却できると思い、ご相談に来たのですが、予想をはるかに下回る値段しかつかなかったんです」
今の60〜70代がこぞって購入したのは郊外の一戸建てが多く、買い手がつきにくくて高く売れないという厳しい現実がある。また、家財の処分も壁となった。
「今ある家財の半分以上を捨てないと、新居のマンションには収まらない。そこまで考えると、この年でやりきれる自信がなくなってしまったらしく、考えた末に、今の自宅に住み続ける覚悟を決めていました」
便利なマンションでの快適な暮らしが夢の藻くずと消えたのはつらい。だが、資金や体力に不安を抱えながら自宅売却を押し進めても、もっとつらい目にあったかもしれないと思うと、踏みとどまって正解だったのかもしれない。
◆教訓◆4.郊外の一戸建ては高く売れない バブル期に高く買った人は、安くなっていると覚悟をして売却に臨むものの、実際はそれを上回る安さとなるケースは多い。「敷地を分割して売るにも建ぺい率の条件などで売りにくいなど、売却がスムーズにいかない場合も多いです」5.ダウンサイズの住み替えは家財処分も大変 狭いマンションに住み替えるには家財の大量処分が必要。「断捨離は体力的にも精神的にもエネルギーを使う作業で、高齢者が実行するのはかなりハードと肝に銘じて」
自宅売却を検討する理由は、手元に現金がないからというケースも。最後に残った財産である不動産を売り、現金を得ようというわけだ。
これを実行したのがひとり暮らしの伊東さん(仮名・70代女性)。自宅を担保に資金を融資してもらう「リバースモーゲージ」という制度(詳しくは左下参照)を利用し、1000万円ほどを融資してもらった。
金利を払いながらではあるが自宅に住み続けることもでき、老後資金も手に入り、これで安心な老後が送れるはずだったのだが……。
「お金が手元に入ったので、子どもや孫にいろいろしてあげたくなってしまったようでして。そうしたら、あっという間に貯金が減ってしまったんです。
こんなはずではなかったんですが突然、大金を手にして浮かれてしまったと話していました。たったひとつの財産だった持ち家ももう担保に入れてしまったので、不安で仕方がないと」
大金を持ち慣れない人が急に高額の現金を持つと、管理しきれずこうなってしまうケースも少なくないのだそう。現金がないと不安、というのもわかるが、現金にするとすぐに使うことができるのも事実。
売却するにせよ、現金になった資金をどう運用するのか、使いすぎないように前もって準備をするのが大切だ。大金を手元に置く、心の準備もしておいたほうがいい。
◆教訓◆6.リースバック、リバースモーゲージは最終手段「手元に現金がなく、かつ自宅に住み続けたい事情がある人にしかおすすめしません」自宅を売ったり、自宅を担保に融資してもらったりする方法だが、どちらも融資額が希望に満たない場合も多いためだ。7.大金を持ち慣れない人は要注意 一瞬にして入ってきた大金に浮かれることなく、管理するのはかなりの自制心が必要。使いやすい形で現金を置いておくのは危険を伴う。老後の住み替えに存在する、さまざまなリスク。将来を見据えて自身の終のすみかについてプランを立てておくことが、幸せな老後への第一歩なのかもしれない。
リースバック 自宅などの不動産を売却し、売却先と賃貸借契約を結ぶ。所有者は売却代金を得つつ、住み慣れた自宅に住み続けることができるが、売却代金に対して一定の割合で家賃が発生する。リバースモーゲージ 自宅を担保にして金融機関から融資を受ける制度。融資によって現金を得られ、金利のみを支払いながら自宅に住むことができる。ただ、融資額は売却する場合の値段より少なく、半額以下となってしまうケースも。
(取材・文/野沢恭恵)