(提供:Ⓒ田村セツコ/集英社)

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可愛らしい女の子をモチーフに、1960年代には「りぼん」「なかよし」などで少女向けのおしゃれページを多数手がけたイラストレーター・田村セツコさん。文具や小物などの「セツコ・グッズ」で人気を博し、84歳となった今もなお一線を走り続けています。認知症一歩手前(?)でもますます元気な田村さんが考える、人生の楽しみ方とは。紙とえんぴつがあれば幸せ、という心の健康法を伝授します。記憶って、ゆらいだりボヤけたりして、まるでありえない抽象画みたい――。

【イラスト】田村セツコさんの素敵な手書き文字で綴られた絵日記。絵日記を書くことがおすすめの理由とは…

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ところどころ削除して、バランスをとっている

あるおばあさんの、ひとりごとです。

よく、カフェなどのお店のガラスに、手前のティーカップとか、前を通る人の姿とか、ビルや車が、おしゃれな絵のように、ダブって映っている時があるでしょう?そんな感じかしら? 記憶って。

あっちこっち、ゆらいだりボヤけたり、重なったり、ありえない抽象画みたいになったりする。時間というものも、行ったり来たり、過去と現在が自由にうごめく感じ。

忘れっポイ? ふふ。あたりまえでしょう。ちょっとやそっとの分量じゃない情報が頭と心にびっしり、ところせましと入っているんですものね。

だから、ところどころ削除して、バランスをとっているんじゃないかしら。

自分の歴史も、迷路のようなワンダーランドみたい

「こんなことがどうして覚えられないの!?」と、ジレる娘や息子を見ると、「おだまり。あなたたちの、そのスキマだらけの頭がうらやましいわ」とかなんとか、心の中でつぶやき、まぶたをうすく閉じて、ボケたふりして、こっくりこっくりしてるわけ(笑)。


『白髪の国のアリス――田村セツコ式 紙とえんぴつハート健康法』(著:田村セツコ/集英社)

そういえば、わたしは子どものころから日記をつけるのが趣味だったけど、たまった日記帳を年代順に整えたことがないんです。

起こった出来事も行ったり来たり、ごちゃまぜに。自分の歴史も行ったり来たり、迷路のようなワンダーランドで、なんだかうっとりしてしまうの。

カビの生えたわらべ歌よりも

そうそう、音楽なんかも、年寄りはみんななつかしい童謡や小学校唱歌やわらべ歌が好きだと思われているみたい。たまには、JAZZやクラシックもその中に混ぜてほしいわ。

カビの生えたわらべ歌のかわりに、マイルス・デイビスやショパンのピアノ曲なんかポロンポロン聴きたいなぁ。おばあさんは、うっとりとつぶやきました。

※本稿は、『白髪の国のアリス――田村セツコ式 紙とえんぴつハート健康法』(集英社)の一部を再編集したものです。