東京の記憶が忘却の彼方へ…(イラスト:タテノカズヒロ)

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黒島結菜さんがヒロイン・比嘉暢子を演じたNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」。沖縄本土復帰50年の今年、料理人の夢を追う暢子とそのきょうだいを中心に、家族の絆を描きました。今連載では、漫画家でイラストレーターのタテノカズヒロさんが過去の放映回から印象に残ったシーンとともにドラマを振り返ります。今回は最終週「やんばる!ちむどんどん!」について。

【イラスト】無賃乗車したタクシーで到着した海辺にて「歌子を助けて!」と叫ぶ暢子

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最終週「やんばる!ちむどんどん!」ふりかえり

暢子が沖縄やんばるに移住してから、毎日の畑仕事が楽しくてたまらない。和彦も、健彦もここでの暮らしを満喫、歌子は無事に智と結婚した。

暢子はさらに、地元野菜などを生かして、やんばるで食堂を開きたいと思いつく。

そんな中、東京からフォンターナのオーナー・房子が。房子の用件は意外なもので…。そして順調に見えた比嘉家に、思いもしなかった大きなわざわいが…。

といった話が展開した最終週。タテノさんの注目したポイントは?

まるで記憶をなくしたかのように

やんばる移住を思いついた暢子が、また新たな野望を思いつくところから最終週ははじまりました。

郷土料理の勉強会でおばぁが「こういうの食べられるお店ないしね」と発言したのを聞いて、暢子は「食堂をやりたい」と言い出します。

個人的には、それを言い出す前に、東京の「ちむどんどん」がまさにそういう場所だったことを思い出してほしかった。

まるで大事な何かに、ついに気づいたように言い出したのが、東京での記憶をなくしたかのようで少し怖かったです。

東京編がなかったかのような

やんばるで食堂がオープンした時には、旧知の人々が訪れました。

暢子とかけっこ対決をしていた正男。良子に求婚していたお坊ちゃん・喜納金吾。さらに、音楽教師の下地響子先生からは手紙が届きましたが、こうした演出にも、むしろ不安な気持ちをかきたてられてしまいました。

というのも、ドラマのほとんどは東京での物語だったはずなのに、やはり東京編が最初からなかったかのような展開だったからです。

実際、最終週ではオーナー(と早苗?)が来た以外、東京の話題はほぼ切り離されていました。

あと一回で収まるの…?

しかも最終回前日になって、倒れてしまう歌子。

この展開には、要らぬ心配とはいえうろたえました。原因もわかっていない病気なのに、あと一回で収まるの…?

結果として、暢子主導(初見では賢秀ニーニーの主導と思っていましたが、見返したら暢子でした)で病院を飛び出し、海辺から亡き父に向かって「歌子を助けて!」と叫んだことで、歌子は一命をとりとめました。

亡き父のおかげかもしれませんが、そんな祈りの直前に、タクシーを無賃乗車するのはさすがに……。

デビュー決定シーンだけはドラマ内で見たかった

そんなことを視聴者へ考える時間も与えることなく、話は暢子たちがおばあちゃんになった約40年後まで一気にワープ! 

なんだかんだでそれぞれみんな、幸せな人生を送っていたことが判明します。

気がかりの歌子も、民謡歌手としてレコードデビューを果たせたようでなによりでした。

ただ、歌子のストーリーは「智との恋愛」と「歌手への道」の二つから構成されていたのに、あっさりナレーションベース扱いだったのが残念。感動のデビュー決定シーンだけはドラマ内で見たかった。

ひきつづきよろしくお願い申し上げます

もともと視聴者からのツッコミが多い作品でしたが、最終週はとくに異質に感じました。

毎週のタイトルが料理にちなんでつけられていたのに、最終週だけそのルールを逸脱していたことも、それを象徴していたのかもしれません。 


タイトルからして、やや異質だった最終週(イラスト:タテノカズヒロ)

そしてこの連載も、もともとドラマの展開に合わせて著者の雑感を記すだけの、ほのぼのしたものだったのに、途中からのネガティブな盛り上がりに相乗りした批判企画に思われていそうで、なんだか恐ろしくなりました……。

良くも悪くも伝説級のドラマとなった『ちむどんどん』でしたが、『舞いあがれ!』がポジティブに盛り上がるのを祈りつつ、ひきつづき同連載をよろしくお願い申し上げます。