やらないと後悔?アラフォーからの更年期対策

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かつては閉経すると「女性としての人生は終わった」と考えられていた時代があった。しかし人生100年時代となった現代、閉経やそれに関連する「更年期」の常識も変化しつつある。そこで更年期の正しい知識を広めるさまざまな啓蒙活動をしている、よしかた産婦人科医の善方裕美院長に、更年期の最新事情や、閉経後も女性として彩りのある人生を送るためのコツを伺った。

更年期の最新事情 〜ひとりからみんなの問題へ〜

イギリスでは、更年期に悩む女性たちが「#MakeMenopauseMatter(更年期を社会問題に)」というキャンペーンを行い、国がその対策に乗り出した。その一環として、中学校で更年期症状について教えることが義務化されたという。一方、日本では月経については学校で学ぶものの、その後の女性の体の変化について学ぶ機会は、当事者である女性でさえほとんどない。
そのため、日本の女性たちは情報や知識が不足し、ホルモンバランスが崩れて不調になっても、適切な対処ができずに、孤独を抱えていた。しかし近年、プレ更年期というキーワードが注目されたり、早い人では30代後半から40代前半で、ホルモンの影響による不調が起こることが知られてきた。それに伴い、政府が更年期障害の実態調査に乗り出したり、NHKが「#みんなの更年期」という番組を放送してSNSで話題になるなど、少しずつではあるが状況は変化してきている。

そもそも「更年期」「プレ更年期」「更年期障害」とは?

女性の体に大きな変化をもたらす更年期とは「閉経(1年以上月経がないこと)」の前後5年間のこと。そして日本人女性の閉経の平均年齢は50.6歳(厚生労働省 令和2年人口動態統計・簡易生命表より)なので、更年期はだいたい45歳から55歳までとなる。この時期に起きる様々な症状の中で、他の病気に伴わないものを「更年期症状」、更年期症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と呼ぶのだそうだ。また閉経に向けて少しずつ体に変化が起こる30代後半から40代前半にかけてを「プレ更年期」と呼ぶ。

しかも、「40歳未満で1年以上無月経であること」が、「早発閉経」と定義されているため、40代前半での閉経は異常ではないと考えられている。これを更年期が閉経の前後5年という定義と合わせると、35歳頃から更年期が始まる人もいて、それも異常ではないことになる。30代で更年期になるなんて、想像もしていなかった人にとってはショッキングかもしれない。

「30歳代後半の若い方にとって、体調の悪さが更年期症状なのかどうか、ご自分で判断するのは難しいと思います。月経前症候群と更年期症状がミックスした状態になっている方もいて、婦人科での治療で改善が見込めます。ただし、これから妊娠や出産を考えている人が、更年期症状を自覚したら、すぐに生殖医療を始める必要があるかもしれないので、早めに婦人科に相談することをお勧めします」(善方院長)

善方院長の著書『女医が教える 閉経の教科書』には更年期障害の症状として、以下のような例が挙げられている。

■血管運動神経系の症状 ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗、寝汗、手足の冷え、動悸、息切れ

■精神神経系の症状 イライラ、焦燥感、憂うつ、不安感、疲れやすい、やる気が出ない、倦怠感、不眠、頭痛、頭がぼーっとする、思考が鈍る、めまい、浮遊感

■運動器官系の症状 関節痛、手指の痛み、腰痛、肩こり

■泌尿器、生殖器の症状 排尿障害、尿失禁、骨盤臓器脱

その他にも、デリケートゾーンのトラブルや、もの忘れ、食欲不振、便秘、薄毛など、その症状は多岐にわたる。

「ただし、誤解しないで欲しいのは、更年期になったからといって、すべての女性に更年期障害が起きるわけではないということです。ですから『更年期になったら辛くて何もできなくなるのか』などと、必要以上に恐れたり、不安に感じたりする必要はありません」(善方院長)

また、更年期になる前から自分の体のこと知って、対策をすることは可能だそう。特に重要なのが30代後半から40代前半にかけて。この時期にしっかり自分の体と向き合うことが重要だという。

アラフォーからの先手必勝!更年期障害を軽減するために重要な3つのキーワード

よしかた産婦人科医の善方裕美院長

善方院長によると、更年期障害を予防あるいは軽減するために重要なのは、食事、睡眠、運動の3つ。そのポイントをまとめてみた。

1)食事

まずは暴飲暴食をせず3食きちんと食べること。さらに栄養のバランスを考えた食事をすること。40代になると、女性ホルモンが不足してくるので、それを補うために大豆製品を多く摂取することが望ましい。大豆製品に含まれるイソフラボンはエストロゲンという女性ホルモンに構造が似ているため、ホルモンの揺らぎを楽にしてくれるなど、さまざまな効果があり。また乳癌の予防効果も期待できる。さらに個人差があるが更年期には高脂血症などになりやすいので、できるだけ糖質と脂質を抑えてタンパク質とることを心掛ける。

2)睡眠

寝不足は大敵。理想は7~8時間だが、必要な睡眠時間には個人差があるので、日中眠くならない程度の充分な睡眠を心掛ける。また、昼夜逆転にならないよう、夜に寝て朝起きるといった規則正しい生活が基本。夜には睡眠ホルモンのメラトニンが多く分泌されるが、メラトニンには抗酸化作用があり老化防止ホルモンとしても知られる。また、日中に日光を浴び、夜暗くして眠るというサーカディアンリズムを作ることで、うつ病の予防になることが知られている。

3)運動

もともと、運動習慣がある人は更年期障害になりづらいという研究結果があるそうだ。運動習慣がある人は30代、40代になってもその習慣を継続することが望ましい。ただ、人間は年齢とともに筋肉量、基礎代謝が下がってくる。特に40代以降はその傾向が強くなるので、筋肉を落とさない、できれば筋力増強を心掛けたい。理想は1回35分〜1時間程度の運動を週に3〜4回。1回の運動量は以下の通り。

1)ウォーミングアップのストレッチ 5分
 柔軟体操や軽い歩行またはジョギングなど

2)有酸素運動 20〜40分
 歩行、ジョギング、水泳、サイクリング、エアロビクス、ダンスなど

3)ストレッチ+ウエイトトレーニング 合計5〜10分
 ウエイトトレーニングは1〜3?のダンベルを使った軽いものまたは、1〜3キロのバーベル上げ

4)クールダウンのストレッチ 5分
 柔軟体操や軽い歩行、ジョギング、マッサージなど
(女性医学ガイドブック 更年期医療編 2014年度版より)

これはあくまでも理想で、実際、運動習慣がない人がこれを継続するのはかなり難しい。

「ジムなどに通っている人は、ご紹介した運動をひととおりやることは、それほど難しくないと思いますが、そうでない人は時間もかかりますし難しいですよね。でも、だからといって、諦めて何もやらないのではなく『やれるところからやってみよう』という意識を持ってほしいですね。昔の日本人は畳の部屋で暮らし、トイレも和式だったので、立ったり座ったりする機会が今よりずっと多く、遠くでも歩いて移動するのが当たり前で、生活の中で自然に足腰を鍛えていました。それに比べて現代人は下半身を使う機会が圧倒的に少ない。更年期になると下半身の筋肉が落ちてくるので、せめてストレッチやスクワットで脚を鍛えるだけでもいいので、下半身の筋肉を落とさないような運動をしたほうがいいですね」(善方院長)

運動が苦手な人はまずはラジオ体操から

運動が苦手、忙しくて時間がないという人に善方院長が勧めているのがラジオ体操。先程紹介した運動量に比べると軽すぎるような気もするが、善方院長のクリニックでは更年期障害の予防だけでなく、治療としてもラジオ体操を勧めているという。

「更年期障害で肩こりだとかめまいがあったのに、ラジオ体操をやってすごく調子が良くなりましたという患者さんが多いです。体全体を使うからなんだろうと思いますね」(善方院長)

その他にもヨガやピラティスも更年期障害の症状を緩和する効果が期待できるそう。特にヨガは呼吸や瞑想と組み合わせるため自律神経が整い、肉体だけでなく精神状態にもいい影響があるからだ。自分の生活リズムや運動習慣に合わせて、できること、できそうなことから始めてみてはどうだろう。

「20代、30代では更年期なんてピンとこないかもしれませんが、健康美を目指して早いうちから対策するのはいいことだと思います。また、自分の体をチェックしておくことは、これから妊娠を考えている人にとっても大切なことです。
閉経すると女性として終わりのようなイメージがあって『あとは下り坂』と感じている人もいるかと思いますが、そんなことはありません。最近、日本でも更年期の話題が取り上げられますが、大抵の場合、閉経までの辛い話ばかり……。
でも、更年期症状には必ず終わりが来るし、閉経後は「生殖から解放」され、人間として歩む人生の階段を上っていくようなステージになるのです。取捨選択のスキルが上達した大人の女性にとって、閉経後の人生は清くスッキリと晴れた秋空のようだろうと思います。ただ、知識として更年期のことを知っておけば、その時がきてびっくりしたり、動揺したりしないですみますよね。それにきちんと予防策をとっておくことは、更年期症状を軽くすることができ、閉経後の健康美につながります。日頃から自分の体と向き合い、先手必勝で今からやれる運動・食事・睡眠を整えてまいりましょう」(善方院長)

ちまたで流行っているアンチエイジングは「抗老化(若返り)」だが、善方院長が推奨するウェルエイジングは「上手に歳を重ねること」。老化や閉経、それにともなう更年期症状は誰しも避けられない。しかし、避けられないからこそ、自分の体の変化を知り、上手に歳を重ねることが重要になっていく。ウェルエイジングのために今からできることを、さっそく始めてみてはいかがだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)


<参考図書>
『女医が教える閉経の教科書』
善方裕美(著)/秀和システム
医学博士で産婦人科医の善方裕美さんが、これまであまり知られていなかった「閉経」に関する正しい知識を図解や経験を交えて、わかりやすく解説した、アラフォーから知っておきたい女性医学の入門書。

PROFILE 善方裕美(よしかたひろみ)
よしかた産婦人科院長 / 横浜市立大学客員准教授 医学博士
日本産科婦人科学会専門医 女性ヘルスケア専門医 日本骨粗鬆症学会認定医 マンモグラフィ読影認定医
約30年にわたって多くの悩める更年期女性と向き合い、更年期障害についてカウンセリング、HRT(ホルモン補充療法)、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療をおこなう。おもな著書に「女医が教える閉経の教科書(秀和システム)」「だって更年期なんだも〜ん治療編(主婦の友社)」「ウィメンズヘルスリハビリテーション(メジカルビュー社)」など。NHK「きょうの健康」「チョイス@病気になったとき」などの出演ほか、学会や自治体主催の健康セミナーなどで更年期診療の認知を広める活動もしている。よしかた産婦人科は年間約700人の赤ちゃんが生まれる分娩施設。母乳育児・自然分娩を基本に思いやりと触れ合いを大切にし、ママと赤ちゃん、ご家族にとって、幸せな出産と育児を提供すべく、よりよい産科医療を提供するために医療技術のアップデートを重ねながら、日夜奮闘中。
よしかた産婦人科 https://www.yoshikata.or.jp/