毎週金曜深夜0時12分からはドラマ24「雪女と蟹を食う」(主演:重岡大毅 ジャニーズWEST)を放送!
「テレ東プラス」では、第11話「あなたのような人」をプレイバックする。
※下記ネタバレあり
痴漢冤罪により全てを失い、人生に絶望した男・北(重岡大毅)は自殺を図ろうとするが、あと一歩踏み切れずにいた。
テレビでグルメ番組を見た北は「人生最後の日は北海道で蟹を食べたい」と思い立ち、図書館へ。そこで見かけたセレブ妻・雪枝彩女(入山法子)に狙いを定め、家に押し入り、金を要求するが、彩女に促されるがまま情事を交わしてしまう。彩女に「私も食べたいです、蟹...」と告げられた北は、戸惑いながらも2人で不思議な旅を始めることに。
旅の途中、北は彩女が死ぬために自分についてきたこと、夫で小説家の雪枝一騎(勝村政信)との間で孤独を感じていることを知る。
ついに"最期の地"と決めた稚内にたどり着いた2人。彩女の死への決意を変えることができず葛藤する北は、「明日一緒に蟹を食べて、一緒に死ぬのよ」と、彩女から特選蟹フルコースの予約が取れたことを報告される。
◆
「約束したでしょ? 旅の間は笑顔でいるって。まだ旅は終わってないんだから」
そう言う彩女に北は思いきり笑ってみせる。彩女は静かに「変な顔」と言って微笑む。
「ねぇ、北さんは生まれ変わったら何になりたい?」
「え?」
「自由に空を舞う鳥? 広い海を縦横無尽に泳ぐ魚? 一生愛されて生きる動物? それとも、雄大な自然の中で長寿な植物? どれになりたい?」
ベッドに横になり、そう訪ねる彩女。北も彩女の隣に寝そべる。
「どれもピンとこないかな。でも、強いて言うなら...電車に乗らなくて良い地域の人間がいい」
「え? 電車?」
「そう」
苦笑いする北の頬に、優しく触れる彩女。
「...いろいろあったのね」
◆
別のホテルにて。一騎の愛人・谷内(齋藤里菜)が、ベッドに寝そべりながら原稿用紙を読んでくすりと笑う。
「先生の字って、お世辞にもきれいとは言えませんね」
「人に見せるためじゃないんだ。それに、作家の字は汚いと相場が決まっている」
面白そうに一騎を見ている谷内。
「そんなことより、どう思った?」
「私は小説のことあんまりわかりませんけど...なんだか、嘘を聞かされているように感じました」
煙草をくゆらせながら、黙り込む一騎。
海沿いの道を歩いている北。ぼんやりと景色を見つめながら(俺は分からない。死にたいと思っている人間をどうやって助けたらいいか...)と思いを巡らせる。
「考えろ...なぁ、考えろよ...俺はあの時...」
(誰に何て言ってほしかったんだ?)
(自分は何が嫌で、何が足りなくて、この世から消えてしまおうだなんて思ってたんだ...)
「そうか、そうだ、そうだ...」
海辺でひとりつぶやく北。涙で視界がにじむ。
「俺、もうそんなことを思い出せなくなるくらい...とっくに救われてた...とっくに救われてた...」
燃えるような夕焼けに、空が赤く染まっていく。
(神様、長生きがしたいわけじゃないんです。ただ、もう少しだけ...この夏の続きが見たいんです...)
ついに蟹料理店にやって来た2人。いけすで動く蟹を凝視しながら「いよいよか…」とつぶやく北。
「ついにこの日が来ましたね」
「そういえば、まだ聞いてなかったよ。彩女さんが生まれ変わったらなりたいもの」
「そうでしたね。実はあまり考えてなかったんです。じゃあ…死ぬ間際までに教えますね」
優しく微笑む彩女。
個室に案内され、そわそわしながら座っている北。すると女将がやってきて、蟹汁を2人の前に置く。椀の中には蟹の爪が入っていて、不思議そうにそれを見つめる。
「蟹、これだけ?」
「まさか」
ふふふと微笑む彩女。
女将が再びやって来て、立派な本ズワイ蟹の姿茹でをテーブルに置く。
圧倒されたように、ぼんやりと蟹を見つめる北。「人生最後の日は、北海道で蟹を食べる」と決意した日のことを思い出す。
「どうですか? 初蟹の感想は?」
「思ってたよりグロい…っていうか、迫力があって。どうやって食べるんですか? これ」
「ふふ、ちょっと待ってくださいね。まずは足を全部切り離して…」
蟹用ハサミで足をチョキチョキと切り落としていく彩女。北はその様子を「ちょっと残酷ですね」と笑いつつ、じっと見ている。
彩女が殻から足の身をきれいに引っ張り出すと、「出た出た!」とはしゃぐ北。彩女はむいた部分を皿に乗せ、「はい、どうぞ」と差し出す。
北はしばらく観察し、意を決したようにゆっくりと口に運ぶ。微笑みを浮かべながら、その様子を見守る彩女。
もぐもぐと蟹を噛みしめながら、驚いたように目を見開き、味わいながらゴクンと飲み込む北。
「うん…海の味がする」
「え?」
「すっごいおいしいです」
北の笑顔にホッとする彩女。「じゃあ全部むいちゃいますね」とハサミを手に取るが、「ちょっと待って、俺にもやらせて」と北。彩女は驚きながら、北にハサミを手渡す。
北は足の殻をむいてみるが、うまくいかず、蟹の身がぼろぼろになってしまった。
「どうぞ」と皿に乗せると、彩女は「これ、私の分ですか?」といたずらっぽく笑う。
「やっぱりダメでしたかね。案外いけるかなと思ったんですけど…」
「いただきます」
一口食べて、じっくり味わう彩女。ドキドキしながら見ている北に、「おいしいです、ありがとう」とうれしそうに笑う。そんな彩女を見て、今までの自分を省みる北。
「いや…。俺、優しくしてもらわないと優しくできないって…情けない話です」
姿勢を正し、真剣な表情で彩女を見つめる。
「俺、彩女さんには迷惑かけてばかりで…その…」
北が何か言おうとした瞬間、「大変お待たせしました!」と女将がやって来る。
「冷水にくぐらせて花を咲かせた、ズワイ蟹の洗いでございます」
白い花が咲いたようなカニ刺しに、興奮する北。
「これ、すごいですね!」
「いただきましょう」
その後も、蟹しゃぶ、焼きタラバ蟹、蟹の天ぷらなどを堪能する。
(今俺たちがここにいるのは、偶然や運命や、ましてや…俺が強盗を決行したからでもない)
(全部、彩女さんのおかげだ。出会った頃、優しくて女神みたいな彩女さんは、こんなどうしようもない俺と一緒に死んでくれると言った)
(彩女さんが望むことを遂げることが、彼女への償いだと思っていた…。でも、死ぬことは簡単じゃないか。蟹をほじったくらいじゃ、何も償えてない。俺は…まだ何も…)
蟹のフルコースを全て食べ終え、お茶を飲む2人。北は「いや〜食った食った」と満足そうに言う。
「北さん」
「はい?」
「…そろそろ行きましょうか」
彩女の意味深な表情に固まる北。
車で海辺にやって来た2人。日が徐々に傾き始めている。彩女は車から降りると、「誰にも迷惑がかからない方法にするわ」と冷淡な表情で言う。
ついに蟹を食べるという目的を果たしてしまった2人。北は、死へ向かう彩女を止めることができるのか…!?
【最終話】
死ぬ前に蟹を食べようと北海道まで旅をしてきた北(重岡大毅)と彩女(入山法子)。北の想いは届かず、彩女は自ら海に入っていった。北はなんとか彩女を浜に引き上げるが彩女の意識は戻らないまま…。残された北は彩女から託された日記を読み、彼女の本当の想いを知る。そして、彩女を訪ねてきた一騎(勝村政信)がホテルへやってくると、北は一騎を海へ連れていき…。北と彩女の不思議な二人旅はどんな結末を迎えるのか…?