by Society for Science

アメリカに住む17歳の少年が新たな仕組みを持つモーターを開発し、アメリカで開催された高校生の科学研究コンテスト・リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)で最優秀賞と7万5000ドル(約1000万円)の賞金を獲得しました。このモーターが「電気自動車の未来を変える可能性を秘めている」として注目されていると、スミソニアン博物館が発行するスミソニアン・マガジンが報じています。

This 17-Year-Old Designed a Motor That Could Potentially Transform the Electric Car Industry | Innovation| Smithsonian Magazine

https://www.smithsonianmag.com/innovation/this-17-year-old-designed-a-motor-that-could-potentially-transform-the-electric-car-industry-180980550/

アメリカ・フロリダ州に住む17歳のロバート・サンソン君は、アニマトロニクスを応用した手や時速100kmを超えるゴーカートなど、さまざまなエンジニアリングプロジェクトに取り組んできた発明家です。サンソン君は電気自動車の長所と短所について解説したビデオを見て、電気自動車のモーターには持続可能性の点で問題があることを知りました。

ほとんどの電気自動車のモーターには、希土類元素(レアアース)の一種であるネオジムやジスプロシウムから作られた永久磁石が必要です。しかし、レアアースの採掘には財政的にも環境的にもコストがかかるため、電気自動車の普及に伴ってレアアースの供給不足が懸念されています。

電気自動車のモーターの持続可能性に関心を持ったサンソン君は、レアアースが必要な永久磁石を使わない同期リラクタンスモーターに着目しました。同期リラクタンスモーターはポンプやファンなどに利用されていますが、回転力(トルク)と効率性の点で電気自動車を動かせるほど強力ではありません。

そこでサンソン君は、同期リラクタンスモーターのパフォーマンスを向上させる方法について検討を始め、1年かけてさまざまなプロトタイプを製造しました。材料にプラスチック、銅線、スチール製ローターなどを使ったプロトタイプは3Dプリンターを用いて製造され、各種メーターを使用して力を測定したとのこと。サンソン君は「私は電気モーターにもともと興味を持っていました」「その持続可能性の問題に取り組み、別のモーターを設計し、試してみたくなったのです」と述べています。

サンソン君が開発したモーターや本人が喋っている様子は、ISEFの以下の動画で紹介されています。

Meet Robert Sansone, winner of the 2022 George D Yancopoulos Innovator Award Regeneron ISEF - YouTube

この少年がサンソン君。

新しい同期リラクタンスモーターのプロトタイプがこれ。

同期リラクタンスモーターは固定子に通電して磁界を発生させ、エアギャップがあるスチールローターを回転させることで動作します。サンソン君はモーターに別の磁場を組み込むことでトルクを増す方法を考案したとのことですが、将来的に技術の特許取得を目指していることから、詳細なメカニズムは明かされていません。

サンソン君は新たな同期リラクタンスモーターの開発により、ISEFで最優秀賞を受賞しました。マサチューセッツ工科大学への進学を希望しているサンソン君は、賞金の7万5000ドルを学費に充てるつもりだとのことです。

サンソン君は高度なモーターを製造するリソースを持たなかったため、3Dプリンターを使って小規模なプロトタイプを製造しました。「私には助けてくれるメンターがいなかったので、モーターが失敗する度にたくさんの研究を行い、何がうまくいかなかったのかトラブルシューティングしなければなりませんでした」と述べるサンソン君は、実に15台目のプロトタイプでようやく実用的なモーターを製造できたとのこと。

新たな同期リラクタンスモーターは毎分300回転(RPM)の条件でトルクが39%、効率性は31%上昇したほか、750RPMの条件では効率が37%上昇しました。さらに回転数を増やすとプラスチック製のプロトタイプは溶けてしまったそうですが、設計変更によりトルクと効率性が改善していることが確認できたと述べています。

ミシガン大学の電気・コンピューター工学教授であるヒース・ホフマン氏は、「彼は間違いなく物事を正しい方向で見ています」「このモーターが次世代の大きな革新になる可能性があります」とコメント。その一方で、サンソン君以外にも多くの研究者が生涯をかけて研究に取り組んでいるものの、発明が実際に世界を変える可能性は非常に小さいことも指摘しています。

記事作成時点のサンソン君は、16台目のプロトタイプ製造に向けた計算と3Dモデリングに取り組んでおり、次はより頑丈な材料で製造することを目指しています。「既存の電気モーターに含まれるレアアース材料は、電気自動車の持続可能性を阻害する大きな要因となっています」「私の新しいモーター設計により、電気自動車が完全に持続可能になる日を見るのが夢です」とサンソン君は述べました。