重賞初制覇を目指すシフルマン
ハンデ戦だけに波乱の傾向もある。2020年は10番人気アールスターが勝利し、2着が6番人気サトノガーネット、3着が13番人気アウトライアーズで、3連単137万4190円の高配当決着。他の年も、昨年の勝ち馬モズナガレボシは6番人気、2016年の勝ち馬クランモンタナは11番人気、2009年の勝ち馬ダンスアジョイは16番人気と、多くの人気薄馬が勝利を収めている。
その点もふまえ、今回はこのレースを血統的視点から分析していきたい。2012年以降の「小倉・芝2000m」の種牡馬別成績を見ると、ディープインパクトが最多の51勝。以下、ハーツクライが31勝、ハービンジャーが25勝と続く。今回はこの中からハービンジャーに注目したい。
2021年度の総合サイアーランキングで1位のディープインパクト、3位のハーツクライに対し、ハービンジャーは15位。2020年は13位、2019年は8位と上位の種牡馬ではないにもかかわらず、「小倉・芝2000m」の勝利数が3位に入るということは、この条件が特に相性がいいということだ。小倉記念では2015年と16年にベルーフが、17年にサンマルティンが2着に入っている。
今年は2頭のハービンジャー産駒が登録されているが、筆者はシフルマン(牡6歳、栗東・中尾秀正厩舎)を推したい。
同馬は3歳時までに3勝を挙げながら伸び悩んでいたが、昨年10月の関ヶ原S(中京・芝2000m)で約2年3カ月ぶりの勝利を挙げてオープン入り。前走の都大路S(中京・芝2000m)を勝ってここに臨む。小倉では1戦して2着。そのレースは今年2月の関門橋S(芝2000m)で、逃げ粘ってクビ差2着(3着に5馬身差)という好内容だった。
同馬の祖母は、G?秋華賞を勝ち、G?ジャパンCでも2着に入ったファビラスラフイン。叔父がG?阪神大賞典を勝ったギュスターヴクライという良血。ハービンジャー産駒で母の父サンデーサイレンスの配合は、前述のベルーフのほか、G?マイルチャンピオンシップの勝ち馬でG?皐月賞2着のペルシアンナイトと同じ組み合わせだ。6歳を迎えて本格化を感じさせる"遅咲き馬"の重賞初制覇に期待したい。
この条件ではモーリスの産駒も好成績を残している。まだ24戦とレース数は少ないが、7勝、2着1回、3着4回で勝率29.2%、連対率33.3%、複勝率50%という数字はディープインパクト以上。この夏も7月17日の博多Sで5番人気のルペルカーリアが勝利している。
今回、モーリス産駒はジェラルディーナ(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)が出走する。同馬は昨年の夏から秋にかけて3連勝を飾り、前走のG?鳴尾記念(中京・芝2000m)で0秒1差の2着に入ってここに臨む。
オープン入り以降は、G?チャレンジCで0秒8差の4着、G?京都記念で0秒3差の4着、G?阪神牝馬Sで0秒4差の6着と安定した走りを見せている。非凡な瞬発力が長所で、ここ3戦はメンバー中最速となる上がり3F33秒台を記録している。
母ジェンティルドンナは「牝馬三冠」を含むG?7勝という歴史的名牝。4、5歳時にジャパンC、G?ドバイシーマクラシック、G?有馬記念を制したように成長力も優れている。モーリスも4歳以降にG?を6勝しており、ジェラルディーナも真価を発揮するのはこの4歳夏以降になりそうで、このレースをきっかけにしたいところだ。
以上、今年の小倉記念は、ハービンジャー産駒シフルマン、モーリス産駒ジェラルディーナの2頭に期待する。