初出場で大会制覇を果たした3年前。そして今回は、不調からの脱却を果たす3位フィニッシュ。渋野日向子にとっての全英は、やっぱり何かが起きる場所だ。
5打差を追ってスタートした最終日。3打差まで詰め寄り迎えた14番で、ポットバンカーにつかまったことをきっかけにダブルボギーを叩いた。ここで再び5打のビハインドを背負うことになったが、続く15番で今度は首位のアシュレー・ブハイ(南アフリカ)がまさかのトリプルボギー。一気に2打差に縮まった。
17番パー5では2オンのバーディ。1打差で入った18番ではバーディを奪えずに大会2勝目を逃したが、ここ3カ月の不調を思えば、全英は渋野にとってやはり魔法がかかる場所なのだ。
不振を極めていた時期は「予選落ちが怖い」と自信を失っていた。その自信のなさを打ち消したのは、イギリスというゲンのいい場所。ただ、もちろんそれだけではない。前週の「トラストゴルフ・スコティッシュ女子オープン」で予選落ちを喫したあとには会場に残り練習。ショット、パットともに修正をして今年最後のメジャー大会に臨んだ。
初日は6アンダーを叩き出し首位発進。「シンデレラが帰ってきた」と現地メディアも色めきだつスタートダッシュとなった。2日目こそスコアを落としたが、「悪いゴルフではない。あとは失うものがないので、やるだけ」と臨んだ3日目に再びビッグスコアをマーク。そして最終日も優勝争いの中で戦い続けた。
何も分からない新人が海外試合初挑戦で勝利してから3年が経ち、酸いも甘いも知った。コロナ禍で狂った海外進出計画。その後不振に陥いるも、2020年12月の「全米女子オープン」で4位に入った。年が明けた21年はスイング改造を敢行。結果が出ない中で苦悩の日々を送ったが、国内2勝を引っさげ米ツアーの予選会に挑戦し、見事に通過を果たした。
そして迎えた今季は4月のメジャー初戦「シェブロン選手権」で4位。続く「ロッテ選手権」ではV争いのすえに2位と明るい話題が続いた。しかし、いきなり不振のどん底に迷い込んだ。その後は3日間大会の予選通過が一度あるだけで、週末の2日間を戦うのは、4月下旬以来。曇る表情を明るくしたのは、全英だった。
「いちばん変わったのは表情」と自身も下を向いていた自分に気づいていた。もがき苦しみ、浮上への回答を見つけ出し、挑んだ全英。下を向くプレーぶりはもはやなかった。
勝利こそ逃したが、またしてもイギリスのファンを魅了した。「2019年の全英によって、世界の方、日本の方に知れ渡って、私が作り上げられた大会。場所がどこであれ、楽しむ気持ちを思い出させてくれる場所」。思い出のイギリスは、再び渋野にスマイルを取り戻させてくれた。(文・高桑均)
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