試合開始早々の2分、ゴール前で絶好のFKを得る。このチャンスに自信を持ってボールの前に立ったのは相馬勇気。右足を振ると、セットプレーでなかなか得点できない日本代表にとって貴重なゴールを生んだ。
「欲を言えばもう少しスピードを上げていいコースに飛ばしたかったのですが、今年所属する名古屋グランパスでもFKを決めていて、あの角度には自信を持っているので、決められたことはよかったです」
先制点でチームを勢いに乗せた相馬だが、この場に立つまでには苦しい思いもした。東京五輪では左サイドのレギュラーとして活躍したものの、ワールドカップアジア最終予選では同じチームだった三笘薫や田中碧の活躍をテレビで眺めているだけだった。
相馬はそのときの心境を「一緒に戦った仲間たちが活躍する姿を見て心に来るものがありました」と振り返る。そして「自分がそこに選ばれるだけの活躍をしていたかというと、まだ足りなかった」と思い、努力を続けてきた。
そして相馬がカタールワールドカップで三笘に変わって左サイドの重要な役割を果たすかもしれない理由がある。それは三笘がプレミアリーグのブライトンに移籍したからだ。
三笘が新しいチームで出場機会を得られなければ、森保監督はFKを蹴ることもできるということで相馬を選ぶ可能性がある。実際、東京五輪の時に監督はケガの三笘に代わって相馬をプレーさせた。
今回のゴールで相馬にホッとしたり浮かれた様子はない。確かに香港と日本の力の差は大きかった。「結果を出したことはよかったのですが、中国、韓国とさらに強くなる相手が待っているので一喜一憂せず足下を見つめながら頑張っていきたいと思います」と冷静に語る。
残り2試合で同じように活躍すれば、五輪のチームメイトとともに相馬がカタール入りする日もやってくるだろう。
【文:森雅史/日本蹴球合同会社 撮影:スエイシナオヨシ/PICSPORT】