ニュースでは、2022年に入ってからの円安に伴い輸入品の価格が高騰していることがよく話題になっています。通貨安や物価高が生活や財政にのしかかってきている状況は日本以外の多くの国々でも同様で、世界最大の紅茶輸入国であるパキスタンの政府は国民に向けて「1日に飲む紅茶の量を減らしてほしい」と要請しました。

Watch: Pakistan minister asks people to cut down on tea because… | World News - Hindustan Times

https://www.hindustantimes.com/world-news/watch-pakistan-minister-asks-people-to-cut-down-on-tea-because-101655296255966.html

Pakistanis told to drink less tea as nation grapples with economic crisis - CNN

https://edition.cnn.com/2022/06/15/asia/pakistan-tea-economy-intl-hnk/index.html

Cutting trade War tariffs on China imports could lower U.S. inflation | Fortune

https://fortune.com/2022/06/23/ustr-katherine-tai-china-tariffs-significant-leverage-senate-inflation/

Singapore imports 90% of its food - how is it coping with inflation?

https://www.cnbc.com/2022/06/21/singapore-imports-90percent-of-its-food-how-is-it-coping-with-inflation.html

パキスタンのアーサン・イクバル計画・開発担当連邦大臣は2022年6月14日に、記者団に対して「輸入が政府の財政に負担をかけているので、パキスタンの人々には紅茶の消費量を1日当たり1〜2杯減らして欲しい」と話しました。イクバル氏は要請の根拠として、紅茶を輸入するためにパキスタン政府が借金をしていると説明。さらに、節電のために飲食店は早めに店じまいをするべきだとも話しました。

by Department of Foreign Affairs and Trade

2億2000万人の人口を擁するパキスタンは世界最大の紅茶輸入国であり、2020年の紅茶の輸入額は6億4000万ドル(約860億円)にのぼるとのこと。しかし、パキスタンの中央銀行が保有する外貨準備高は2022年2月末の163億ドル(約2兆2000億円)から5月には100億ドル(約1兆3000億円)にまで減少しており、少しでも支出を減らしたいパキスタン政府は紅茶の輸入額にも神経をとがらせています。

イクバル大臣の要請に対し、インターネット上には「紅茶を飲む量を減らしても国の財政危機を救うには焼け石に水ではないか」と疑問視するパキスタンの人々の書き込みが相次ぎました。あるTwitterユーザーは、「パキスタンでは、パキスタン軍に拘束されたインド空軍のパイロットが『パキスタンの紅茶はすばらしい』と言ったのがネットミームになりましたが、どうやらそれは間違っていなかったらしいですね」とコメント。

「ロティを半分にしたあげく、飲むお茶まで半分にしろというつもりでしょうか」と非難するツイートや……

「イクバル閣下、私たちは断食に挑戦したりしていますが、そもそも食べたり飲んだりするのをやめればいいという、500年は未来を行くあなたのビジョンにわくわくさせられっぱなしです」と皮肉るツイートもありました。

輸入品の価格が頭痛の種になっている点は、世界最大の経済大国であるアメリカも同様です。経済誌・Fortuneは6月23日に、「バイデン政権はトランプ元大統領が始めた中国への関税の見直しを進めている」と報じました。

アメリカは、トランプ政権下の2018年から「中国は自国製品を有利にするためにダンピングを行ったり、外国企業にテクノロジーを渡すよう迫ったりといった不正をしている」として、中国の輸入品に関税を課しています。これに対抗して、中国もアメリカ製品に関税を課したことから、両国の摩擦は貿易戦争と呼ばれる事態に発展しました。

しかし、アメリカは近年に入り記録的なインフレに見舞われており、電子機器や自動車、鉄鋼などの輸入コストを下げることで物価高に歯止めをかけるべきだとの声が高まっているとのこと。ジャネット・イエレン財務長官は、メディアからのインタビューの中で、「関税の一部をより理にかなったものにして、不必要な負担を減らすように再構築することを検討中です」と述べて、中国製品にかけた関税の緩和について検討を進めていることを示唆しました。

日本と同様に天然資源に乏しい島国で、特に食料の90%以上を輸入に頼っているシンガポールでは、隣国のマレーシアが食品価格を安定させるために鶏肉の輸出を停止していることや、ロシアによるウクライナ侵攻で「ヨーロッパの穀倉地帯」と呼ばれている同国での食料生産が大きく落ち込んでいることなどを背景に、輸入食品の価格高騰が家計を大きく圧迫しています。

シンガポール通貨庁と貿易産業省の発表によると、2022年5月の食品インフレ率は前年同月比4.5%で、4月の4.1%から上昇したとのこと。3月は3.3%だったことから、同国では食べ物の価格高騰が加速している状況です。

日本の丼物を提供しているシンガポールの飲食店・FukudonのオーナーであるRemus Seow氏によると、シンガポールでは2022年に入ってから食用油、卵、肉類などの仕入れ値が30〜45%も上がってしまったとのこと。そのため、Fukudonは2020年に開店して以来初めて値上げをしましたが、Seow氏は「もしこのまま値上げを続ければ、常連客の20〜35%がもう来なくなってしまうかもしれません」と危機感を募らせました。

輸入食品への依存度を減らすため、シンガポール政府は栄養ベースでの食料自給率を2030年までに30%まで引き上げる「30 by 30」という取り組みを始めています。しかし、自然食品を重視し遺伝子組み換え作物や培養肉などのノベルフードを嫌うシンガポール人の好みや、農業を軽視してきたこれまでの施策により、目標を達成できるかは未知数とのこと。

アジア開発銀行研究所の主席研究員であるDil Rahut氏は、2030年まで残り10年を切っているにもかかわらず、食料自給率が10%程度でしかないことから、「シンガポールの目標達成は非常に難しいでしょう」と警鐘を鳴らしました。