世界有数の仮想通貨取引所であるCoinbaseが、仮想通貨取引の分析ソフトウェアを通じて位置情報データをアメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)に販売していると、海外メディアのThe Interceptが報じました。Coinbaseの広報担当者は販売している位置情報について、「公共の情報源に基づくものであり、Coinbaseのユーザーデータを使ったものではない」と説明しています。

Cryptocurrency Titan Coinbase Providing “Geo Tracking Data” to ICE

https://theintercept.com/2022/06/29/crypto-coinbase-tracer-ice/

Coinbase Is Reportedly Selling Geolocation Data to ICE

https://www.coindesk.com/business/2022/06/29/coinbase-is-reportedly-selling-geo-location-data-to-ice/

Coinbaseはユーザーの仮想通貨取引を追跡できる「Coinbase Tracer」というソフトウェアを開発し、アメリカの政府機関にソフトウェア本体やライセンスの販売を行っています。2020年5月と2021年4月にはアメリカ合衆国シークレットサービスと5万ドル(当時のレートで約530万円)未満で比較的少額のライセンス契約を交わしたほか、2021年9月にはICEと136万ドル(当時のレートで約1億4000万円)の大規模な契約を結びました。

これまで、実際にCoinbase Tracerを通じてICEにどのような機能が提供されるのかは不明でしたが、監視団体のTech Inquiryが情報公開法に基づいて入手した文書によって機能の詳細が明らかになりました。その文書によると、Coinbase Tracerを使用することで、ブロックチェーンを介して仮想通貨の取引を追跡することができるとのこと。ブロックチェーンの分散型台帳は元から一般に向けて公開されているものですが、膨大なデータをソフトウェアツールを使わずに分析するのは大変困難なため、Coinbase Tracerは法執行機関が仮想通貨のやり取りを追跡する大きな助けとなります。

Coinbaseは企業のコンプライアンスと法執行機関の調査のためにCoinbase Tracerを販売するとしており、「現実世界のエンティティと仮想通貨アドレスを接続する」「マネーロンダリングやテロ資金供与を含む違法行為を調査する」といったことが可能になると説明しているとのこと。Coinbase Tracerを購入したICEは、ビットコイン・イーサリアム・テザーを含む約12種類の仮想通貨取引を追跡可能であり、マネーロンダリングや取引のカモフラージュを検出する機能も利用できるそうです。

また、Tech Inquiryが入手した文書には、Coinbase Tracerが「過去の位置情報追跡データ」を提供することも記されていますが、このデータが正確にどのようなデータソースに基づいているのかはわかっていません。この件についてThe InterceptがCoinbaseに問い合わせたところ、Coinbaseの広報担当者であるNatasha LaBranche氏は、ウェブサイトに「Coinbase Tracerは公的な情報源から情報を入手しており、Coinbaseのユーザーデータを利用しているわけではありません」という文言が記されていると指摘しました。しかし、実際にICEがCoinbase Tracerをどのように使用しているのかや、Coinbaseが使用に設けた制限については回答しませんでした。

Coinbaseは近年、アメリカのシークレットサービスやICE、アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)、麻薬取締局などに分析機能を売り込む動きを進めています。2022年6月にはアメリカ合衆国議会で、Coinbaseのグローバルインテリジェンス担当ヴァイスプレジデントを務めるJohn Kothanek氏が、Coinbaseは国家安全保障を支援すると証言。「あなたがサイバー犯罪者で仮想通貨を使っている場合、あなたは厳しい1日を送るでしょう」「Coinbaseはあなたを追跡し、資金を見つけ、政府が仮想通貨を押収するのを助けるつもりです」と述べました。

仮想通貨コミュニティは個人の自由を強力に主張するリバタリアニズムとも近しい上に、実際に仮想通貨が犯罪組織に使われていることも多いことから、Coinbaseが政府と協力することは物議を醸しています。また、Coinbase Tracerは開発当初、アフリカや中東諸国の政府にスパイウェアを販売したことで逮捕歴があるメンバーが開発に関与したとして非難を受け、Coinbaseは該当するメンバーを開発チームから外すこととなりました。

なお、Coinbaseは2022年に入ってから主要な仮想通貨が暴落したことを受け、新規採用予定だった人々の内定取り消しを行ったほか、従業員の18%に当たる約1100人を解雇することも発表しています。

大手仮想通貨取引所のCoinbaseが従業員の18%に当たる約1100人を解雇、「急速に成長しすぎた」とCEOが認める - GIGAZINE