沖縄から北海道まで、ひとつの「歩道」で結びたい――。そんな壮大な夢が込められた「JAPAN TRAIL(ジャパントレイル)」構想が発表された。

みなさんは「ロングトレイル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

「歩く旅」を楽しむためにつくられた道のことで、この普及と促進を目指すNPO法人「日本ロングトレイル協会」の公式サイトでは、以下のように説明されている。

「登頂を目的とする登山とは異なり、登山道やハイキング道、自然散策路、里山のあぜ道、ときには車道などを歩きながら、その地域の自然や歴史、文化に触れることができるのがロングトレイルです」

JAPAN TRAILは全国各地で整備されているロングトレイルを南から北へとつなぎ、日本列島をひとつに結ぶ、全長約1万キロメートルにわたる道を作ろうという計画だ。

2022年6月16日、日本ロングトレイル協会がその構想と第一次ルートを発表した。

「ここに立てば、日本が見えてくる」

「人が歩かないと、道は消えてしまうんです。廃道になります。そういう例が、いっぱいあります。
JAPAN TRAILが、きちっと出来あがるには、相当な時間がかかると思います」

記者発表会でそう語ったのは、日本ロングトレイル協会の中村達(とおる)代表理事。中村氏によると、以前から全国の歩道をつなぐ構想はあったが、長期休暇を取りにくい日本人のライフスタイルもあって、実現は難しかったという。しかしコロナ禍のリモートワークで休みに余裕が出てきたこと、自然や健康への関心が高まっていることなどが追い風になった。

「JAPAN TRAILは、全部歩けというものではない。ここに立てば、日本が見えてくる(ということ)。
『この道は、北海道から九州、沖縄まで続いているんだな』と、子供たちに知って欲しい。それがライフスタイルの変容を、しっかり後押ししていくパワーになっていくのではないか」(中村氏)

プロジェクトは、公益財団法人「安藤スポーツ・食文化振興財団」が支援する。「カップヌードル」生みの親である故・安藤百福氏が立ち上げ、青少年のスポーツ振興などに取り組んでいる財団だ。

百福氏の子で、財団理事長の安藤宏基氏(日清食品ホールディングス社長)も、先日ロングトレイルの一部を歩いたという。

「登山じゃなく裾野を歩くんだと思っていたんですが、道も岩山なんですね。靴ずれするわ、爪は割れるわで、大変だったんですが、日本アルプスの景色を見ると、スカッとしますね。
各所に素晴らしい光景や歴史・文化があり、行くたびに新しい発見があって、本当に心が清らかになる。ビジネスマンには良いと思います」(安藤氏)

JAPAN TRAILのルートは、日本ロングトレイル協会加盟団体がかかわるロングトレイルや、環境省の定める長距離自然歩道などをたどるもの。今回発表された第一次ルートは暫定ルートで、そのうち約50%が歩行可能な道であると確認されている。

今後、各地の観光資源も考慮しつつ、完成度を高めるという。地域を歩き、アクティビティを体験することで「着地型観光」への効果も視野に入れる。

「ロングトレイルだけに、大変な長い道のりです。おそらく10年、20年かかっていくかと思います」(協会の節田重節会長)

整備も踏破も数十年スパン。現時点では公式サイトと、スマートフォンアプリの提供程度だが、将来的には進入路や分岐点に、JAPAN TRAILの道標を設置する計画もあるという。

壮大なる「夢の歩道」の計画は、まだ始まったばかりだ。