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安易な早期退職をすると退職金はあっても働き始めないとすぐに底をついてしまいます。あわてて再就職求人を探しても、思うような求人は見つかりません。60歳からの再就職は甘くはありません。セカンドキャリアコンサルタントの高橋伸典氏が著書『退職後の不安を取り除く 定年1年目の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

失業期間中に資格学校と独立塾で勉強する

▶退職後の日々

退職した後は、何とも言えない解放感が訪れました。多くのローンは残っていたものの、失業給付金と退職金があったので生活は維持できました。再就職を支援してくれる会社やハローワークに通いながら、いろいろなセミナーに参加し、独立しようとか、再就職しようとか、いろいろ考えていました。

ハローワークでは、失業給付金受給の手続きを済ませた後、月に1回、就活の進捗状況を報告に行き、疑問点を相談していました。そこで求人案件を見ましたが、思うような求人はありませんでした。

ただ現在はシニアのサポートが厚くなってきて、ハローワークでもシニアコーナーを設置しているところも見られます。窓口でキャリアコンサルタントなど相談員に相談することで、幅広くアドバイスを受けることができるので安心です。私もいろいろ学ばせていただきました。

▶資格勉強を開始

また、失業期間中は時間ができたので、次の仕事に活かす資格を取ろうと思い、キャリアコンサルタント養成学校に行くことにしました。こんな時間がある時でないといけないと思ったのです。

前職の退職説明会で説明していた人がキャリアコンサルタントの方で、こうして人のキャリア形成のお手伝いができるようになりたいと思ったのがキッカケです。

将来は人の支援ができる職場で働きたいと思っていました。前職では研修インストラクターもやっていたので研修講師にもなりたい、そんな明るい未来を胸に抱いていました。

学校には4カ月、週に4日10時から16時まで通い、いろいろな年齢層のクラスメートと楽しく学べました。こうして学校で学ぶのは大学時代以来なので懐かしく、学び直しも良いものだと実感しました。

課程修了後には国家資格習得試験を受験します。試験は学科試験とロールプレイ試験があります。学科試験は内容が多岐にわたり覚えるのが大変でしたが、なんとか学科試験は最初で合格できました。しかしロールプレイ試験は難しく、3回目でようやく合格できました。

合格したときは、「これで資格を活かし、何とか仕事につける」と大喜びしました。しかし、これだけ苦労した資格でしたが、就職先の受け皿は非常に少なく、最初に想像していたものと現実は違うことを、後で知ることになるのです。

▶起業の道を探すも…

資格を目指すのと同時に、独立、起業の道も模索しました。自分の好きな事であれば、生涯現役で自分のペースで仕事ができるのでないかと思ったのです。

そのためいくつかの起業塾、スクールを探しました。

起業塾ではオンラインの活用術や自分の強みを生かして起業することを模索するのですが、当時は自分の強みがよくわからず、昔から好きな料理くらいしか強みとして思い浮かびませんでした。

そこで、男性向けの料理教室や簡単に料理を作れる料理セミナーを企画してみました。実際に起業塾で模擬セミナーをやってみて、好評ではあったのですが、これで仕事をやっていくとして、すぐに収益につなげることは難しいことがわかりました。私の場合は住宅ローンがまだ10年以上残っていて、2人の子どもの学費もしばらくかかるので、その間を低収入で耐えることは難しかったのです。

また、絶対にこれでやっていく、という情熱もそれほど湧いてきませんでした。本当に自分がやりたいものとも違う気がしたのです。冷静に考えると、すぐに独立して人に教えるレベルではありません。起業塾では多くのことを学びましたが、現実的な面から断念することにしました。

最初にぼんやり思っていた目標がイメージと違っていて、現実面でかなり難しいことがわかり始め、焦ってきました。退職して6カ月が経っていました。

ポイント
・就活は自分を見つめ直す良い機会。
・セミナーに参加したり、学校に通ったりして学び直すチャンス! イメージと違っても焦らず逆に素早く方向転換しよう。

再就職決定。しかし試練が待っていた…

▶どんな仕事なら受け入れられる?

資格を取っても仕事が見つからず、かといって独立するだけの準備も整っていない。退職金はあるものの、ローンもたくさん残っており、働き始めないとすぐに底をついてしまいます。あわてて再就職求人を探しますが、なかなか思うような求人は見つかりません。やはり60歳からの再就職は甘くなかったのです。

仕事を選ばなければ求人は見つけられますが、心動されるものがありません。自分が求めているものと、現実に求められているものとの間にギャップがありました。

そこで自分が受け入れることができる分野は何か、考えてみました。今までの仕事の中で得意なこと、好きなことを考えると「採用」と「研修」でした。

そこで採用か研修を探すことに方向転換します。それから人材紹介会社の求人サイトで採用の求人を探す毎日が続きます。なかなか見つからずにいたところ、保育園業界での「採用担当募集」の求人が目に飛び込んできました。

連絡するとすぐに会いたいとのことで、時間を空けず面接が決まります。面接に行ってみると、いきなり社長はじめ会社の幹部との面接で驚きました。

保育業界は保育士の採用が困難を極めていて、面接時にも、すぐに成果を上げられるかどうか、尋ねられました。厳しい要求の一方で、社長からは熱のこもった会社説明があり、入社してほしいという気持ちが前面に出ていました。大規模保育園を次年度の4月に開園するので人を集めなくてはならず、協力してほしいとのことでした。

面接が終わって、すぐに採用の連絡が来ました。できればすぐにでも来てほしいと言われ、翌月の入社が決まりました。嬉しかったのはもちろん、就職が決まったという安心感もありました。しかし一社でしか働いたことがなく、違う会社で働くのは初めてなので、どうなるかという不安も同時にありました。

▶思いがけない試練

驚いたことに、再就職先では一緒に働くメンバーは複数名いると聞いていましたが、実質私一人しかいない状況でした。新しい大型の保育園の開園までわずか5カ月しかありません。社長から依頼を受けた採用目標人数は20名。この時点で採用になっている人は数名だけ。厳しい現実です。

もう後はやれることをやるしかありません。採用イベントに参加、人材紹介会社への度重なる依頼、保育士を養成する学校への訪問、新しいWe b対策、内部異動とありとあらゆる手段を駆使し、なんと奇跡的に目標人数に達することができました。現場の先生方から、たいへん喜ばれました。

しかし、ここで思いもしない試練が待ち受けていたのです。

保育園が開園してしばらくした時のことです。そろそろ、未決定だった採用課の責任者に私がなると思っていました。ところが突然採用業務未経験でかなり年下の女性が、私の上司として親会社から呼ばれ赴任することになったのです。そして私の仕事内容が採用全般から新卒採用のみに変更されました。まったくの青天の霹靂です。

それからは、良い企画を立てても、片隅の小さなところを批判されることが続きました。新卒採用にとって要になる学校のことを一番知っているにもかかわらず、現場のことを知らない人に、訪問先の指示を受けます。

訪問先から帰社して日誌を書くまで退社できないなど、行動監視までされました。請われて入社したのに、かなりの屈辱です。なんでこんな目に遭うのだという気持ちで眠れない夜もありました。

なぜこんなことが起こるのか、実績もあげていたし、現場の保育園の園長先生からは感謝もされていました。どうしてなのだろう。心の声が叫んでいました。随分悩みましたが、その答えは次に続く、ある人と話す会話の中にありました。

ポイント
・ 現役時代に得意なものがあると就職が決まりやすい。現役時代から自分の得意なこと、売りになるものを意識し仕事の質を高めておくことが重要。
・ 嫌な体験は、その時は辛いものだが、後で貴重な財産になる。

郄橋 伸典
セカンドキャリアコンサルタント