日本でそうした環境を実現するためには解雇規制の緩和が必要です。今の政府が議論するべきはそういった新陳代謝を促し、人材の流動化を実現する仕組み作りではないでしょうか。
もちろん新たな課題も生じるでしょうが、労働者側から見ても、その時々で自身を必要とする会社への転職が当たり前に行われる柔軟な環境の方が働きがいも収入も得やすいと思います」
働く側は「ジョブ型」のキャリアを考えるべき時代に
定年までひとつの会社で勤め上げる「日本型雇用」から、転職が当たり前のように時代へ。この変化のなかで「ジョブ型雇用」と呼ばれる働き方が注目されている。
新入社員に幅広い業務を経験させ、いわゆる”ゼネラリスト”として育成するのではなく、業務内容や責任の範囲、必要なスキル、勤務時間や勤務場所などを明確に定めた上で雇用契約を結ぶという働き方だ。
雇用側はその時々によって必要な人材を柔軟に確保することができ、働く側は特定の能力やスキルを磨き続けることで、年齢が高くなってもその専門性を生かして仕事を見つけることができるのだという。
城さんは「時代が明らかに”ジョブ型”の方に寄ってきている」と話す。
2021年には日立製作所、富士通といった大手企業が「ジョブ型雇用」の2022年導入を発表。YKKグループは21年度から、国内事業会社で65歳を上限としてきた「定年制度」を廃止した。
「そういった時代のなかにあって働く側は早期退職募集があってから次のキャリアを考えるのではなく、それ以前から『自分はこのジョブを磨くんだ』『専門家になるんだ』というキャリアの"コア"を身につける姿勢が必要になります。
今の若い世代の話を聞くと、終身雇用に憧れを持つグループとジョブ型に対応するためのスキルを磨こうとしているグループの二極化が進んでいる。働く側は自分の人生の判断を会社に委ねるこれまでの日本型雇用のあり方で本当に幸せなのかということを見つめ直すタイミングなのではないかと感じています」(城さん)
雇用を取り巻く環境は、経済状況や少子高齢化、そしてそれらを背景にした政策などさまざまな要因で変化する。従来の日本型雇用からの大きなシフトチェンジが起きている現代では仕事のやりがいや条件だけではなく、社会情勢や政治の動きに照らしてキャリアを考えてみる姿勢が重要となってくるのではないだろうか。