※この記事は2015年06月30日にBLOGOSで公開されたものです

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30日、自民党の村上誠一郎衆議院議員が日本外国特派員協会で会見を行った。村上議員は昨年6月27日にも同協会で会見を行い、集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対の立場を表明※1。安全保障法制にも一貫して反対の立場を取ってきた村上議員は、今年5月12日の自民党総務会における挙手採決を一人退席したことも話題になった。

村上議員は冒頭発言の中で「"平和主義"と"主権在民"と"基本的人権"はいつなる時代においても、いつなる場合においても決して変更してはならないことだと、私は確信しております。」と涙を浮かべ訴えた。

村上議員によれば「多くの同僚が"憲法改正が筋である""憲法改正することが一番正しい"と言いに来てくれる」という。

一方、議員たちが声を上げられない背景について「小選挙区制を導入し、党幹部が選挙区、比例順位、そして選挙資金の配分を握ってしまったことによって、党の幹部の力が大変大きくなりました。昔は派閥がありガードしてくれていたんですが、見識や力のある領袖がいなくなってしまった。そうなると、反対するよりは、選挙やポストが優先にならざるを得ない、それを決定的にしてしまったのが、郵政解散のときの小泉純一郎さんだと思う。」と説明した。

そのような中にあって、党執行部の方針に反する行動を取る自身への批判について「弁護士や代議士の「士」という字には、"サムライ"という意味があります。これは個人の問題ではないんです。」、「政治家の良心、信念として、たとえ総理であろうと幹事長であろうと、間違ってると思ったら"それはおかしい"と言うことが本当は党のためになるし、内閣のためになると思うからです。自分自身の選挙やポストが欲しいという前に、やっぱり自分を信じてくれた有権者や国民に対して政治家として責任を取ることが重要だと考えています。」とし、再び涙で声を詰まらせながら「私は小学校から大学まで非常に素晴らしい先生たちに教わったという誇りと自負を持っています。教えてくれた先生たちに対して、恥じることはひとつもありません。それは、私が優等生だからということではなくて、先生たちが教えてくれた魂に対して感謝をしているし、教えてくれたことは決して間違っていなかったということです。こうやってみなさんの前で堂々と自分の意見が言えるのも、その教えのおかげであるということあります。」と訴えた。

※1:集団的自衛権に自民党で一人反対、村上誠一郎議員が会見 - 2014年6月27日

冒頭発言

どうも皆さんこんにちは。ただいまご紹介に預かりました村上誠一郎です。昨年に引き続き、今年もまたお呼び頂き、本当に光栄に思います。

昨年は集団的自衛権の閣議決定までで、まあ終わったのでありますが、いよいよ本年は安保法制ということで、集団的自衛権を含む法律が11本出されました。毎日のように国会においてこの法案が議論されていますが、議論されればされるほど、問題点がどんどん出てきて、そしてまた議論されれば議論されるほど、いろいろな矛盾が出てきているような気がします。

まず、去年も申し上げたんですが、岩波の「世界」という雑誌の5月号に書いた「ワイマールの落日を繰り返すな」という文章で私は「集団的自衛権の行使を可能にするには憲法改正以外に道はない」ということを申し上げました。ご承知のように、集団的自衛権というのは自分の国が攻められていないのに、同盟国が攻められているときには戦争ができるということです。これを可能にするためには、憲法を改正する以外に道はない、と申し上げたわけでございます。

本来ならば、正々堂々と憲法改正の発議をして、国民投票において皆さんの賛成が得られれば集団的自衛権を行えばよし、反対が多ければ集団的自衛権は諦める、やめるというのが民主主義であるという風に私は考えます。

それから実はこれは2年前から申し上げていたのですが、二番目の大きな理由は、ご記憶のある方もいらっしゃると思います。衆議院の委員会で、亡くられた小松(一郎)さんという法制局長官が「解釈を変更することによって集団的自衛権の行使が可能だ」と言われた時に、質問に対して安倍さんが「内閣法制局長官は内閣の一部局であるから、総理である私が全責任を負う」という答弁をなさいました。私はこれは多分大変なことになるだろうと思いました。

法制局長官というのは内閣における法律顧問であって、本来ならば客観的な判断で内閣の今までの考え方やそういうものに対してコントロールしてきたわけです。簡単に言えば、お相撲さんの行司役が、まわしをつけて土俵に上がってしまったと。ここからがボタンの掛け違いというか、大きな問題が出てきたんじゃないかと思います。

なぜならば、もし内閣の一部局である法制局長官が解釈を変更することによって憲法を変えることができるようになれば、それは例えば憲法の最大原則である主権在民、それから基本的人権の尊重まで時の内閣によって、法制局長官が恣意的に解釈することによって変えてしまうということです。それは明らかに憲法が在って無きが如し、有名無実化して空洞化してしまうということです。そうなればもはや法治国家ではない、そう考えるからであります。

ある方は、「日本国憲法は不磨の大典ではない」と、「絶対変えることは出来ない」とおっしゃるかもしれませんが、戦後教育を受けた私は、「平和主義」と「主権在民」と「基本的人権」はいつなる時代においても、いつなる場合においても決して変更してはならないことだと、私は確信しております。

それからですね、そもそも今回のこの集団的自衛権の法制の根拠を我が自民党は何に求めたか。それはもうご高承のように、砂川判決と昭和47年の政府見解であるというわけです。

皆さん、こないだの衆議院の憲法調査会での、3人の非常に常識的な憲法学者が「違憲だ」と言われたのでもうお分かりだと思いますが、99%の憲法学者、それから歴代の法制局長官、そしてほぼ全員の判事や検事や弁護士の法曹のみなさん、私が議論する限りにおいては、全部こういう砂川や昭和47年の政府見解は根拠ではないと。

証拠にいくつか持ってきたんですが、朝日新聞で「また砂川判決が根拠とは驚きだ」、東京新聞は「安保法案乏しき合憲性、砂川判決が拡大解釈されている」それから、毎日は「安保転換を問う やはり違憲法案だ」。極め付きは実は55年前の砂川判決のときの弁護団の方がまだ生きていて「合憲主張だというのは国民を惑わす強弁だ、詭弁だ」「最高裁判決には集団的自衛権行使の根拠はない」と、当事者の弁護士までが言っているわけであります。

このように、大多数の国民の皆さん方や学者の皆さん方に「違憲」法案であるというコンセンサスが得られているのに、これをあえて強引にこのまま突破することは日本の将来、日本の民主主義において多大なる禍根を残すのではないかと心配しております。

すなわち、ご承知のように、来年から18歳の方々が投票権を持つようになります。我々は、若い皆さん方に「立憲主義を守れ」と、「三権分立を守れ」と、教えてきているわけであります。

そもそも憲法は、国家権力が暴走しないためにあるものであり、それが立憲主義であります。そのために、行政や司法や立法はチェックアンドバランスの三権分立を守らなければいけないと言ってきています。それで若い人々に「立憲主義を守れ」「三権分立を守れ」と言っておきながら、天下の自民党がそれを破ることをとしたら、若い人達に非常な不信感を持たれるのではないかと懸念するのであります。

それから小林節先生が言っているように、この法案が通って行けば、違憲訴訟が連発されることになると思います。それで最後に総務会で私は説明者に、「もし違憲訴訟が起こって、違憲判決が出たときにどうするんだ」と聞きましたら、「この安保法案は失効する」という答えでした。もう私はびっくりいたしました。

我々の親父や祖父の時代は、法律案を出すときには、縦・横・斜め・筋交いから質問が出たときにパーフェクトな答えが出来るような法案以外は出さないようにしていた。すなわち質問が出て、明確に答えられないような法案は決して出さなかった。それが今申し上げたように、違憲性の疑義のある法案を出すということは、もう一回思いとどまって、踏みとどまって考える必要があるのではないかと考えています。

まあ法案そのものについては時間がないので省略しますが、まず一番の大きい問題点は、「新3要件」と言っているんですが、あくまでこれは自民党と公明党の合意をするために作ったものであって、法案として構成要件が曖昧であります。どこまで、何ができるのかが全くはっきりしていない。実は私が心配しているのは、昨日(6月29日)の法制局長官の答弁だと思います。はっきり言って、論理的に整合性が保たれていないんじゃないかと思います。結局は、時の内閣総理大臣が存立危機だと認めれば、それが存立危機だということになって、集団的自衛権ができるということです。

それから重要なのは、戦前において、日本の軍部の独走を止められなかった。今回、この法案において、独走を止められる歯止めがあるのか。確かに国会承認という手続きがありますが、今のように与党が圧倒的多数であれば、普通の法案を通すよりもイージーに通ってします。これでは残念ながら戦前のような暴走を食い止めるような歯止めにはならないんではないか。それを危惧しています。

最後にお話したいのは、一政治家や一官僚の問題では無いということです。国民おひとりおひとりが今の憲法についてどのように考え、どのように民主主義を守っていくか、それが問われている問題だと考えています。

正直申し上げて、このようなことを党内で言い続けるということはなかなか大変なことであります。

私は次の世代はもう財政も経済も金融も社会保障も大変だ、その上に地球の裏側まで行ってもらう。では誰が次の世代のために弁明するというか、彼らの立場を考えてあげることができるのかなと思います。

あくまで申し上げます。私がこれを言い続けているのは、正直申し上げて、自分ためだとかそういうので言っているんじゃなくて、私は10回連続選挙で通って、一回も自民党を出たことがないし、一回も野党の内閣不信任案に同調しなかった60数人のただ一人の生き残りです。私こそが"ミスター自民党"だと思います。

なぜその"ミスター自民党"がそういうことを言うかというと、愛するわが自民党と日本が誤った道に踏み出さないように、なんとしてでも、もう一度ここは考え直して欲しいと、ここに参加させていただきました。以上です。
涙を浮かべ、声を詰まらせた村上議員。 写真一覧

政策の優先順位をどうするか考え直す時期に来ている

村上議員は今後の展望について以下のように認識を示した。

「私の政治の師匠に、丸山眞男さんという政治学者がいました。彼が亡くなる前に『虚妄論争』というのがありました。すなわち戦後の日本のデモクラシーは本物だったのかどうか、という議論です。そのときに丸山先生は、『戦後の日本の民主主義に期待したい』と言って亡くなられました。まさに今、日本の民主主義の真価がこの問題で問われていると考えています。

ですから、賛成や反対でどういう処分を受けるのかとか、そういう次元の問題ではなくて、日本の民主主義を考える場合に、これが賛成できるかできないかということは、自分の良心に従って判断するしかないと、そう考えます。」

「Civil War、アメリカの南北戦争のような…つまり物的な戦いではなく、法律的な戦いというか、民主的な戦いというか、そのときに残念ながら今のままでは、私の愛すべき自民党は南軍になってしまうと。大義名分がなくて負けてしまうと。民主党政権もいい加減な政権でしたが、自民党政権もこういうときにきっちりやらないと、本当の政治不信が起こると思います。

民主主義というのはみんなが常に守り育てなければいけない制度だということです。私が大学生の時、ある政治学者が「民主主義というのはいつでも壊れるものなんだ」と言われました。例えば、第二次世界大戦後のアメリカでマッカーシズムが起きて非常に危険な状態になりました。私は日本もこういう問題をきちっと冷静に判断しなければ、国民のほとんどの人がこの法案に疑問に持つ、それを愛するわが自民党が強行突破しようとすれば、思想的な面で自民党に対する信頼が失われる危険性がある。

そのときに民主党も駄目で、自民党も駄目だということになれば、ファシズムが起こらないようにというのは皆さん考えているけども、そういう危険な状態が起こらないとも限らないと、それを心配しています。

戦前に治安維持法とか国家総動員法という法律が出たんですね。これがはっきりと日本が戦争に向かうきっかけですが、その法案もほとんど議論されないで通ってしまったんですね。この戦前の失敗を繰り返さないためにも、今回のような重要な法案についてはとことん国民の皆さん方と徹底的に議論して、これから日本国憲法にどうやって立ち向かって行くのか、突き詰めて考える良いチャンスだと私は考えています。」

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最後に村上議員は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けての5つの課題を示し、
「あと5年しかないのに、重要な問題がこれだけいっぱいあるわけですから、本来政治がすべきことは財政、金融、経済、なかんずく社会保障の立て直し、外交の立て直し。それが喫緊の課題で、自衛隊の方に行って頂く余裕はない状況だと思います。そういう意味においても、政策の優先順位をどうするか、もう一回考え直す時期に来ているのではないかと考えます。」
と会見を締めくくった。

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