スマホばかり見て成績が下がってしまう子と、成績が下がらない子の違いとは(写真:C-geo/PIXTA)

「子どもがスマホをずっと使っていて勉強しない」「スマホのせいで成績が下がった」「時間を決めたのにやめない」などスマホにまつわる悩みを持つ親御さんは多いのではないでしょうか。一方、「スマホを使っていても成績が上がった」という子もいるようです。石田勝紀氏の新著『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』より抜粋し再構成のうえ、スマホとの上手な付き合い方について石田先生に教えてもらいました。

前回:『スマホルールを破る子に「即没収」がダメな理由

スマホで成績が上がった!?

■事例1:「毎年苦労していた自由研究。スマホを利用したら大幅に評価が上がりました」

毎年、夏休みの自由研究に苦労していました。それが、スマホを持って最初の夏休みに、ネット検索を駆使して取り組んだところ、評価がかなり上がりました。テーマは気候変動。世界の気象の実態や各国の対応はもちろん、論文の書き方や中学生の研究なども調べたようです。気候変動は学校でも教わりますが、スマホで調べることで知識が深まったようです。自分の中学時代とくらべ、今の子の情報収集力の高さに目を見張っています。(子ども/中2女子)

■事例2:「小1からスマホを持ち始め、小6の今は時事問題の解説をするほどに」

スマホは小学校1年生のときから持たせています。戦闘機の動画を見たのがきっかけで、関連サイトで世界の国旗を覚え、尖閣諸島や竹島問題を語るように。選挙があると自分なりの考えで応援する候補者を決め、討論会を見ています。中学生の姉には、定期テストの時事問題についてアドバイスしています。ネット情報をうのみにしがちなところが気になりますが、スマホは興味のある分野を自分でどんどん掘り下げられるツールだと思います。
(子ども/小6男子)

■事例3:「ゲーム&動画を満喫しても成績アップ。スマホの問題点ってなんだろう?」

フィルタリングをはずしてゲームや動画を満喫していたのを知り、次の定期テストで成績が下がったら取り上げると宣言して好きにさせました。テスト後に「ほらね!」と没収するつもりでしたが、予想に反して偏差値も順位もアップ。考えてみれば学校の課題はちゃんとやっているし、いじめやトラブルもない。親子関係も問題なく、スマホを持って悪いことは何も起きていないと気づきました。(子ども/中2男子)

■事例4:趣味の世界で深く自由に遊ぶ。塾へ行かなくても成績はトップクラス

動画サイトで自分のチャンネルを開設し、趣味のスライム作成の様子や商品レビューなどを投稿しています。多くの人に読んでもらえる魅力的なデザインや文章にするにはどうすればいいのか、企画や編集も自然に学んでいます。学校があまり好きではなく塾にも行っていませんが、成績はいいです。家で好きなことに没頭する時間があるから、嫌いな学校に休まず通い、がんばれているのかもしれません。
(子ども/小5女子)

まとめると…

その昔、ヨーロッパで絵本が初めて出現したとき、「こんなものを見せていたら子どもが字を覚えなくなる。頭が悪くなる」といわれたそうです。情操教育に欠かせないとされる絵本ですが、当初は子どもに積極的に見せるべきではないと思われていたのですね。

スマホに対して親御さんが抱く危惧は、これに似ています。スマホを持つと勉強しなくなる。ゲームは脳に悪影響を及ぼす。生活リズムが乱れる。ネットいじめで不登校になるなど、ネガティブな情報ばかり目につくから、心配になるのも無理はありません。

しかし、スマホは子どもに広い世界を見せ、知識を深め、人とのつきあい方を学ばせる道具にもなります。スマホを持ったらいいことがあったとおっしゃる方は少なくないのです。アナログ世代の親御さんは、意識が時代に追いついていない。まずそこをアップデートしていきましょう。

例えば勉強で、わからないことを調べるときにはどうするでしょうか。アナログの世界では、参考書や辞書で調べます。でも自分の持っている本ではわからないこともある。そうすると図書館に行く。学校の先生に聞く。手間がかかります。面倒くさいから途中であきらめちゃうかもしれません。それが、ネットで検索すれば一発でわかる。大変な時間短縮です。

これまで3時間勉強してようやくわかったことが、1時間ぐらいで同じレベルに到達できる。残りの2時間はもっと深く広く調べることができます。余った時間でゲームをしたって、成績は下がらないわけです。

特に高校生ぐらいになると、スマホによる時間短縮が威力を発揮します。学ぶこと、調べることが高度になってくるから、参考書をひっくり返すよりずっと効率的に勉強できます。

私の行きつけのカフェには、よく超進学校の生徒が集まっていますが、全員スマホ片手に何かやっています。ゲームをしているのかと思うと、どうもそうではない。調べながら、仲間同士であれこれ議論しています。翻訳機能を使って和文英訳している子もいる。効率的な勉強のおかげで、余った時間でさらに深掘りし、知識を深めているように見えます。

時間をかけて丁寧に探索していくことで、得られるものもあるでしょう。アナログにはアナログのよさがあります。しかしデジタルにはまた別のよさがある。デジタルがアナログに劣るわけではないのです。いや応なしにデジタル世界で生きていく子どもたちのことは、そういうふうに見てやる必要があると思います。

しかし一方で、スマホと自制的につきあうのは大人でも難しい。放っておいて問題なく使える子はごく少数です。ほとんどの場合、スマホの恩恵を受けるためには、つきあい方に一定のルールが必要です。この本でお話ししたさまざまなノウハウは、すべてそのためのものです。

子どもが安全に気持ちよくスマホを使うためにルールを決め、ときに運用を見直し、トラブルにうろたえずに最善の策を探す。親にできるのは、こういう基本を押さえることだけだと私は思っています。

親のお説教の影響力はほぼゼロ

おもしろいデータをご紹介しましょう。行動遺伝学には、双子研究という手法があります。双子は同じ遺伝子を持っていますが、育つ環境が違うとどういう差が出るのかを調べるものです。攻撃性、アルコール依存傾向、うつ傾向、自尊感情など、さまざまなテーマの研究がなされています。

こうした双子研究を世界中から2000以上集め、統合して分析したデータが、5年ほど前に発表されました。対象となった双子は約1400万組。中には50年近くに及ぶ研究もあります。

例えばこの研究項目の中に、「やる気」というものがあります。同じ遺伝子を持った人間である双子が、それぞれに与えられた環境によって「やる気」がある子に育つのかどうか、あるいは環境は影響がないのかを分析しています。

その結果、やる気がある子かない子か、約半分は遺伝子で決まることがわかりました。もともとそういう子だということです。別の言い方をすれば、遺伝子レベルではやる気がない子も、環境によってやる気を5割増しにできるということでもあります。

その要因は何かといえば、外部環境です。親がどんなにワーワー言っても、やる気は起こりません。友達に負けたくないなど、外からの刺激でやる気になるのです。幼児期は外の世界を知りませんから、家庭環境が大切です。でも幼稚園や学校に行き始めると、外からの影響が大きくなってくる。親の影響はほとんどなくなります。

ただひとつ、親が虐待レベルでネガティブなことをやると、家庭の影響力が跳ね上がります。つまり、子どもの心にトラウマを残すような虐待をしない限り、親は大して影響力を持っていないということです。

たいした影響力がないのなら、親も子もイライラしないで明るく過ごせるほうがいい。スマホへの不安から、子どもの未熟な点ばかりに目を奪われてはいないでしょうか?

欠点の克服からスタートすると伸びない

私は長年、塾で教えていましたが、授業の前に必ずその子の長所を指摘します。

「きみはおしゃべりが上手だから、そこを伸ばすといいよ」なんていうぐあいです。それから本番の授業になりますが、みんないい気分になっているから、すごく集中して授業を聞いてくれます。「自分から勉強するようになりました!」と、親御さんがびっくりして知らせてくれることもありました。

教育の世界でたくさんの子どもを見てきた経験から言えるのは、人は欠点の克服からスタートすると伸びないということです。長所を指摘して伸ばしてやると、欠点を自分で正していくようになります。


スマホを持ってもゲームはなるべくやらないで勉強してね、という態度で接すると、子どもはむしろ逆をいきます。それならゲームをする際のルールを決めて、その枠の中で楽しんでね、としたほうがいい。

勉強のことにふれなくても、やるようになります。なぜなら、勉強はやらなきゃいけないことだと子ども自身がわかっているからです。やろうと思っているのに「勉強は?」と口を出すから反発するのです。

ゲーム課金の怖さや人間関係のこじれを動画で学んでいる、自分から発信することで積極的な性格になった、コロナ禍でも友達とやりとりできるので心が安定しているなど、勉強以外のメリットを感じている方もいます。

現代の子どもはどこかの時点で、必ずスマホとかかわりを持つことになります。ネガティブな面だけでなくポジティブな面にも目を向けて、お子さんがスマホを上手に使いこなせるようにサポートしてあげてください。

(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)