関連画像

写真拡大

静かな環境をもとめて、北海道札幌市のマンション最上階の一室を購入したところ、隣人がバイオリニストだったとして、購入者の50代男性が販売会社に売買代金5666万円の返還などをもとめた訴訟。

東京地裁は5月25日、請求を棄却する判決を言い渡した。男性側は販売業者が説明義務を怠ったと主張していた。

●音で悩まされた生活から抜け出そうとマンション購入を決意

男性は仕事で転居を繰り返す中、隣室の住人の大きな足音や上階の住人による「音」に関するトラブルをたびたび経験し、家族がノイローゼ気味となった。定年が近づき、マンション購入を検討するにあたっては「音のトラブルに巻き込まれる危険のないこと」が重要な条件だったという。

男性は2020年3月、前年までに契約したマンション15階の部屋に入居を始めたが、しばらくして、隣室の住人がバイオリン奏者で、しかも室内で練習などの演奏を予定していることを知った。

購入にあたって、男性は隣室の購入者がどのような人物であるか質問していたが、販売業者からの回答は「一人暮らしの女性で普通の仕事をしている」「(音の心配をしなくてよさそうと考えてもよいかとの質問に)そう考えてもよい」などとして、バイオリン奏者であることや、演奏予定だということの説明がなかったから、消費者契約法に基づき売買契約を取り消せると主張していた。

●判決「聞かれていない質問に回答義務はない」

判決は、男性が購入にあたって、騒音の有無に大きな関心を寄せていたことを考慮しても、「隣室の居住予定者が楽器を演奏するような者か」といった質問がされていないことについて、業者が回答する義務を負っていたとは認められないなどとした。

また、「本件建物の近隣住民との間で生じる騒音をめぐるトラブル」は消契法の「重要事項」に該当しないとする考えを示した。

判決後の記者会見で、原告代理人の?橋和央弁護士は「そこまで購入者側から具体的に聞かなければいけないのか。不当な判決だ」として、控訴を検討するとした。

●騒音がないからといって「実害がない」わけではない(男性)

男性は今もその部屋で暮らしている。「残念な判決で、家族にもまだ言えていない」と話す。

居住後、隣室住人による音のトラブルは特にないという。販売業者側からはそのように「実害がない」とする主張が繰り返されたというが、判決がその点に触れることはなかった。

男性は「問題に巻き込まれないようにさんざん確認した。売り方が問題。私にとって実害はある」と憤った。