職場を去るタイミングとは何を元に推し量ればいいのでしょう。相談者の悩みに安井さんが答えます(写真:freeangle/PIXTA)

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40代半ば、2人の子どもを持ちながら公務員の事務職をしています。公務員になって22年、採用後2年目に統合失調症になりました。最初の10年は無理しない部署でマイペースに仕事を覚えていけましたが、雑用に近い仕事が中心で、「一人前の仕事をできるようにならないと今後仕事を続けていけないよ」と上司に言われていました。

結婚して4年の育休をとった後、復帰。体調の問題で睡眠を削るほどの仕事ができず、自分の使える時間をギリギリまで残業と勉強にあててこなしていましたが、体調を崩して今の部署で2度目の休職をしました。その直前に病気をカミングアウトし、休んでいる間に障害者手帳を取得して職場に合理的配慮を求めましたが、上司からはぐらかされて、「しっかり治すまでは休んで、復帰したらまたがっつり仕事をしてほしい」ようなことを言われました。

任された新しい仕事を自分なりに噛み砕き、皆に説明し、誰もがその進捗をわかるように表などにまとめ、滞っていた仕事を簡単にしてきました。しかし、こうして仕事を簡略化しても、次の年にはさらに多くの新しい仕事を任されます。それ以上は無理ですと伝えているのですが、上司にはできるように見えるようです。

仕事は好きなので、業務量だけ配慮してもらって職場でひっそりと生きていきたいのですが、職場環境が年々厳しくなり、ついていけなくなっています。定年まで今の職場に勤めるのが夢でしたが、私はもう破綻しているのか自分でもよくわかりません。

職場を去るタイミングとは何を元に推し量ればいいのでしょう? 体調や家庭の関係で、辞めたら再就職は厳しそうです。

AA 公務員

転職したら改善する、とは限らない

一般論でいうと、次の具体的なゴールとアクションが見えた段階で転職をする、ということになります。


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転職で自分が今抱えている問題がすべて解決され、物事がよい方向に進むはずだという淡い期待を持ってしまう方が多くいますが、それは違います。あくまでも転職とは手段であり目的ではありませんから、「その転職を通じて自分は何をしたいのか」をキチンと考えるべきなのです。

そこがキチンとしていないと、転職したけれど前職と同じような問題に直面してしまった、ということが起きてしまうのです。単に働く場所を変えただけですから、当然といえば当然です。

仕事において実績を出したり、よい仕事をするための要素を単純化すると、「環境」と「自分」です。環境とは職場だったり、人間関係だったり、仕事の内容そのものだったりします。そして自分とは、ご自身の持っている経験やスキルであり、職業人としてのご自身そのものです。

ご自身の持っている経験やスキルを最大限発揮するためには、発揮できうる環境があって、その環境とご自身が相乗効果を出しうる状態にあることが大切なのです。

改善点を突き詰めたうえで対策を練る

これを別の角度から見ると、仕事がうまくいかないとか、実力を発揮できないと感じている場合は、環境と自分の双方の要素において何がいけないのか、改善点はどこにあるかなどを突き詰めたうえで対策を練るべし、ということです。

物事がうまくいかない場合、自分は変わらず環境だけ変えれば何とかなると考えがちですが、自分に改善点がまったくないケースはほぼありませんから、やはり環境と自分の双方を変える必要があるのです。ですから先ほど申し上げたとおり、自分は変わらず、環境だけ変える、つまり転職だけする、というケースはうまくいかないことが多いのです。

自分が実力を発揮できないのは、なぜか。環境面では何が改善点なのか、自分はどこを変えるべきなのか。そういったことをキチンと考え、そのうえで「では、次はどうしよう」と考えるべきなのです。

そうすると、職場に自分が求める要素のうち優先順位の高い事項(つまり自分にあった環境の明確化)や、自分自身が職業人としてより成長するためには何をするべきか、その優先順位(つまり具体的なアクションプラン)が定まります。

そのうえで初めて、環境面と自分自身の双方において「では、次は何を目的として転職するか」が固まるのです。「何を目的として」、「どこに移るか、またはどんな仕事をするか」を考え、それが明確になった時点で初めて転職というアクションにつなげるべきなのです。

AAさんの場合、自分はこういったことを優先したいという考えはある程度お持ちのようですから、あとはやるべきはご自身の分析です。

22年間の職業人生を通じて自分は何をしてきて、何ができるのか、今後どうしたいのか、職業人としてご自身が成長するうえで何が足りて何が足りないのかなどを考え、そのうえで比較検討すべきです。比較検討というのは、実現するためには、現状の仕事と転職先の仕事とどっちがふさわしいか比べるということです。

それが王道です。

加えて、より大所高所で大切な視点をもう1つ。

いうまでもありませんが、仕事とはご自身の人生のパーツの一部です。
仕事を人生においてどう位置づけるかを考えることも非常に大切です。そもそも「自分はどんな人生を送りたいのか」が一番最初にあるべきで、そのうえで「そのなかで仕事をどう位置づけるのか」があり、よって「ではこういった仕事をしよう」となるのです。

仕事はあくまでも人生の一部でしかない

仕事は人生の一部であるので、自分なりの人生観を持ち、そのなかで仕事の位置づけを探し、そのテーマに合致した仕事を、自分に合った方法で考えることが大切です。

それにより、自分にとって何が大切なのか、優先順位は何かといったことが見えてきますし、何よりも仕事そのものに人生が振り回されることもなくなります。

つねに仕事に悩みを抱えて休日も休まらないといった状態は、仕事に振り回されている状態です。それでは生きる意味があやふやになってしまいますから、そうならないためにも自分なりの人生観や人生のテーマを明確化し、そのうえで仕事をどう位置づけ、どう働くかを考え、そのとおりに行動することが大切なのです。

その結果、「精神的にも身体的にもどこまで頑張るべきか、または頑張らないべきか」など、「何歳まで働く」などといった大きな視点での職業観を持てるようになります。自分自身のことをもっと深く知れるようになれば、おのずと転職を含めたタイミングを考えるうえでの優先順位や優先事項も見えやすくなります。

AAさんにおかれましても、まずはご自身の人生観と職業観を整理し、そのテーマに沿って環境とご自身の双方において今何を優先するべきなのかを考えてみてください。AAさんがよりご自身のための人生を送り、活き活きと仕事に邁進されるであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)