愛知県名古屋市で生まれ、東京をベースに活動しているアーティストSHALA(シャラ)。日本の広告で起用されている白人モデルの多さについて一石を投じたデビューシングル「Random Ass White Girl」が、TikTokをきっかけに世界中で反響を呼んでいます。

今回は、日本の美の基準へ問題提起する彼女へインタビュー。ヨーロッパと日本のミックスで、実は「アジア人であること」をコンプレックスに感じた時期もあったという彼女が、アーティストとして本当に伝えたいこととは――。

ーーSHALAさんのバックグラウンドとこれまでのキャリアを教えてください。

名古屋市生まれで、母親が日本人、父親がポーランド系イギリス人のミックスです。昨年、帰国するまでは8年間ロンドンでプロダンサーと振付師として活動し、過去にはファレル・ウィリアムズ、テイラー・スウィフト、エド・シーラン、デュア・リパの振付アシスタントや、ディズニー映画『クルエラ』のダンサーも務めました。

ほかにもジャックス・ジョーンズの「Breathe ft. Ina Wrolsden」のミュージックビデオに出演したり、最近だとNetflix映画『ザ・バブル』で、振付師のアシスタントとしてイギリスの現場を仕切ったり。これまでは、ダンサーや振付師といったキャリアを中心に歩みながら、家では作曲の勉強をしていました。

昨年日本に帰国したタイミングから、アーティスト活動に注力しています。

ーーダンサーとしてのキャリアからアーティスト活動に切り替えようとしたきっかけはありますか?

あるようでない感じです。イギリスに拠点を移した理由は音楽活動をするためで、最初はガールズグループのメンバーとして活動していました。

そのときの活動では作曲もできず、歌も上手くないし、“ちょっと踊れる子”という感じ。私の目指す「アーティスト=何かを伝える人」とはかけ離れていました。

そこから一旦離れて、ゼロから勉強しようと決めて、独学でギター、ベース、作曲を始めることに。並行してダンスも練習し続けていたので、ありがたいことにプロダンサーとして仕事ができるようになりました。

2019年にあるバックダンサーの仕事の際に、連絡ミスで私抜きでリハーサルが始まっていたことがあって。それを何かの合図のように感じて、「私ってなんでロンドンに来たんだろう」と色々考え始めました。

作曲がしたい、言いたいことを探して歌にしたい、アートで表現したいという想いがあるのに、ずっと同じことの繰り返しをしていたらいつまで経っても現実にはならない。だから、「2019年は頑張って働いて、2020年はダンスの仕事は全部やめよう。貧乏になってもこれを全力でやろう」と思っていた矢先に、パンデミックに見舞われました。

そこからはやるしかないという状況になり、朝から晩まで歌の練習をスタート。切り替えはそのときですかね。

ーー「Random Ass White Girl」が生まれたきっかけを教えてください。

8年前から、たった59秒の曲のためにこれまで経験を重ねてきたんじゃないかなと思っています。

イギリスにいた頃に「文化の盗用」について考えたり、2020年のBLMの時にはたくさん涙を流したりして、世の中がどう構成されているのかを勉強して理解しようとしました。

私は白人のミックスで、特に日本だと“優位”だとされることがたくさんあるんですよね。イギリス、ニュージランドでは「アジア人」として人種差別を受けてきたけれど、日本社会だと「白人」だとちやほやされる−−人種について考える中で、そう感じていました。

「Random Ass White Girl」が生まれたのは、日本に戻ってきた昨年5月、6週間ほど山梨で私のアルバム制作をしていたときのこと。山奥にある家で、毎朝鳥の声が聞こえて、Wifiもないような環境で作業をしていたんです。

あまり外国人がいないところなのに、車で街中に出ると広告には白人のモデルばかりが起用されているなと感じ、その看板を見ながら思わず「Random Ass White Girl」って口に出したんです。言った瞬間、これは曲になると思いました。

私は決して白人が嫌いな訳ではないけれど、「何かがおかしい」ことはわかりました。ジョージ・フロイドさんの事件をきっかけに人種問題に向き合ってきたけれど、日本でもこんなことがあったんだとそのときに気が付いたんです。

それをソングライティングのパートナー・microM に伝えたものの、正直曲を書きたくなかったし、リリースするとも思いませんでした。歌詞を書きながらも、「災いを招いている感じだし、世の中にヘイトを出したくない。でもそれって本音? 自分に嘘をつきたいの?」と自問自答し続けたんです。

私は、アーティストの役目って本当のことをアートで見せることだと思っていて。だからこの「Random Ass White Girl」は、アーティストとしての自分に変化を起こすためにもリリースを決意しました。

書いているときは楽しかったけれど半泣き状態だったし、難しいテーマだからこそあえて“安く聞こえる音”を選んでいます。

ーーSNSではさまざまな反響があったと思いますが、印象的だったコメントなどがあれば教えてください。

日本語のコメントで一番悲しかったのは、「だって当たり前じゃん、白人の人が一番綺麗だから」というコメントが多いこと。もちろん、日本に住んでいる方からの共感もあったけれど、私が曲を書いた理由でもあったので驚きました。

このテーマは国際的な問題とはわかっていたけれど、ここまで世界中から反響があるとは思っていなくて。フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、インド、南米、アメリカまで…いろいろな国の人が「これが私たちの心の中で感じていること」って共感してくれたんです。

コメントを見ながら、正直になることって大切なんだと思いました。自分が正直でいれば、必ずどこかで誰かが「これって私の本音」だと共感してくれるし、みんなも想いをシェアしてくれるんだと学びましたね。

ーーご自身がミックスであることで、これまで人種や美の基準、ルックスに関して言われたことや印象的だった経験はありますか?

小学生のときにイギリスに住んでいたのですが、幼稚園から6年生までいる学校内で私ともう一人の黒人のミックスの男の子以外はみんな白人でした。

そんな環境のなかで“スパイスガールズごっこ”をするときに、「私がポッシュ・スパイス(ヴィクトリア・ベッカム)になりたい!」と言ったら、みんなにダメだと言われたことがありました。理由を聞いたら「だって似てないもん。だからあなたはメイクアップ・アーティストになりなさい」と。白人の先生にも同じことを言われて、私は常にメイクアップアーティストかマネージャーのアシスタント役だったんです。

ほかにも兄と一緒に登校しているときに、見知らぬ人にアジア人をからかう悪口を言われた経験もあり、実はその頃から「アジア人」であることに対してコンプレックスを持ち始めました。

中学と高校は日本の学校に通っていたのですが、初めて会う人には必ず言われるのが「肌が白いね」「目が二重でいいね」「鼻が高いね」ということ。 その言葉をかけられるうちに、さらに自分がアジア人であることが嫌になっていったんです。

その後ロンドンに住んでからは、色々な人種の人に出会って、様々な考え方を教えてもらったり、BLMがあったりするなかで、「私自身がアジア人に対してヘイトがある」とようやく気が付きました。認めるのが恥ずかしいけれど、これが本音だったんです。だから、まずは自分から変えなきゃと思って、考えをリセットするようにしました。

日本語のコメントでも、「言われてみれば確かにそう。考えたこともなかった」と言ってくれる方もいます。決して、私が言っていることが全て正しいわけではなく、まずはあなたに考えてほしい。物事をいろんな目線から見られるといいですよね。

ーー多くの広告がWhite Privilege(白人の特権)だとされる一方で、“匿名性を持たせるため”にあえて白人モデルを起用している日本企業もあると聞きますが、SHALAさんはどう感じますか?

一理あるとは思います。たとえば、白人のモデルを起用することで製品にフォーカスを当てるようにしている日本の広告やメディアもあるので、日本におけるWhite Privilege(ホワイト・プリヴィレッジ:白人であることの特権)は、一言で片付くようなものではないと思うんです。

ただ私が問題だと思うのは、それが結局白人への切望につながってしまっていること。これは白人モデル=美しい“モノ”として扱われているからで、日本だと歯医者、美容師、整形、ジムなど外見を磨くものの広告は、白人モデルばかりですよね。

美の基準にホワイト・プリヴィレッジが関係しているために、他のあらゆる問題につながってしまっている――でもこれについては、私自身ももっと勉強しなきゃいけないなと思っています。

ーーグローバルブランドを中心に、多様で包括的なモデルなどをキャスティングする動きも少しずつ出てきています。この流れに対して、SHALAさんはどう思いますか?

私はイギリスでテレビ、映画業界の裏方として仕事をしてきたのでその経験から感じたのは、グローバルブランドでも、裏で決めているのが白人の人ばかりだと結局何も変わらないということ。

ファッション、ビューティ業界は経験がないのでわからないですが、きっと似ているところもあるだろうし、「広告で黒人モデルを起用しているから、いいブランド」ではないと思うんです。結局逃げ場があったり、システム的な人種差別が残っている場合もあったりしますよね。

ただ、たくさんの人種が注目されるようになったのはいいことだと思います。だからこそ、その人を起用している意味を考えるべき。人種差別していないと思われるためなのか、逃げなのか、世の中を変えようと思っているからなのか…起用するだけで満足するのではなく、人種差別にきちんと向き合うことが大切だと思います。

ーーSHALAさんが考える“本当の美しさ”とは?

自分らしくいることだと思います。誰もがユニークで、この世に自分は一人しかいないんです。

私が考える“美”は、ユニークであること。誰もが、自分の持っている美しさに気づけたらいいなと思います。

ーー現在、ミスジャパンコンテストに参加していると思うのですが、“美しさを競うもの”というイメージがあるミスコンに出ようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

アーティストとして美の基準について探っていくなかで、いろんな人に疑問を持ってもらいたいと思いました。ミスジャパンコンテストという“美のコンテスト”では、私のメッセージがうまく伝わらないかもしれない。でもそういう人や環境にこそ、想いを届けたいんです。

もしかしたらミスジャパンコンテストに受からなかったことで、「私って美しくないんだ」とか自分を責める人がいるかもしれない。でもコンテストには、あなたが美しいか美しくないかを決める権利なんてないんです。

途中審査のなかでも、美の基準についてスピーチができたことには、ミスジャパンコンテストの方にもすごく感謝しています。

あとは地元の名古屋が大好きなので、名古屋人としてミス愛知になりたいですね。

ーー今後の目標を教えてください。

今年中にアルバムを出すことです。他の曲でも、社会が抱えている問題を音楽と映像で表現したくて。残業や過労、SNSによる影響、海外に住むアジア人からの目線…といったテーマの曲を書いているので、早く皆さんに聞いてもらいたいです。

ミュージックプロデューサー、ミュージシャンとしての才能や能力も、世の中に発信していきながら、もっとたくさんの人に自分のことを美しいと思ってもらいたいですね。

SHALA(シャラ)

愛知県名古屋市に生まれ、東京をベースとする、メイドイン「ロンドン」アーティストSHALA。

SHALAの自己への表現は、日本、イングランド、ニュージーランド、中国、数々の行路を得て経験した世界観から表現される、SHALA オリジナルとも言える新しいヴィジョンである。

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