【中国の高さに手を焼きそうだ】
痛手を被った代表的な試合は、2010年2月、東京で開催された東アジア選手権(現E−I選手権)での一戦になる。南アフリカW杯イヤーの初戦として行なわれたこの試合に0−0で引き分けたことを機に、岡田ジャパンは泥沼にはまり込むことになった。
中国は隣国ながら、日本が戦い慣れていないタイプだ。アジアに中国に似たタイプのチームは存在しない。欧州で言うなら北欧系か。2002年、日韓共催W杯を控えたトルシエジャパンが、オスロでノルウェーと対戦し、あっさり0−3で敗れたことがあるが、中国戦には毎度、この試合に似た感覚を抱く。けっしてうまそうに見えない大男を相手に、どう対応すればいいのかわからず、手を焼く感じだ。
1番の原因はやはり中国の選手の体格と身体能力になる。日本選手は想像以上にやりにくそうにしている。体力で圧倒され、怯む瞬間がたびたびある。パニックには至らなくても、慌てたプレーを見せる。
敗れる可能性は低いが、簡単には勝てない。引き分ける可能性、苦戦する可能性は高い。中国選手がもう少ししぶとかったら、淡泊な気質でなかったら、両国の関係はもう少し縮まっているに違いない。
今回はとりわけ、その高さに手を焼きそうな気がする。日本はご承知のように、これまでスタメンを張ってきた両センターバック(CB)、吉田麻也と冨安健洋がケガでリタイア。吉田だけ、あるいは冨安だけならいざしらず、ふたり揃って戦列を離れるのは、国内組だけで臨んだ試合にほぼ限られる。これまで消化したアジア最終予選6試合で、両者がそろい踏みを果たさなかった試合は、初戦のオマーン戦のみ。そのオマーン戦の失点は、冨安の代役として出場した植田直通のミス絡みで生まれたものだった。
今回、先発の座を争うのは、その植田に谷口彰悟、中谷進之介、板倉滉を加えた4人。このうち過去に先発でコンビを組んだことがあるのは谷口と植田だ。昨年6月に行なわれたセルビア戦(神戸)だが、この試合に限られるところに不安を覚える。中国が狙いを定めて突いてくるとすれば当然、コンビネーションに不安を残すCBになる。早い段階で最終ラインにスコン、スコンとハイボールを蹴り込んでくるに違いない。
【CBの間隔が広いほうが勝つ】
CBの1人は谷口になるだろう。谷口と誰かもう1人。そこで目を凝らすべきは、両CBの間隔だ。広く保てるか。それとも狭くなってしまうのか。
慎重になればなるほど、押し込まれれば押し込まれるほど、あるいは混乱すればするほど、その間隔は狭くなる。過去の試合を振り返っても、吉田と冨安が揃って先発した時は広く、そうではない時では狭くなる傾向があった。
吉田、富安が揃って出場しても、相手が強いと狭めになる。それは苦戦の度合いを示すバロメーターと言える。
両CBの間隔が狭くなれば、両サイドバック(SB)は最終ラインに取り込まれやすくなる。マイボールに転じた時、始動はどうしても低くなる。中盤的な動き、両ウイングの攻撃を下支えする動きができなくなる。攻撃は単純になってしまう。相手ボールに転じた時は、プレスがかかりにくくなる。ただし、たとえば守備的MFもできる谷口を4−3−3のアンカーに据える手もある。マイボールに転じた時、谷口を両CBの間に下げ、3−4−3的な態勢をとれば、両SBの位置は自ずと上昇する。
SBが活躍したほうが試合に勝ちやすい。試合を優勢に進めやすいとは、現代サッカーでは常識とされる考え方だが、それとCBの間隔は密接な関係にある。CBの間隔が広いほうが勝つ。極論すればそうなるが、急造コンビで臨む中国戦、体格に勝る相手に空中戦を挑まれそうな中国戦で、好ましくない症状を露呈させたらピンチだ。事件が起きる可能性が生じる。
中国戦をうまく切り抜けることができれば、経験を積んだ両CBは、続くサウジアラビア戦には少なからず余裕を持って臨むことができるだろう。だが万が一、失敗すれば、サウジアラビア戦にも影響が出る。ホームの利が生きなくなる。カギは中国戦にあり、なのだ。