モザイクやぼかしを除去して画像や映像を鮮明化する技術は古くから存在しますが、特に近年はAIなどの発達により急激に進歩しています。悪用されると、プライバシーやセキュリティの保護をやすやすと突破することにもつながるこの技術について、ドイツのセキュリティ企業であるPositive Securityが解説しました。
Recovering redacted information from pixelated videos | Positive Security
https://positive.security/blog/video-depixelation
修正技術は大きく分けて、
モザイク処理(左上)とガウスぼかし(右下)の2種類に分けられます。このうち、
モザイク処理は複数のピクセルを合成し、そのピクセルの色を元となったピクセルの平均値にするもので、ガウスぼかしはガウス関数を用いてピクセル同士の色を溶け合わせることで画像をぼやけさせる技術です。
これらのうち、
モザイク処理は「処理結果の
モザイクパターンになる文字の組み合わせ」を総当たりで調べる方法で除去することが可能です。以下の記事では、Positive Securityが総当たりによる復元技術の例としてあげた
モザイク除去ツール「Depix」を実際に使っている様子が分かります。
簡単に
モザイク処理を無効化できる「Depix」で
モザイクをかけた文字列を突き止めてみた - GIGAZINE
総当たり攻撃は、クレジットカードの番号や文字列がフォントで構成されていることを前提としたものですが、人の顔を合成する人工知能アルゴリズムを使って処理前の画像を再現する技術である「PULSE」を使えば、
モザイク処理により低解像度になった顔写真を高解像度に復元することもできます。
モザイク画像の解像度を64倍にして限りなく高品質の画像を生み出す技術が開発される - GIGAZINE
一方ガウスぼかしは、ぼやけた文字をピクセル化させることで
モザイク処理と同じ過程で突破できるとのこと。その例の1つが、隠れマルコフモデルを使ったテキスト復元に関する2016年の(PDFファイル)研究結果です。隠れモルコフモデルとは、「ある状態の次の展開を前の状態から確率論的に推測する」というもので、もともとは音声認識などで用いられていましたが、前述の研究では文字列に応用することで、テキストのガウスぼかしや
モザイクを高い精度で復元することに成功しました。
ぼかしがかかった画像は、単なる低解像度の画像として解釈することも可能なので、
モザイクと同様にAIで高解像度化させることでも復元できます。
モザイク処理を高精度で突破できるAIとしては、前述の「PULSE」のほかにミュンヘン工科大学が発表した「TecoGAN」が知られています。
映像の場合、画像とは違って
モザイクが動くので、そのことを逆手に取って
モザイクを除去する手法もあります。その原理を簡単に表した図が以下。「
モザイクがかかった文字を映した映像が少し右にずれただけなのに、グレーのピクセルが左に移動した」という場合、元のピクセルの左端に文字があるということが推測できます。
Positive Securityは実際に、手ぶれがかかった
モザイクの映像をキャプチャーして各フレームの画像を重ね合わせることで、「DE3000100000001272」という数字がかなりはっきりと視認できるところまで文字を復元させることができました。この方法は、映像を高精度化させるTopaz Video Enhance AIやVideoEnhancer、MFSRといった既存の
モザイク除去ツールよりも効果的に
モザイクを除去できたとのことです。
こうした知見から、Positive Securityは「クリエイターや報道機関は、コンテンツの中に修正済みの機密情報を入れる際のリスクをよく認識し、十分な粗さになるように
モザイクやぼかしをかけるべきです。最もいい方法は、不透明な単色で塗りつぶしてしまうことでしょう」とコメントしました。