200万円以下の「ライズ」から800万円の「ランドクルーザー」まで、トヨタは10のSUVをラインナップする(写真:トヨタ自動車

トヨタのお家芸は、「フルラインナップ」だ。世界ナンバー1の販売台数を、フォルクスワーゲン・グループと張り合う超巨大自動車メーカーならではのパワーで「小から大」「右から左」まで、まるで絨毯爆撃をするように、市場のすべてのニーズに応える多彩なクルマをフルフルで用意するのだ。


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ライバルとなるフォルクスワーゲンは、傘下にアウディやセアト、シュコダ、ポルシェといった数多くのブランドを擁しており、それらの合計でトヨタと戦う。しかし、トヨタは、トヨタとレクサス、それにダイハツといった、ごくわずかなブランド数で対等に戦っている。

特にトヨタブランドの車種数はケタ違いに多い。トヨタの日本のホームページを見れば、現時点(2022年1月18日)で52車種ものラインナップが掲載されているのだ。

昭和からのお家芸:フルラインナップ

こうしたフルラインナップ戦略は、今に始まったことではない。昭和から平成にかけては、4つのチャネル(販売網)を用意して、それぞれに異なる車種を供給していた。

有名なのは「マーク?」「チェイサー」「クレスタ」の3兄弟だろう。ベースメカニズムは同じながら、外観をそれぞれ変えることで異なるユーザー層をターゲットとして、3つのモデルに作り分けていた。


「カローラ・レビン」と「スプリンター・トレノ(写真)」も兄弟車の1つだった(写真:トヨタ自動車)

さらに、技術開発の点でもトヨタの方針は、フルラインナップだ。エンジンもやれば、HEV(ハイブリッド)もPHEV(プラグインハイブリッド)もBEV(電気自動車)もFCV(燃料電池車)もやる。

未来にお客様がどのような望みを抱こうとも、そのすべてに対応できるように準備するというのがトヨタ流だ。だからこそ、昨年暮れに行った「バッテリーEV戦略の説明会」でも、軽自動車からセダン、SUV、スポーツカー、商用車まで、フルラインナップで16台ものBEVプロトタイプを並べたのだ。


2021年12月14日「バッテリーEV戦略に関する説明会」で発表された16台のプロトタイプ(写真:トヨタ自動車)

そういうトヨタのフルラインナップ戦略は、昨今のSUVトレンドの対応にも同じ対応が見て取れる。

現在、国内で販売される、トヨタのSUVは下から上に「ライズ」「ヤリスクロス」「カローラクロス」「C-HR」「RAV4」「RAV4PHV」「ハリアー」「ハイラックス」「ランドクルーザープラド」「ランドクルーザー」と10車種を数える。

ライバルのホンダは「ヴェゼル」「CR-V」の2車種のみ、日産は「エクストレイル」「キックス」「アリア」の3車種、マツダがやや多くて「CX-3」「CX-30」「CX-5」「CX-8」「MX-30」「MX-30 EV」の6車種、スバルは「XV」「フォレスター」の2車種。

三菱自動車は「RVR」「エクリプスクロス」「エクリプスクロスPHEV」「アウトランダーPHV」の4車種、スズキが「ジムニーシエラ」、ダイハツが「ロッキー」のみ。こうして名前を上げれば、トヨタの10車種は、国内自動車メーカーとして断トツの数字だ。

しかも、トヨタの10車種のSUVは、シティ派とアウトドア派の両方がバランスよく並んでいる。表にすると以下のようだ。


あえて足りないところを言えば、大型でシティ派が存在しないこと。ただし、ここにレクサスを使えば、新型の「LX」が当てはまる。もしも、どうしてもトヨタブランドで必要とあれば、北米で販売されている「ハイランダー」などを持ってくれば事足りる。そうした余力があるのも、トヨタらしさと言えるだろう。

つまり、SUVに関しても、小から大までシティ派とアウトドア派というジャンルをすべて埋めるだけの、フルラインナップで揃えているのがトヨタなのだ。

では、そんなトヨタのSUVの売れ行きは、どうなっているのだろうか。

新顔「ヤリスクロス」は売れたのか?

2021年1〜12月の販売ランキング(自販連調べ)を見ると、1位は「ヤリス(ヤリスクロスを含む)」(21万2927台)、3位「カローラ(カローラクロスを含む)」(11万0865台)、6位「ライズ」(8万1880台)、7位「ハリアー」(7万4575台)と10位までに、SUVとSUVを含む4モデルがランクインしている。

ちなみにヤリスとカローラは、それぞれ「ヤリスクロス」と「カローラクロス」というSUVを数に含んでいる。その内訳をトヨタに尋ねてみれば、2021年に販売されたヤリスクロスは約10万4000台、カローラクロスは約1万7780台だという。

1年を通じて販売されたヤリスクロスが大きな数字を残したのに対して、9月中旬に発売開始となったカローラクロスが販売されたのは3か月半。月平均で見れば5000台で、年間換算では6万台規模だ。

半導体不足などの影響があったかもしれないが、「カローラのSUV」と考えれば、もう少し大きな数でもよかったはず。まずまずと言えるか、微妙な線ではないだろうか。

ランキングをさらに見ていくと、15位に「RAV4(RAV4 PHVを含む)」(4万9594台)、21位に「ランドクルーザーW(ワゴン)」(3万3481台)、33位に「C-HR」(1万8096台)がランクインする。

トヨタに問い合わせたところ、「ランドクルーザーW(ワゴン)」の内訳は「ランドクルーザー(300系)」が約1540台、「ランドクルーザープラド」が約3万0990台とのことだった。「ハイラックス」はタイ生産の輸入車のためランキングには登場しないが、年間販売台数は約9960台だという。

これらトヨタのSUVを、販売台数の順に並べると以下となる。

(1)ヤリスクロス:約10万4000台
(2)ライズ:8万1880台
(3)ハリアー:7万4575台
(4)RAV4(RAV4 PHVを含む):4万9594台
(5)ランドクルーザープラド:約3万0990台
(6)C-HR:1万8096台
(7)カローラクロス:約1万7780台
(8)ハイラックス:約9960台
(9)ランドクルーザー(300系):約1540台

こうして売れた数を並べてみれば、ヤリスクロスと「ライズ、そしてハリアーの販売が抜きんでていることがわかる。

ちなみに、ライバルとなる他社ブランドSUVの最上位は14位のホンダ・ヴェゼル(5万2669台)だった。


ホンダ「ヴェゼル」は「カローラクロス」と同クラスとなるライバル車だ(写真:本田技研工業)

ヴェゼルは2021年4月登場のため、約9カ月間しか販売されていないだけ不利となるが、もしも通年販売されたとしても、ヤリスクロスやライズには届かなかったのではないだろうか。それだけ、ヤリスクロスとライズの勢いは強いといえる。

マイペースに「計画どおり」

そして重要なのは、それらのモデルの登場した時期だ。ライズは2019年11月、ヤリスクロスのデビューは2020年9月。ちなみに3位のハリアーは2020年6月。

つまり、どれも2019年暮れから2020年にかけて発売開始となった新型モデルが、順当にランキング上位にきたことになる。トヨタとしては「まさに計画通り」という結果なのではないだろうか。

コロナ禍や半導体不足という不測の事態の中、粛々と新型車を予定通りにリリースし、そして予定通りに販売する。このマイペースな姿勢こそが、トヨタの底力だ。とはいえ、カローラクロスの月販5000台ペースというのは、悪くはないが素晴らしいというほどではない。2022年にどのように巻き返すのかに注目したい。