Jリーグも導入が進められているトラッキングシステム。最先端のシステムとはいかなるものか?

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 現在、デジタル技術の進歩に加速度を与えているのがAI(人工知能)だ。そのAIがサッカーの現場にも進出してきている。トラッキングシステムが世界中のサッカーの現場に取り入れられて、今やすっかり定着しているが、この分野において新たにAI技術を駆使したシステムが登場した。

 その中で今回、日本にやってきたのはイスラエル企業が開発した「Coach160」だ。
同じトラッキングシステムといえど、革新的ともいえる違いを多く含むCoach160、その知られざる全貌を明らかにする。

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 現在の世界のサッカーシーンにおいて、トラッキングシステムの導入はもはや当たり前のものになった。ワールドカップといった主要国際大会や欧州リーグにおいても、試合に出場した選手の走行距離やスプリント数がゲーム中に表示されるように。JリーグでもJ1の試合では毎節全試合のトラッキングデータが集計され、節ごとのスプリント数のランキングなどが公表されるようになった。サッカー関係者のみならず、サッカーファンにとっても、これまでにはなかった「数字で見る奥深さ」が加わった。

 世界中で導入されているトラッキングシステム――その主流はGPS技術を活用したものだ。試合時に選手にGPSを装着してもらうことで、個々の動きを把握する。GPS装置がプレーに支障のない形に進化したからこそできるようになった。

 しかし、デジタル技術の進歩は速い。トラッキングシステムひとつとっても、次々と新たな技術が登場している。今の最先端はGPSでなくAIを活用したトラッキングシステムだ。
 
 2021年末の時点で、「FIFA BASIC」「FIFA QUOLITY」と呼ばれる、FIFA(国際サッカー連盟)が認証したトラッキングシステムは世界で38ある。そのうち、Wearable System(装着式=GPS)によるものが34あるが、残りの4つがOptical System(光学式=AI)によるものだ。

 その4つのOptical Systemのなかで、イスラエル企業のTRACK160が開発した「Coach160」というトラッキングシステムが、株式会社共同通信デジタルの手により日本に上陸した。このCoach160、AIによるシステムというのが斬新だが、イスラエルの軍事技術を応用して開発されているというのも興味深い。

 2016年ローンチという、FIFA認証のトラッキングシステムの中でも新進気鋭の部類に入るCoach160だが、これまでのGPSタイプと何が違うのか。はっきりしたポイントは3つある。

 第1に費用を格段に抑えられること。GPSタイプの場合、専用カメラに加え選手数ぶんのGPS装置が必要になる。さらに毎回、取得したデータを集計するのに専門のスタッフも必要になる。これがCoach160だと、専用カメラもあるものの、市販の4Kカメラを3台用いれば代用が可能だ。もちろんGPS装置は必要なく、データ集計もAIがやってくれるため専門スタッフは必要ない。このような設備費、人件費が大幅に削減されるうえ、契約は年間ライセンス契約なので、契約中はいくらでもデータが取り放題。費用対効果という点で革命的という点は、実際に現場で使用する者からすると最大の魅力だろう。

 第2に、データ集計が非常に簡単で利便性も高いということ。4Kカメラ3台でフィールド全体を網羅して、全選手の動きを映像で収める。あとは設定した条件に応じてAIが自動的に集計してくれる。1試合ぶんの全選手の集計時間はおおよそ8時間。試合が終わった後の夜に取得したいデータの条件を設定しておけば、翌日朝にはデータがまとまっていることになる。このデータ取得、たとえばスプリントひとつ計測するにも、距離やスピードまで自在に自分で設定できるのが嬉しい。さらにCoach160ならソフトをダウンロードさえすればスタッフのPC間で取得データを共有することも可能だ。