The Vergeが記事の冒頭で記しているのが、ノースカロライナ州ダーラムのサウスポイントにあるAppleストアに勤務していたというマーク・カリバス氏の事例です。カリバス氏は2013年に入社した時点ではマラソンと糖質制限ダイエットをたしなむという健康的な人物でしたが、ある日店舗側に配属となった新しいマネージャーに目を付けられたことが転機となりました。このマネージャーは目をかけている部下には昇進や都合のいい勤務を割り当てる一方、そうでない部下については上にバレない形で嫌がらせを行うという人物で、このマネージャーに数年間にわたってひどい仕打ちを受けたというカリバス氏はうつ病で休職。そして2021年9月7日に自殺しました。
The Vergeが報じているのは、Appleの末端で働くカスタマーサービス従業員やAppleストア従業員の悲惨な労働環境に関する問題です。カリバス氏の同僚複数人が問題のマネージャーについてAppleに複数回苦情を提出しましたが、Appleは何の手も打たず、結局マネージャーに関する環境は何一つ変わることはなかったとのこと。マネージャーにまつわる問題は全体のごく一部でしかなく、給料の未払いや処理できないほどの大量の仕事などにみまわれた際にも、従業員が問題を報告できるまともな窓口がAppleには存在しないとThe Vergeは指摘します。
The Vergeによると、このようなカスタマーサービス職員を管理するために、Appleは膨大な数のプログラムと指標を用いて労働者の一挙手一投足を監視しているとのこと。例えば、労働者がトイレに行くなどしてコンピューターから5分以上離れていると、マネージャーから「なぜ働いていないのか」と尋ねる通知が届くことがあるそう。顧客満足度スコアも実質的な満足度から算出されるわけではなく、カスタマーサービスにかかった時間を指す「平均処理時間」という数字に左右されているとのこと。「良い時間」とされる数字は電話なら15分、チャットなら2分とされていますが、特にチャットの場合は繁忙期にはカスタマーサービスを3人分同時に行わなければならない場合もあり、「Apple IDの問題からiCouldの問題を同時並行で3人捌きつつ1人2分で終わらせる」という実現不可能なタスクを要求されるそうです。