朝起きた時、どんなかっこうをしていますか。「バンザイした形」になっていたら、気持ちいい睡眠ができている、というわけではないようです。快眠セラピストで睡眠環境プランナーの三橋美穂さんに、コロナ禍における睡眠事情や快眠のコツについて聞きました。

デスクワークする人が気をつけたい“バンザイ寝”

三橋さんによると、在宅勤務によってつねに同じ姿勢で仕事をしていることで、肩や首、腰が痛くなり、その痛みを引きずったまま就寝する人が増えているそう。その結果、寝つきが悪く、睡眠の質も低下しているといいます。

 

「特に今増えているのは『朝起きたらバンザイをしている』状態。これは肩が凝っている証拠です。人間は筋肉が緩んでリラックスしている状態でないと快眠できません。肩が凝る人は寝苦しいので、肩周りを緩めてリラックスしようと肩を上げます。同じように腰が痛い人は仰向けで眠れないので、横を向いて丸まった姿勢になりがちです」

 

バンザイ寝に自覚がある人は、就寝前に肩を回すストレッチや湿布薬を貼る、高すぎない枕を使うなどで痛みの緩和や肩こり予防を行うことが大事。凝りや痛みがなくなると、筋肉が緩んで神経活動が低下しリラックスするので入眠しやすくなります。

寝つきがいいのは“気絶状態”!?

実は、最適な睡眠時間は人それぞれ異なります。だいたい6~8時間と幅があるので、自分にピッタリな睡眠時間を見つけることが重要。三橋さんによると、1週間ごとに睡眠時間(寝床にいる時間)を変えて、日中の体調や気分ではかることがおすすめだそう。

 

「疲れが取れない原因のほとんどは、睡眠不足です。一般的に睡眠時間は、働き世代は7~8時間必要と言われており、思っているよりも長く眠らないと疲れがとれない人も。とくに普段の睡眠時間が6時間未満の人は一度とことん寝てみると、いかに翌日に疲れが残らないかが実感できると思います」

 

また、寝つきが早すぎるのも危険だそうです。よく「私はすぐに眠れます」と話す人がいますが、あまりにも早いのは気絶しているようなもの。これは睡眠負債がかなり溜まっているサイン。だいたい10分から20分かかるのが普通で、30分以上かかると寝つきが悪い目安になります。

約3割の人がコロナ禍で睡眠の質が低下

ニチバン株式会社が今年8月に20~50代の男女500人を対象に行った調査結果によると、「コロナ禍で睡眠の質が下がった」と回答した人は約3割。

 

睡眠の質の悩みがある人は27.6%で、その原因については「ストレスや不安(68.1%)」、「運動不足(52.2%)」、「生活リズムの乱れ(48.6%)」という回答結果で、コロナ禍による精神的なストレスや生活の変化が睡眠の質に大きく影響を及ぼしていると考えられます。

 

「外出自粛や在宅勤務が睡眠の質に影響を与える理由は、たくさんあります。まずは日光浴不足。太陽の光を浴びると睡眠ホルモンであるメラトニンが生成されますが、1日中家にいるとそのメラトニンも十分に生成されません。自粛中だとしても1日に30分から1時間はベランダなどで日光浴しましょう」

 

出勤や外出がなくなったことでオンとオフのメリハリがなくなり、体内時計が狂いがちになっていることも理由の一つ。体内時計が狂うと体が常に時差ボケ状態になるので、うまく寝つくことができなくなります。

寝床スマホによる“リベンジ夜更かし”に注意

またコロナ禍の睡眠事情で三橋さんが注意を促すのは、“リベンジ夜更かし”です。これは子育てや仕事で忙しい人ほどよく見られるもので、自分の時間を取り戻そうと夜更かししてしまうこと。夜更かしすると必然的に睡眠時間が削られ、脳機能が正常に働かず、結果的に自分らしさを失うそうです。

 

「リベンジ夜更かしの行動の中でも昨今多いのが、スマホを見ながらいつの間にか寝落ちしている“寝床スマホ”でしょう。スマホやPCなどの夜間の光曝露は、体が夜型になるので睡眠の質は確実に低下します。リベンジ夜更かしでリベンジはできないことを、知っておいてください」

 

子育て世代は子どもの寝かしつけと同時に親も早く寝て、翌朝、早く起きて録画したテレビの視聴ややりたい家事をするサイクルを三橋さんは勧めます。

「また、運動不足や活動量低下による血行不良や体の痛みなども、コロナ禍で睡眠の質を低下させる要因なので、気をつけたいですね」

 

三橋さんのもとに寄せられるのが「1日4~5時間睡眠で済むショートスリーパーになりたい」という相談です。コロナ禍によって通勤時間がなくなった人は、睡眠時間が長くなる傾向がみられるものの、まだまだショートスリーパーに憧れる人は多いそう。

 

「ショートスリーパーは遺伝子レベルで決まっています。ショートスリーパーではない人が睡眠時間を削ることはデメリットでしかないので、いかに睡眠時間を確保するかを考えるほうが得策。日中の行動の取捨選択や就寝前の行動の見直しを心がけてください」

  

PROFILE 三橋美穂さん

快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースなども手がける。睡眠に関する著書執筆のほか、テレビ番組にも出演多数。

取材・文/秋山悠紀
調査概要/ニチバン株式会社「自粛痛と睡眠に関する調査」 調査方法:インターネット調査、調査期間:2021年8月、調査対象:20代~60代の男女500名