飲食店向けのキリン新ビールサーバー「TAPPY」がコロナ禍の救世主に。ペットボトルから注ぐシステムはなぜ生まれた?

おいしい・かんたん・おトクな次世代サーバー

コロナ禍で飲食店の営業が不安定になる中、お店でのお酒の“管理”や“保存”が難しくなっています。たとえば、多くの人が愛する生ビールは、「生樽」とよばれるステンレス製の容器に7Lや15Lといった大容量で保存され、ビールサーバーにつないで注がれます。しかし、コロナ禍でお酒の提供量が減り、鮮度が高いうちに生樽のビールを消費しきれないケースも増えているのです。

そんな中、キリンビールが飲食店向けに展開している新サーバー「TAPPY(タッピー)」が注目されています。TAPPYは「キリン一番搾り生ビール(以下、一番搾り)」などを3Lのペットボトル容器に詰め、サーバーから注ぐもの。生樽より容量が少なく、鮮度の高いうちに使い切りやすいというメリットがあります。
TAPPYの開発がスタートしたのは「コロナ前」から。もともと、飲食店が直面していたビールサーバーの課題解決を目指したといいます。

今回、TAPPYのマーケティングを担当するキリンビールの立川裕康(たちかわ・ひろやす)さんと、実際にTAPPYを導入した石川県の飲食店、「CASA MIA(カーサミア)」の能登谷季典(のとや・ひでのり)さんにインタビュー。どんな課題解決が行われたのか、まずは立川さんに開発秘話を聞きました。
※撮影・取材は新型コロナウイルス感染症予防に配慮したうえで実施しました。

より鮮度が高い「一番搾り」を提供できる理由は“3L”にある

TAPPYは「コロナ前」から開発が始まったと聞きました。どんな目的で、いつ頃から開発がスタートしたのですか?
まずは、「よりおいしい『一番搾り』を提供する」ということを最大の目的として開発がスタートしました。併せて、これまでビールサーバーが抱えていたさまざまな課題を解決しようとつくられました。

たとえば、料飲店が毎日行うサーバー洗浄の手間やその際に出るビールのロス、そして生樽の回収などです。実際に開発が始まったのは、もう3、4年前のことですね。
キリンビール株式会社・マーケティング本部の立川裕康さん
「よりおいしい『一番搾り』を…」ということですが、TAPPYは一般的な生樽ではなく、3Lペットボトルにビールを詰めていますよね。それにより、なぜおいしさが変わるんですか?
まずは鮮度の違いですよね。ほかの食材と同じで、生ビールも栓を開けたらなるべく早く飲むのが一番。ただし生樽の「一番搾り」は7Lや15Lと容量が多く、場合によっては鮮度の高いうちに消費しきれないケースも出てきます。

特に今(取材時は7月)は、コロナ禍でお酒の提供が満足にできませんよね。TAPPYは3L容器なので、鮮度のよいうちに消費しやすいんです。

それと、開栓後の品質劣化も遅いのがTAPPYの特徴です。生樽の賞味期限は「開栓から3日」といわれているのですが、TAPPYは「開栓から1週間」。なぜ長いのかというと、TAPPYはペットボトルをサーバー内にセットするので、開栓後も直接冷やし続けられるんです。空気に触れる箇所も少なく、品質を保ちやすいんですね。
なるほど。容器が変わっただけでなく、サーバーの構造も今までと違うんですね。
そうですね。構造といえば、もうひとつ大きな違いがあって。サーバー内のホースが大幅に短くなりました。生樽の場合は、樽からサーバーまで長いホースでつながっていて、毎日「水通し」という洗浄が必要です。丁寧に洗わないとおいしさにも関わってしまう。料飲店の方にとって、毎日の洗浄は大きな負担でした。

TAPPYはその負担を減らそうと簡単な洗浄で済む仕組みに。ホースが短いので水通しは不要で、タップ部分(注ぎ口)の水洗いだけで済むんです。どのお店でも、おいしいビールを“簡単に”お出しできるように。そんな思いから、こういった構造になりました。
飲食店のアルバイトをしたことがありますが、確かに洗浄は大変でした(笑)。
そうですよね。洗浄だけでなく、生樽は重くて交換も大変でした。女性やご高齢の方は特に大変です。今回、3Lのペットボトルになったので、相当軽くなっています。

飲食業界は人手不足が深刻ですし、私自身、長くお店を続けてこられたご高齢の方が、生樽の重さに苦労されている姿を目の当たりにしてきて。少しでも解消できればと思っていました。
3Lのペットボトルなら軽くて持ち運びしやすい

TAPPYにより、年間16万円ほどのコスト削減ができる可能性も

冒頭で「ビールのロスもなくすようにした」とお話されていましたが、これはどういうことですか?
そこも大事な点です。従来のサーバーでは、洗浄時にホース内のビールを一度廃棄せざるを得ませんでした。1回1回はわずかな量でも、積み重ねると大きな無駄になる。フードロスの観点でもマイナスですよね。TAPPYは、そのロスがほぼゼロになります。
ホースが短くなり洗浄も必要ないから、ということですね。
はい。実は、これによって削減できる年間のコストを平均的な店舗で考えると、人件費と合わせて16万円ほど(※ビール単価550円/L、年間1,000L販売、時給1,000円の場合を想定)になるのです。
開発に3、4年もかかっているとのことで、苦労やこだわった点もあるのでは?
一見シンプルな構造ですが、本当に試行錯誤を繰り返してきたんです。特にこだわったのは、タップの部分ですね。誰が注いでもおいしい生ビールを提供できるよう、ここは力を入れました。

タップの先から透明のチューブが出ているのですが、そのチューブの先を若干潰すことで、ビールの泡立ちが生まれる仕掛けになっています。

ただ、この「潰す」というのが難しくて。潰しすぎて泡ばかりになってはダメですし、泡が少なくてもいけない。ちょうどよい量の泡、しかもクリーミーできめ細かい泡にしたい。そのためにどんな形がよいのか、テストをし続けましたね。
きめ細やかな泡を作るため、何度も改良を重ねたこだわりのタップ部分
この注ぎ口に、たくさんの苦労が詰まっているんですね。
そうですね(笑)。TAPPYの試作品ができたあと、まずは石川県と宮崎県の料飲店で先行設置させていただいて。実際の声を聞きながら、何度もマイナーチェンジを重ねました。その後、2020年11月から全国6県(愛知県・石川県・富山県・福井県・福岡県・宮崎県)でテスト展開。そうして2021年4月から全国に展開されています。

TAPPYで扱うラインアップも「一番搾り」だけでなく「キリンサワー」と「キリン陸ハイボール」の3Lペットボトルも追加し、現在(取材時は7月)は全国に2000台ほど導入されていますね。

食事メインのお店でも、TAPPYでおいしい生ビールを

導入する中で、お店の方からの反応はどうでしたか?
よく覚えているのは、テスト導入のとき、ある石川県の居酒屋さんから聞いた言葉です。そのお店でTAPPYを導入したあと、急にお客さまから「今日のビール、おいしいね」と声をかけられたようで。どう変わったかお客さまに聞いてみると「細かくはわからないけど、とにかく味が違う」と。そして「とりあえずビールおかわり!」と注文を受けたようです(笑)。

生ビールって1杯目に頼む方が多いですし、最初のひと口がイマイチだと落ち込みますよね。そのときの食事すべてに影響してしまうような。だからこそ、ビールがおいしければ食事もお酒も進んで、お店も売り上げアップにつながる。

その意味でも、こういった反響は自信になりましたね。最初はペットボトルのビールサーバーと聞いてびっくりされていた方も多かったのですが、使ううちに気に入っていただいて。
確かに、ビールをペットボトルで保存するのはイメージしづらいですよね。
通常のペットボトルは酸素を通しやすいので、気抜けや劣化が起きやすいんです。ステンレス製の樽はその点が優れていて、開封しなければ長持ちする。そこで、今回のTAPPYでは特殊なペットボトルを開発して、酸素が通りにくく保存がきくようにしました。これも時間をかけた点です。

キリンでは、さまざまなクラフトビールを楽しめる料飲店向けディスペンサー「Tap Marché(タップ・マルシェ)」も展開していますが、どちらも同じ特殊な3Lペットボトルを使っています。
サーバーだけでなく、ビール用のペットボトルも新たに開発していたんですね。そんな苦労を経て生まれたTAPPYですが、どんなお店に導入していただきたいですか?
いろいろな使い方があると思いますが、特にオススメしたいのは規模の小さな料飲店ですね。もしくは、ラーメン屋さんやお寿司屋さんなど、お酒の提供がメインではないけど、生ビールを置きたいお店には合うと思います。

生樽だと使い切るまでに時間がかかって劣化してしまう、でも「一番搾り」は外せない。そんなお店にピッタリではないでしょうか。

さらに、サーバー自体もスリムになって、幅は従来のサーバーから4分の3ほどになりました。パントリー(収納スペース)が狭いお店でも導入しやすいと思います。
小さなお店でもスペースを取らないスリムさも魅力
コロナ禍で飲食店は厳しい状況が続いています。最後に、飲食店の方に向けてメッセージをお願いします。
本当に今は厳しい状況ですし、お店だけでなく酒屋さんとの取り引きも減っています。苦しい中ではありますが、外食文化は日本が誇るもの。少しでも多くのお店をサポートできればと思いますし、TAPPYもそのひとつになると思っています。

導入費用や既存サーバーの撤去費用もかかりません。お酒の提供が今まで通りにいかない中で、私たちなりの支援ができればうれしいです。

最後に、TAPPYというネーミングはビールサーバーの「タップ」と「HAPPY」をかけたものです。外食産業に関わるすべての人がハッピーになることを願い名づけました。

サーバーに愛称をつけること自体、異例のことですが、お店や業界の方が愛着を持って使っていただければと思い、名前をつけたんです。こんな状況でも、TAPPYがみなさまに愛され、そしてみなさまをHAPPYにするように、と願っています。

金沢の居酒屋オーナーに聞いた、TAPPYを導入して感じたこと

長い開発期間を経て作られたTAPPY。実際に導入したお店の方はどんな印象を抱いているのでしょうか? そこで、石川県金沢市の居酒屋「CASA MIA」(カーサミア)のオーナーを務める能登谷季典さんにお話を聞きました。
※取材は新型コロナウイルス感染症予防に配慮したうえでオンラインにて実施しました。
「CASA MIA」のオーナー・能登谷季典さん
「CASA MIA」は、金沢の繁華街から少し離れた幸町にありますね。
30席ほどのこぢんまりとした洋風居酒屋で、お客さまはご近所の方が多いです。妻と2人で営業して、もう20年ほどになりますね。昔、親御さんと一緒に来たお子さまが、成人になって顔を出してくれることも多くて。アットホームな雰囲気のお店です。
地元の方に愛され、とても素敵ですね。TAPPYを導入されたのは、どんな経緯だったのでしょう?
導入したのは2019年の12月頃です。キリンの方がビールサーバーのメンテナンスにいらしたときにTAPPYを紹介されて。このときはまだ、石川県と宮崎県のみの先行設置ということでした。

そこで話を聞いて、すぐに導入しようと決めたんです。というのも、うちはキリンの「Tap Marché(タップ・マルシェ)」を先に導入していて、かなり近い仕組みなんですよね。鮮度のよさや交換がラクになること、洗浄の手間が省けることなど「Tap Marché」でメリットを感じていたので、すぐに採用して。
もともと、生ビールの鮮度や、交換や洗浄の手間には悩んでいたんですか?
一番気にしていたのは、やっぱり鮮度ですね。昔は15Lの生樽を使っていて、開栓後の賞味期限内に使い切ることが難しくて。途中で7Lの生樽に変えたんですが、うちのような小さな店だと、それでも時間がかかるんですよね。特に冬場は生ビールの注文が減るので。どうしても鮮度が落ちてしまうんです。
金沢という場所的に、ビールだけでなく日本酒も人気がありそうですしね。
日本酒も出ますし、うちはワイン好きのお客さまも多いですから。とはいえ、お店としてはビールにもこだわっていて、いろいろなアレンジビールを出しているんです。

しそジュースで割ったビールや、蜂蜜に漬けたレモンを混ぜたビール、グレープフルーツジュースとビールを割ったものなど、妻のアイデアでいろいろ揃えているんですよ。それだけに、ビールの鮮度はできるだけよくしたくて。

ビールは売り上げが上がりやすいからこそ、鮮度がよい状態で出したい

TAPPYにしてから、鮮度が変わったという実感は?
導入したとき、「ビールの味が変わった」というお客さまの声がけっこうありましたね。僕も根っからのビール党ですが、飲んでみるとわかりますよ。スッキリと喉を通るというか、喉越しがよくなった感じがあります。

僕の楽しみは仕事終わりにお店で生ビールを飲むことなんですが(笑)、生樽のときは「Tap Marché」のビールと比べて鮮度の面で少し劣っている気がして。TAPPYにしてからその感覚がなくなりましたね。妻も最近は、いっそうビールのアレンジを研究していますよ。
鮮度の違いはお客さまも気づくほど
今後は、ビールを飲むお客さまがさらに増えていくかもしれませんね。
そうなるといいですね。ビールは回転がよいので、売り上げも上がりやすいんです。何より僕自身がビール大好きなので、作る料理もビールに合うものが多くて。

うちで人気があるのはボルケッタやピザといったメニューですが、やっぱりビールと一緒に頼む方が多いです。
お店の看板料理はビールとの相性もバッチリ
TAPPYは洗浄や交換の手間が少なくなることも特徴ですが、その点はどう感じましたか?
これは大きなメリットですよね。ビールサーバーの管理はすべて妻が担当しているんですが、毎日の水通しがなくなって本当にラクになったと話していますよ。

ちなみに、水通しのときにはだいたいジョッキ1杯分ほどビールのロスが出ていて。それをいつも僕が飲んでいたんです(笑)。そのロスもTAPPYにしてからなくなりましたね。毎日1杯分のコストが浮いたと思うと大きいですよ。そのぶん、私が飲むビールは減りましたが(笑)。
(笑)。生樽の交換も奥様がやられていたんですか?
そうなんです。重いのに妻に任せて申し訳なかったのですが。生樽から3Lのペットボトルに変わって、本当に軽くなりました。年齢を重ねると、生樽の重さがだんだんきつくなりますから。
ボトルの入れ替えや洗浄も手軽に扱える
樽と比べたらだいぶ軽いですよね。サーバーそのものもコンパクトですし。
そうですね。あと、以前は開栓前の生樽を2つ冷蔵庫で冷やしていたのですが、今はペットボトル4本を常時入れています。冷蔵庫で保存しているビールの量は生樽のときとあまり変わらないのに、ペットボトルになって、スペースがかなり空いたのもうれしいですね。これは助かっています。

「ここを改良してほしい」現場の声がしっかり活かされていく

実際にTAPPYを導入されて、現場の声はキリンさんにも届きやすいでしょうか?
そうですね。導入したばかりの頃はタップの形が少し違って、現場で使っている者として「こうしてもらえるとうれしい」と、僕も意見を出させていただいたんです。その中で少しずつ改善されて。現場の声を汲み取りながらサーバーが作られていくのは、初めての経験でした。
きめ細やかな泡とビールの鮮度はTAPPYならでは
今(取材時は8月下旬)はコロナ禍で本当に大変な時期ですが、早くまたお客さまが気兼ねなくお店でおいしい生ビールを飲める日が来てほしいですね。
そうですね。お酒の提供は難しい状況ですが、TAPPYは少容量のうえロスが少ないので、お店からすると、コロナ禍で厳しい時期にも使いやすいと思います。

まだまだ辛抱が続きますが、少しずつ昔のように戻ると信じていますので。そのときが来たら、またお客さまにご飯やお酒を楽しんでいただきたいですね!

TAPPYでお店やお客さまがHAPPYになれることを願って

よりおいしいビールの提供に加えて、労働力不足など日本社会が抱えるさまざまな課題を解決するために作られたビールサーバー、TAPPY。ウィズコロナ時代、そしてその後においても多くの人をHAPPYにする存在として、今後もさらに導入が進んでいくでしょう。
INFORMATION
「CASA MIA」(カーサミア)
https://casamia.jp/
住所:石川県金沢市幸町7-5
営業時間:17:00〜24:00(ラストオーダー 23:30)
定休日:月曜日
※地方自治体の営業時間短縮要請により営業時間が変更になる可能性がございます。
[PR企画: キリンビール × ライブドアニュース]