東京五輪でメダルを目指すU−24日本代表は、U−24アルゼンチン代表との強化試合を0−1、3−0の1勝1敗で終えた。この状況下で、東京五輪に出場する強豪国と対戦できたことは収穫だった。
アルゼンチン戦に出場した選手たちを見ながら感じたのは、日本が自国開催の東京五輪でメダル獲得を目指すには、やはりオーバーエイジ枠を使うべきということ。日本の若い世代はしっかり育ってきているものの、すべてのポジションで人材が充実しているわけではないからだ。
3枠あるオーバーエイジの候補には、現時点でいいと思われる選手が5人いる。まず1トップ候補に大迫勇也(ブレーメン)、トップ下で南野拓実(サウサンプトン)、ボランチに遠藤航(シュツットガルト)、センターバックに吉田麻也(サンプドリア)、そして右サイドバック(SB)に酒井宏樹(マルセイユ)だ。
このうち3人しか選べないのがもどかしいところではあるが、それでも五輪代表の補強したいポジションはしっかり補える。
遠藤航は当確と見ていいだろう。ブンデスリーガや日本代表で見せる、攻守における存在感は圧倒的なものがある。世界に誇れる日本サッカー最大の武器を使わない手はない。
7月の日本の気象条件と五輪の日程を考えれば、遠藤航をボランチの軸に据えて、田中碧(川崎フロンターレ)、中山雄太(ズヴォレ)、板倉滉(フローニンゲン)と組み合わせながら使うのではないか。
大迫勇也も、U−24の攻撃的な選手のストロングポイントを生かすためには不可欠なピースだ。2列目には堂安律(ビーレフェルト)、久保建英(ヘタフェ)、三笘薫(川崎)、相馬勇紀(名古屋グランパス)といった選手たちがいる。彼らを生かすには、屈強な外国人DFを相手にしてもボールをしっかり収められる大迫の力は欠かせない。
大迫のバックアップとして考えられるのが、上田綺世(鹿島アントラーズ)、前田大然(横浜F・マリノス)、田川亨介(FC東京)らだ。上田には連係とポジショニングの良さという武器があり、前田はスピードでDFラインの裏を突けるし、サイドでも起用できる。田川は泥臭くてもシュートに持ち込む強さがある。メンバー登録の時点で調子のいい選手が起用されるだろう。
使いどころが悩ましいのが、3つ目のオーバーエイジ枠だ。順当に考えればセンターバック(CB)に吉田麻也を入れ、攻撃から守備のセンターラインに経験豊富なオーバーエイジを配置する手が考えられる。冨安健洋(ボローニャ)とのCBコンビも日本代表で試合を重ねているので、守備面での不安もない。
ただ、そうなると右SBが苦しくなる。このポジションには菅原由勢(AZ)、原輝綺(清水)、橋岡大樹(シント=トロイデン)がいるものの、彼らを右SB以外で起用する可能性もあることを考えると、不安も残る。他のポジションで彼らを起用するのなら、そちらのポジションでより適正の高い選手を起用したほうが得策でもある。
CBはU−24に渡辺剛(FC東京)や町田浩樹(鹿島)、瀬古歩夢(セレッソ大阪)といった人材がいる。まだ吉田麻也には及ばないものの、十分計算はできるため、オーバーエイジに吉田ではなく右SBの酒井宏樹を招集する手もある。
左SBは攻撃的なポジションからコンバートされた旗手怜央(川崎)がいて、ボランチのできる中山雄太もいる。古賀太陽(柏レイソル)も候補にはなるが、この2人でまわすことになるのではないかと予想する。
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では、南野はどこで使うのか。DFラインをすべてU−24の選手に任せることにする場合、4−2−3−1のトップ下に南野の起用も可能になる。コンビネーションの面では日本代表で大迫勇也や堂安律、久保建英らと一緒にプレーしてきたので心配はない。ゴール前での圧力という点を考えると、南野を招集する手は十分考えられる。
こうして考えると、五輪代表メンバーはある程度絞られてくるが、ここに名前の出なかった選手たちにチャンスがないわけではない。
たとえば三笘は、東京五輪が予定どおり昨年に行なわれていたら、選ばれなかった可能性が高い。しかし昨シーズン、Jリーグデビューイヤーで圧倒的な存在感を示したことで、1年遅れでの東京五輪代表候補へと上り詰めた。他の選手も、三笘と同じようにここからJリーグでしっかりアピールできれば、代表入りの扉も開けるはず。
東京五輪の男子サッカーは16カ国が参加するが、グループリーグ予選の組み合わせが決まるのは4月21日。東京五輪の開会式に先駆けて男子サッカーは7月22日からスタートする予定だ。
オリンピックの舞台でプレーできるチャンスはサッカー人生で限られているだけに、すべての選手に最後の最後まで代表入りを目指してもらいたい。そうやって選手個々が力を伸ばしていければ、ここから本番までの強化日程が限られている五輪代表の力を高めることにつながる。そして、最後の最後まで五輪代表入りに向けてアピールする選手は誰かを、しっかり見届けたい。