久しぶりの活動となった韓国戦とモンゴル戦で快勝した日本代表だが、内容でポジティブな要素が多かったと思う。
今回、最も心配していたのが、大迫勇也だった。所属するブレーメンで出場機会を失っている彼が、どんな状態か気がかりだった。試合勘の部分でらしくない判断ミスもいくつかあったとはいえ、全体的な出来は日本代表にとって替えの利かない選手と改めて認識させるものだった。
ここから先に待ち受けるW杯予選や本大会は、大迫の出来・不出来がチームに及ぼす影響は大きい。それだけに、所属クラブでうまくいってない状況を来シーズンに向けていい方向に変えてもらいたいところだ。
大迫以外の攻撃面に目を向ければ、抜群に良かったのが右サイドで起用された伊東純也(ゲンク)だ。このポジションには堂安律もいて、ビューレフェルトで結果を残しているだけに捨てがたいものはあるが、縦に突破できる伊東が現状の日本代表にとってのファーストチョイスだろう。
これは両選手の特長と、ほかの選手との兼ね合いもある。堂安の持ち味はインサイドに切れ込んでいくプレーにあるが、そうなるとピッチ中央が渋滞する可能性が高い。その点、伊東は縦を突くので、中央の選手たちも生きやすい。
伊東と堂安、それに久保建英(ヘタフェ)も含め、対戦相手や試合状況に応じてタイプの異なる3選手を使い分けられる選択肢があるのは、日本代表にとって強みになってくるはずだ。
トップ下のポジションも、能力の高い選手が2人いる。南野拓実(サウサンプトン)と鎌田大地だ。これまでトップ下でプレーしてきたのは南野だが、今回は鎌田をトップ下に起用し、南野を左サイドに配置した。
鎌田は所属するフランクフルトで好調を維持し、攻撃面でチームの中心選手になっている。その鎌田の能力をどういう形で日本代表に加えるかに注目していたが、森保一監督は新たな並びで鎌田と南野を起用した。
動き回ることで持ち味を発揮する南野にとって、左サイドはベストのポジションとは言えない。今回の2試合とも、南野の力がフルに発揮されたわけではなかった。
2人を共存させるには、大迫が1トップにいるなかでは鎌田のトップ下、南野の左サイドが妥当なのかもしれないが、今後、この2選手が共存可能な形を生み出せるのかを含めて、注目していきたい。
また今回目立っていたのは、ボランチに入った遠藤航(シュツットガルト)と守田英正(サンタ・クララ)だ。遠藤は昨年のヨーロッパ遠征でも圧倒的な存在感を示していたので驚きはなかったが、守田に関しては「ここまでやるのか」と目を見張るほどのパフォーマンスだった。
相手との力関係があったにせよ、守田はボール奪取の能力だけではなく、前に出ていくプレーやつなぎの面で、もっと強い相手であっても通用するのではと思わせるプレーを見せた。
守田はプロ1年目に評価を高めて日本代表入りもしたが、その後はクラブでの出場機会が減り、昨季も前半戦は川崎フロンターレのレギュラーではなかった。それが後半戦からアンカーのポジションで圧倒的な存在感を示し、年明けからポルトガルへ移籍。
守田は現在25歳。サッカーでは決して若くはない年齢だが、守備的MFの選手は長谷部誠や遠藤航のケースを例に見ても、ある程度の年齢になってから海外リーグで飛躍的に成長することがある。ここから先、さらに成長した姿を見せてくれるのを期待している。
今回の2試合で森保監督がいい仕事をしたと感じたのは、Jリーグで調子のいい選手を招集し、試合で起用した点だ。彼らがプレーでしっかりアピールしたことで、日本代表の選手層はさらに厚みを増していく可能性が生まれた。
◆森保ジャパン2列目の最適解が見つかった。競争はさらに激化傾向>>
これができたのも、森保監督が普段から足繁くJリーグの会場に足を運び、選手をチェックし、ピックアップしたからだ。これがJリーグをあまり視察しない監督だとこうはいかない。海外組の能力は確かに高いが、そこだけに頼っていては日本代表の選手層は厚くならない。海外組を突き上げる存在をつくるのも、代表強化には不可欠な要素なのだ。
右サイドバックで起用された山根視来(川崎)は、得点を決めたからというわけではなく、それ以外のところでも臆せずにプレーしていた。ボランチの稲垣祥(名古屋グランパス)も、Jリーグで好調なチームを支えているとおりのパフォーマンスを発揮した。
FW古橋享梧(ヴィッセル神戸)は、普段からイニエスタなどのビッグネームとプレーしていることでの意識の高さ、ゴールへの強い意欲を代表戦でも見せていた。彼の持つ圧倒的なスピードは相手に脅威を与えた。
こうしたJリーグ組の選手たちの多くは、W杯の最終メンバーに残れるかはわからない。しかし、そこに向けた戦いのなかで、次も招集されるための力があることは十分に証明しただろう。個人的には次回もまた呼ぶべきだと思う。
代表に定着するにはリーグ戦でアピールし、代表に呼ばれ、代表戦で結果を残し、再びリーグ戦でアピールする。この繰り返しを地道につづけるしかない。そのためにはまずJリーグでこれまで以上のパフォーマンスを見せ、森保監督を悩ます存在になっていってもらいたい。
次回、日本代表の活動があるのは6月。国内でW杯2次予選の残り試合と国際親善試合が行なわれる。海外組をフルに呼べるのかわからないが、たとえ招集できる状況にあったとしても、日本代表がさらに成長するために国内組が一人でも多く代表に名を連ねることを期待している。