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J-CASTニュース
また唐木氏は、問題文の別の箇所も誤りがあるのではないかと解説した。最終段落の直前の
「Unfortunately, these move through the body extremely slowly, so consuming large amounts can cause stomach trouble.(しかしながらあいにく、それらは体内を非常にゆっくりとめぐるので、大量に摂取すると胃のトラブルを招きうる=編集部訳))」
という1文である。この文中の「these」はキシリトールやソルビトールなどの低カロリー甘味料のことだが、内容について唐木氏は
「前半は直訳すると『体内を非常にゆっくりめぐる』となりますが、キシリトールやソルビトールが血液に乗って循環するスピードが遅い、といった事象はありません。確かにこれらの物質が食物から体内に吸収されるプロセスは遅いのですが、それならmoveではなくabsorbed(吸収される)が適切な表現でしょう。また後半についても、体内移動や吸収の速度は胃のトラブルとは関係がありません」
と解説する。この化学的視点から見ると誤った内容が、問題文から読み取れる内容を選択肢から選ぶ問3に関わってくると指摘した。
「問3は正しい内容を2つ選ぶものですが、選択肢(5)の「Sweeteners like xylitol and sorbitol are not digested quickly」(キシリトールやソルビトールは速く消化されない)が正解の一つとなっています。これは「move through the body extremely slowly」を根拠に選ばせる意図のようですが、問題文は体内移動の誤った内容に基づいており、また消化(digested)と吸収(absorbed)は生理学的には全く別の現象です。正しい化学的知識を持った受験生は混乱してしまうおそれがあり、選択肢(5)を正解とするのは疑問です」
と唐木氏は指摘し、英語第6問の問題文は「専門的知見を踏まえずに作られてしまったのではないでしょうか」とした。
これらの問題はあくまで英語の試験であるから、問題文の主張を正確に読み取って解答を選べば正解は可能である。しかしその過程で、間違った科学リテラシーを広めてしまわないか、という懸念がこのようにして専門家から表明されている。
唐木氏が共同代表を務める、食の安全に携わる有識者で構成された食品安全情報ネットワーク(FSIN)では、第6問に関する以上の要旨をまとめた見解を1月27日付けで大学入試センターに送付し、受験関係者に誤解を招きかねないとして
「この出題が過去問題の事例として、授業で活用されたり、受験参考書に掲載されることがないよう、適切な措置を講じていただきたい」
と公式サイト上で発表している。
大学入試センターはこの英語第6問の問題文について、「どのような資料に基づくかは機密保持の観点から回答を差し控えますが、複数の資料を参考にセンターの問題作成部会が作成したものです」と1月27日の取材に答えた。