いくつになってもボーイズ&ガールズのあの頃に戻してくれるアイドル曲たち

 日本を代表する作曲家、筒美京平さんが2020年10月7日にお亡くなりになってしまった。

 楽曲一覧や多くの人がアップしているMy 筒美京平ベストテンを読んで、あの曲も過去の曲もかと驚いてしまった。

 1966年、作曲家デビュー。そこからずっと第一線で活躍し、しかもヤングなセンスを必要とするアイドル曲を、時代を超えてガンガン手掛け、若者たちに「さあ元気出して! これからが青春よ」と元気をくれた。

 「悲しいなら無理しないで。ほら、このメロディーと一緒に泣きましょう」と寄り添ってもくれた。

 多分、私の幼少期から青春の思い出のバックには、6割方筒美京平さんの曲が流れている……。

 どれもこれも名曲なので挙げだしたらキリが無くなり、ガンガンガンとディスプレイに頭を打ち付け、クラクラしながらなんとか選曲をしたが、1カ月もかかってしまった。

 今回はアイドルに絞り、いくつになっても誰の心もボーイズ&ガールズに戻してくれる12曲をご紹介。

 さあ、心震える準備を。

イキイキとした女の子を応援したくなる4曲

●早見 優「夏色のナンシー」

早見 優「夏色のナンシー」(1983年)。

 「恋かな Yes!」というハジケた入りから「か〜ぜ〜が〜吹くたび〜」とローラースケートで走るような風を感じる切り替わりが最高。

 恋愛に積極的だけど、決してウジウジ粘着質ではない、ナンシーのお人柄をメロディーからも感じるようではないか。

●松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」

松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」(1981年)。

 「伊代はまだ16だから」と名前と年齢が入ることで、湧き上がる特別感。

 「まだ16だから」のあとの「スィートリールーシックスティーン(sweet little sixteen)」というコーラスの気持ち良さ。

 松本伊代の声の低さを活かしつつ(筒美さんが彼女の声をとても気に入ったそうだ)若さの素晴らしさ、浮かれっぷりを見事表現!

 湯川れい子さんの歌詞と筒美メロディーという精巧な部品が噛み合いでき上がった、誰でも16才に戻れるタイムマシン。

●斉藤由貴「情熱」

斉藤由貴「情熱」(1985年)。

 斉藤由貴×松本隆×筒美京平はエモーショナル・トライアングル。

 雪に消えてしまいそうなのに、なかなか消えないロウソクの火のチロチロを思い出させるメロディーが素晴らしい。

 そして斉藤由貴の高音。同じエモーショナル・トライアングルによる「卒業」は「制服の、胸のボタンホゥ(を)↑」、そしてこの「情熱」では「じょホゥ(情)↑熱」。

 どちらもため息のようにかすかに上がる「ホゥ↑」が秀逸。

●中山美穂「C」

 少女から大人になるシーンを思わせる内容だが、表現が美しくて気品すら溢れる松本マジック。

 さらに「ピアノのように優しく弾いて」の音符がテテテッと駆けていくメロディーでファンタジーを盛る筒美ミラクル。

 「Cから始まる恋のバラード」で一度止まり、「抱きしめて」とキリッと再開することで乙女の決意を感じるデンジャラス!

 松本隆と筒美京平が魔法をかけまくっている一曲。

60〜70年代アイドルのカッコ良さに泣くほど惚れる曲

●西城秀樹「勇気があれば」

西城秀樹「勇気があれば」(1979年)。

 王道ど真ん中ストレートで「さあ、ヒデキの魂を感じる声を聴きなさい〜!」とばかりに壮大になっていく世界観。

  2番、「そこにほら明日が」といったん落ち着いてから神転調があり、聴いているこちらもゆっくり目線が斜め上に向く。

 そして誰かが隣にいたら、自然と肩を組んで一緒に横揺れしたくなる。勇気を表現するのにヒネリはいらない、そう教えてくれるメロディーだ。

●野口五郎「真夏の夜の夢」

野口五郎「真夏の夜の夢」(1979年)。

 鍵盤の音がダカダカと胸震わせる情熱的な前奏。なかなかサビに行かない思わせぶりな進行。

 「ああ かき鳴らす」の「ああ」のゴローの高音から一気に畳みかけてくる「夢よ夢よ〜」の連打に「ありがとう! 歌ってくれてありがとう!」とゴローにイチコロになる。

 まさに惚れ薬を手に入れた感覚になる一曲。

●郷ひろみ「洪水の前」

郷ひろみ「洪水の前」(1977年)。

 筒美京平メロディーで外せないのが郷ひろみ。多くのアゲアゲの楽曲で世の中を明るくしてくれたが、その中でもアゲアゲアゲアゲぐらいに心躍るのがこの曲。

 サンバのリズムと、狂おしいほどの片想いの切なさが、これほど絶妙にミックスしたメロディーが今まであっただろうか!

 あらゆる打楽器がスカポコスカポコ鳴り続け心臓の音を思わせる。間奏がこれまた胸騒ぎいっぱいなのでフルで聴こう。

●木の実ナナ「真赤なブーツ」

木の実ナナ「真赤なブーツ」(1967年)。

 最初の歌詞「ブーツ」を、歌うのではなく叫ばせるという挑戦的な試み!

 木の実ナナさんの声が荒くれボクサーのパンチの如くボン! と飛び出て聴き手の心を殴り、一度引っ込んでこれまた「ブーツ!」と衝撃波が戻ってくるというレアな体験ができる。

 私の言っていることがイマイチ分からないという人は、とにかく聴いてほしい。

●榊原郁恵「ROBOT」

榊原郁恵「ROBOT」(1980年)。

 郁恵ちゃんのテクノ。疾走感がすごいので、心が振り落とされないよう手にエア操縦桿を握るイメージを持って聞くのがおすすめだ。

 ピコピコトントンと進んでいくメロディーが、「あなたが好きなの」という部分で、感情が溢れ出すようトロリと変わっていくところにグッとくる。

異世界にいる気分になり元気が出る曲

●C-C-B「Lucky Chanceをもう一度」

C-C-B「Lucky Chanceをもう一度」(1985年)。

 この「Lucky Chanceをもう一度」は、ベースの渡辺さん、ギターの関口さん、ドラムの笠さんがそれぞれの声質を活かし、3段跳びでワクワクを高め「つっいてないっ♪」というサビから3人でガッと歌う快感がたまらない!

 改めて思うが、筒美京平さんのメロディーは音の止まりが全部気持ちい。ピタッと音符が着席する感じだ。

 余談だが、私がC-C-Bを初めて見たのは「Romanticが止まらない」だった。前列の渡辺さん、関口さんが歌うもんだと思っていたら、まさかのドラムの笠さんが歌い出し、「アンタが歌うんかい!」と仰天したのを覚えている。

●少年隊「デカメロン伝説」

少年隊「デカメロン伝説」(1986年)。

 私はラスベガスのショーを見たことがないが、筒美京平さんの少年隊楽曲を聴くと、目の前にきらびやかな妄想ラスベガスが広がるのである。

 中でもデカメロン伝説は危険。

 最高にゴキゲンな前奏「パヤパヤーパパパ・パヤパヤーパパパ♪」だったり、前奏やら間奏やらで挟みまくるワカチコンワカチコン(この掛け声はニッキのアイデアなのだとか)の掛け声だったり、カッちゃんのソロ「恋物語〜」「千夜一夜さ〜」だったり、萌えポイントが多くて現実に戻れなくなるので注意!

●飯島真理「リンゴの森の子猫たち」

飯島真理「リンゴの森の子猫たち」(1983年)。

 筒美京平楽曲で、どうしてもベストワンを出せと言われたら、私はこれを選ぶ。

 アニメ「スプーンおばさん」のエンディング曲である。大好きだった……!

 今でもボーッとしたとき自然に口ずさみ、脚が右左とステップを踏んでしまう。私がボケたらこの曲ばかり歌う気がする。

 紅白歌合戦で筒美メドレーがあるなら、ぜひ入れてほしい。

 作詞家とか作曲家とか全く意識せず、ベストテンや歌番組から流れる歌を聴いてはしゃいでいたあの頃。

 「この歌好きなんだよなあ」と、自然と鼻唄で出てくるあの曲。

 筒美京平さんの楽曲は、私にとってまさにそれ。鼻唄の神様だ。

 そして、筒美京平さんが生み出した曲の主人公たちは、永遠の友達である。これからも。

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文=田中 稲